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日本発ロボットのトリビア

ここからは、日本にまつわるロボットのエピソードを中心にご紹介します。日本のみならず世界でもっとも有名なロボットアニメは、現実のロボット開発にも大きな影響を与えていたとか?

国民的ロボットの意思を受け継ぐヒューマノイド

 日本で有名なロボットアニメといえば、手塚治虫の『鉄腕アトム』ではないでしょうか。1951年から雑誌『少年』で17年間連載され(前身は『アトム大使』)、日本で最初のテレビアニメシリーズともなった同作は、人間と一緒に暮らしながらより良い社会のために活躍するロボットを描き、世界各地でも人気を得ました。
 そんなアトムのマインドを現実の世界で受け継いだといえるのが、ホンダ(本田技研工業)が開発した「ASIMO」(Advanced Step in Innovative Mobility、アシモ)です。2000年11月に発表されたASIMOは、家庭やオフィスでフレンドリーに人々と交流し、役立つロボットをつくるために「アトムをつくれ!」という号令で開発が始まった史上初の2足歩行で走るロボット。ジャンプや後ろ向きの走行をはじめ、人混みを避けながらの歩行や水筒のフタを開けてコップに中身を注ぐといった特殊な作業、手話での会話などさまざまな技術を実現し、現在も同社ではASIMOのノウハウをもとに、最先端のヒューマノイドロボットの研究が進められているといいます。

あの“機動戦士”がアイデア!?

 建設業界では作業の効率化や自動化のため、ブルドーザーやショベルカーの無人化が進められていますが、そんな建設機械の中に、あるロボットアニメがベースになっているとウワサされたものがあるんです。
 東日本大震災の被災地におけるガレキ処理作業などで活躍したのが、日立建機が2005年に開発した双腕作業機「ASTACO(アスタコ)」です。スペイン語で「ザリガニ」という名前の同機は、2本の巨大なアームで「つかみながら切る」「支えながら引っ張り出す」「長いものを折り曲げる」「壊れやすいものを把持する」といった多彩な操作ができ、その姿形やコクピットの形状が「『機動戦士ガンダム』みたい!」と話題になったそう。開発者は“ガンダムがアイデア説”を否定しているものの、いわれてみれば同作に登場していてもおかしくない?

AIBOのおじいちゃんがNYに?

 日本発、そして世界で最初のペットロボット「AIBO(アイボ)」。2018年1月に12年ぶりの復活を遂げたAIBO(現在はaibo)は”Artificial Intelligence roBOt”の略で、日本語の「相棒」の意味も込められています。1999年に発売された最初のモデルは予約受付開始から20分足らずで初出荷分の3000台が完売し、2006年に生産終了するまで約15万台を出荷。子犬のようなふるまいで多くのユーザーを魅了し続け、新生aiboは発売から半年で2万台を突破し、入荷待ちが続くほどの人気だといいます。
 そんなAIBOには、“おじいちゃん犬”ともいえるロボットが存在するんです。1939年、「新たな時代の夜明け」がテーマだったニューヨーク万博に出展されたのが、犬型のロボット「スパルコ」でした。人が命令すると26種類の動きができ、人工の肺でタバコを吸ったり風船をふくらませたりすることができる人型ロボット「エレクトロ」とともに万博に登場したスパルコは、現実の犬と同じように、おすわりやちんちんをしたり、吠えることもできたそう。現代でいえば、AIBOがASIMOやソフトバンクのヒューマノイドロボット「Pepper(ペッパー)」と舞台に上がっているようなもの?

ロボットなのに人間に反抗もアリ!

 AIBOには、前ページで紹介したアシモフの「ロボット工学3原則」を模した、AIBO版のロボット工学3原則も存在するんです。本家3原則との違いとは……。


第一章
ロボットは人間に危害を加えてはならない。自分に危害を加えようとする人間からも逃げることは許されるが、反撃してはいけない。

第二章
ロボットは原則として人間に対して注意と愛情を向けるが、ときに反抗的な態度を取ることも許される。

第三章
ロボットは原則として人間の愚痴を辛抱強く聞くが、ときには憎まれ口を利くことも許される。

 アシモフの原則と大きく異なるのが、「ときに反抗的な態度を取ることも許される」「憎まれ口を利くことも許される」といったところ。ロボットとはいえ絶対服従ではないところが、みんなに愛される所以なんでしょうね。

ギネスも認定した“癒やし系ロボット”

 ロボットはいまや、介護や医療の世界でも活躍しています。なかでもその愛くるしさで人気なのが、タテゴトアザラシの赤ちゃんそっくりにつくられた「パロ」です。日本の産業技術総合研究所が開発したこのロボットは、多数のセンサーを搭載し、人の呼びかけに優しい鳴き声で反応したり、抱きかかえられると豊かな表情や動作を見せたりして、人々の心を和ませてくれるもの。アニマル・セラピーと同様のセラピー効果を備えるロボットとしてアメリカでは医療機器に承認されており、日本をはじめ世界中で、自閉症の子どもや認知症の高齢者などのセラピーに効果を上げているんです。その評価の高さから、ギネスブックに「世界一セラピー効果のあるロボット」として認定されているほど。

ダ・ヴィンチにちなんだ手術用ロボットも

 医療分野でも近年、医薬品や検体の搬送を院内で担うロボットや、手術ロボットの導入が進められています。1999年にアメリカ・インテュイティブサージカル社が開発したのが、「ダ・ヴィンチ手術支援システム」と呼ばれる胸腔・腹腔の内視鏡下手術用のハイテクロボット。人間の手首より可動域が大きい内視鏡付きのロボットアームを用いることで、人間が行う従来の手術より大きく切開する必要がなく、これまで不可能だった角度から患部の診断もできるため、患者の負担を軽減しながら適切な治療が行えると評価されているそう。遠隔操作で手術を行うことができるため、2001年にはアメリカ・ニューヨークの医師がフランス・ストラスブールにいる女性の胆嚢摘出手術に初めて成功して話題になりました。通称「レオナルド」と呼ばれているこのロボット、もちろんネーミングはレオナルド・ダ・ヴィンチにちなんでつけられています。

人とロボット間の不思議な心理現象

 最後にご紹介するのは、人間とロボットの関係における不思議な心理現象について。最近はテレビやイベントで芸能人そっくりにつくられたロボット(ジェミノイド)を見かけることがありますが、精巧な見た目に驚く一方で、リアル過ぎて「なんだか不気味……」と感じる方もいるのではないでしょうか。実は、ロボットを人間にどんどん似せていくと、ある程度の段階までは親近感や共感の度合いが高まる一方、人間に近づき過ぎると途端に不気味さや嫌悪感を感じる心理現象が起こるとされています。これが、日本におけるロボット工学の第一人者である森政弘らが1970年に提唱した「不気味の谷現象」です。
 不気味の谷現象では、人間に近づき過ぎて嫌悪感を感じるようなロボットが、さらに人間と見分けのつかないレベルになれば、再び親近感や共感が勝ってくるとされています。つまり、会話の最中でふと目をそらしたり、ひと呼吸置いたりというような人間の微妙なしぐさがあるかどうかが、人間らしさを追求するロボット開発においては非常に重要だということ。不気味の谷に落ちることがないように、あえて見た目や動きをデフォルメしたりすることもあるといいます。


マンガや映画に出てくるロボットが現実の世界に登場するのはまだまだ先かもしれませんが、AIやIoT家電などの浸透で、さまざまなかたちでロボットは私たちの生活に入り込んでいます。社会を静かに、そして確実に変えていくロボットの進化にこれからも注目したいですね。

参考文献(順不同)
アナ・マトロニック『ロボットの歴史を作ったロボット100』(日経ナショナルジオグラフィック社)/日本ロボット工業会監修・日刊工業新聞社編『トコトンやさしいロボットの本』(日刊工業新聞社)/舘暲『ロボット入門 つくる哲学・つかう知恵』(筑摩書房)/中日新聞(ホームページ)/WIRED(同) 等

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