トップページ > 特集 vol.68 心高鳴るロボットの世界

心高鳴るロボットの世界

ロボットと聞いて、みなさんはどんなものを思い浮かべますか? 人間のかたちをしたヒューマノイドロボット、工業製品を組み立てる産業用ロボット、はたまた世界の平和を守るために戦うヒーローのようなロボットなど、さまざまなロボットが私たちの生活の中、そして映画やアニメといったフィクションの世界で活躍しています。今月の「Trace」はそんなロボットについて掘り下げてみます!

古代ギリシアから描かれた人間の願望

 人間の命令に従って作業を遂行するロボットは、古くから人類の憧れだったようです。古代ギリシアの時代に書かれたホメロスの叙事詩『イリアス』には、鍛冶の神であるヘパイストスに奉仕する黄金型の車輪を持つ自律移動ロボットや、人間のかたちをした黄金の少女型ロボット、さらに武具を製造することが専門の、現代風にいえば産業用ロボットまで登場します。
 「ロボット」という名前が初めて世に登場したのは1920年のこと。チェコの作家カレル・チャペックが、「強制労働」や「退屈な仕事」を意味するチェコ語“robota”をもとにつくり、戯曲『R.U.R.(ロッサム万能ロボット会社)』で使い始めたのが最初といわれています。
 『R.U.R.』は哲学者のロッサムが開発したロボット(厳密にはバイオ技術でつくられた人造人間)が世界中に普及し、人類は安楽な暮らしを送れるようになったものの、やがてロボットによる反乱で人類が征服されてしまうというお話……。人間のエゴだけで科学技術を乱用するとどんな未来が待っているか、チャペックは早くから示唆していたんですね。

ロボット小説の礎となった3原則

 チャペックが提起した問題に対して、アメリカのSF作家アイザック・アシモフが提唱したのが「ロボット工学3原則」です。

アイザック・アシモフのロボット工学3原則

第一章
ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を与えてはならない。

第二章
ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が第1条に反する場合は、この限りではない。

第三章
ロボットは第1条および第2条に反する恐れのない限り、自己を守らなければならない。

 これは、アシモフが1950年に発表した『われはロボット』の短編の中で掲げたもので、ロボットが登場するSF小説の礎になったといわれています。現実のロボット開発の現場ではあまり関係のない話かもしれませんが、そもそもここまでの能力を有するロボットがまだ登場していないだけなのかも?

あの天才芸術家もロボットを開発!!

 「最後の晩餐」や「モナ・リザ」などで知られるルネサンス期の天才芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチは、解剖学、建築、土木、天文学など幅広い分野に精通していたことで知られています。そんなダ・ヴィンチは、自動兵器やヘリコプターの原型となるような多数のアイデアスケッチを残していますが、なんとロボットの設計も考えていたのだそう。
 彼が残した5000枚の手稿の中の「アトランティコ手稿」には、関節が歯車で可動する甲冑姿のロボットの設計図が描かれているんです。ダ・ヴィンチは自身の解剖学や運動生理学の知識を駆使してこのロボット騎士を設計したと考えられており、1990年代にはNASAやロッキード・マーティンのロボット技術者であるマーク・ロスハイムが、設計図をもとに全身がモーターで動く再現模型を完成させました。ダ・ヴィンチが考案し、ロスハイムが再現したロボットの原理は、宇宙飛行士には危険な作業を遂行できるようにNASAが設計・開発したヒューマノイドロボット「ロボノート」にも応用されているとか。
 ちなみにダ・ヴィンチは、ロボット騎士だけでなくライオン型のロボットも考案。フランス・ルネサンスの父といわれるフランソワ1世の前でその機械仕掛けのライオンを披露し、人々を驚かせたという話もあるんです。

“イカサマ”なしにコンピュータの誕生もなし?

 今や囲碁、将棋といった勝負の世界で、人間とAI(人工知能)の対局が珍しくなくなりましたが、世界でもっとも知られているのが、1996年から97年にかけて行われたガルリ・カスパロフとIBMのスーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」とのチェスの公開対局ではないでしょうか。この対局は、当時の世界チャンピオンだったカスパロフがコンピュータに敗北するという結末で世界を震撼させましたが、実は19世紀初頭にも人間相手に連戦連勝を重ねたロボットが存在していたんです。
 18世紀から19世紀初頭は、ヨーロッパを中心に機械人形(オートマトン)が隆盛を極めていました。そんな時代に、ハンガリー人のヴォルフガング・フォン・ケンペレンが開発したのが「チェスを指すトルコ人」というロボットです。これは、ターバンを頭に巻いた東洋人風のロボットで、人間を相手に自動でチェスを指せるというもの。かのナポレオン皇帝とも対戦し、ナポレオンがわざと反則を繰り返すとボード上の駒をすべてひっくり返してしまったとか……。
 ただし、このロボットにはカラクリがあり、駒を操作していたのは人間だったのです。チェスボードが載せられたボックスの中にチェスの名人が隠れていて、磁石を使って駒を動かしていたのだとか。世界で初めてプログラム可能な計算機械を考案し、のちにコンピュータの父と呼ばれるイギリスの数学者チャールズ・バベッジも感銘を受けたといわれる「トルコ人」、このインチキがなければ現代のIT社会は誕生しなかったかもしれませんね。

世界初の“ロボット俳優”とは

 映画といえば、アニメやCGではない限り、人間が演じるのが当たり前ですよね。そんな映画界に、ロボットが俳優として名を連ねているのをご存じですか?
 SF映画の金字塔として知られる1956年製作の映画「禁断の惑星」に登場したのが、ドーム型の頭にドラム缶のような胴体、そしてボールを連ねたような足を持つ「ロビー・ザ・ロボット」です。このロボットはビークルの運転手としてさっそうと登場し、英語のほかに187の言語を操り、体内で料理やお酒まで本物そっくりに再現してしまう優れものでした。
 映画は大成功を収め、たちまち人気者となったロビーはその後、「宇宙家族ロビンソン」「トワイライト・ゾーン」「グレムリン」「ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則」など、さまざまな映画、テレビで活躍。映画データベースのIMDb(Internet Movie Database)に唯一、ロボットの俳優として掲載されているんです。
 もちろん、劇中に出てくるロビーは着ぐるみで、デザインを担当したのは日系人ロバート・キノシタのチーム。頭部や胸部でクルクル回ったり光ったりする部品を制御する専用のコントロールパネルも開発され、映画会社MGMはロビーのために10万ドル(当時のレートで約3600万円)以上の資金を投じたとか。「スター・ウォーズ」に登場するR2-D2をはじめ、SF映画に登場するロボットのイメージを形づくったロビーは、ロボット界のスーパースターといえるでしょう。


ギリシア神話の時代から人々の憧れだったロボット。あのダ・ヴィンチも開発を構想していたとは驚きですね。次ページでは、日本にまつわるロボットのエピソードも探ってみます。

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