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おとなの補習時間 令和の避難対策を考える

いつ何時、自分の身に降りかかるかもしれない自然災害。特にここ数年では、大きな被害を伴う水害、土砂災害が全国で頻発しています。いざというときに備えて、日頃からの備えが大切ですが、「避難」にまつわる情報もアップデートしておきたいところ。2019年3月に「避難勧告等に関するガイドライン」が改定されてから1年が経ったいま、災害避難の専門家・危機管理教育研究所の国崎信江さんに、新時代の避難対策について教えてもらいました。

新しいガイドラインのポイントを解説

ガイドラインが改定された背景は?

水害・土砂災害のガイドラインが改定されたのは、2018年7月の西日本豪雨で、災害情報が流れても避難行動に結びつかず、逃げ遅れで多くの人が命を落としたことが大きな理由に挙げられます。それまで、国や自治体から出されていた避難情報は、「避難準備」「避難勧告」「避難指示」の3つ。平時ならこれらが何を示しているのかわかりますが、緊急時、とっさに見ると、同じような漢字の羅列にとらえられかねません。そこで、国や有識者によって、どうしたら行動に結びつく表現ができるかが検討され、考えられたのが、レベル1からレベル5まで緊急度を数字で表すこと。災害の段階に合わせて警戒レベルが示されることになりました。次の項目で2019年3月に改定されたガイドラインを解説します。

新しい避難勧告のガイドライン

●この表で一番注目したいのは、「レベル4」。
 レベル4になったら避難行動に移ることを覚えておきましょう。
●家族に高齢者や障がい者、幼児がいる場合は、「レベル3」で避難行動に移ります。
●警戒レベルは段階的に発令されるものではありません。
 近隣の河川の水位が急に上がって警戒レベル2から突然レベル4になることもあります。

すぐに行動に移すための避難準備

水害ハザードマップで浸水予想を確認

全国の自治体から水害(洪水)ハザードマップが出されて、ホームページなどで公開されています。ハザードマップでは、水害が起きたときの浸水の深さが地図上で色分けされています。そこで、自宅、職場、学校など、今いる場所を照らし合わせてみます。例えば、下の江戸川区(東京都)のハザードマップを見ると、平井小学校は3〜4階浸水(5〜10m未満)となっています。小学校の建物は3階なので屋上に避難してもダメ。浸水していないエリアまで避難するか、5階以上の建物に避難する必要があります。自分のいる場所を踏まえて、ハザードマップを確認し、避難できる場所を確認しておきましょう。

江戸川区ウェブサイト『地図「どうなる?」~浸水の深さ・時間~』を元に作成

避難所や避難場所を確認

ハザードマップを見るときは、避難所や避難場所も確認しておきましょう。水害の場合は浸水してしまう場所では意味がないので、それも踏まえてチェックします。避難所が遠い場合は、どこに一時避難してどんな経路で移動し、どれくらい時間がかかるか確認します。この場合も、河川の近くは危険です。また、河川が集中しているエリア、例えば東京の江東5区は、ほとんどが水没してしまいます。ハザードマップには水害が発生しても浸水しない場所も記してあります。さまざまな地点にいることを想定して、確認しておきましょう。

避難所や避難場所を確認

避難する場所にもさまざまな種類があります。避難所と避難場所は似た言葉ですが、厳密には意味が違います。避難所は、避難したあとに生活する場所。寝泊まりできるよう屋根がついた小学校のような場所です。避難場所は地域の人が集まる場所。公園や公民館などが設定されています。避難場所には広域避難場所というのもあって、これは大規模火災が発生したときに逃げ込める場所。グラウンドや屋根のないところが多くなっています。水害・火災・地震で避難する場所は異なるので、それも確認しておきましょう。

令和の避難対策は、「アプリ」をインストール!

国崎さんおすすめ! スマホに入れたい避難アプリ

Yahoo!防災速報

地震や豪雨予想を始めとした災害情報をプッシュ通知で知らせてくれます。現在地と国内最大3地点で通知が可能なので、移動中や旅行中でも安心。災害ごとの避難場所も確認できます。

東京都防災アプリ

東京に住む人や働く人に便利なのが東京都防災アプリ。災害時モードでは、災害情報だけでなく、防災マップで周辺の避難所を確認できます。事前の登録で、自分の場所を周りの人に知らせるブザー機能もあります。

Coaido119

119番通報で救急車を呼びながら、同時に周囲にいる医療資格者や救命関連資格を持つ人、AED設置施設等に連絡できます。救急車を呼ぶべきかわからないときの相談ダイヤルもアプリからアクセスできます。

radiko

今いるエリアで放送しているラジオ番組を無料で聴くことができるアプリ。最新の災害情報をチェックするのに便利です。

避難行動をチェックしよう!

避難の基本的な行動方法

台風や大雨の場合

地震や津波の場合

具体的な避難の行動方法

水平避難

災害が発生しているエリア外に徒歩で移動する方法。大雨や津波などで浸水想定地域の外へ移動するのが基本的な避難方法です。

垂直避難

逃げ遅れた場合や、ケガ人や要配慮者が徒歩で移動することが困難な場合に、近くの丈夫な建物の3階以上に避難する方法です。建物に入る前には安全かどうかを確認しましょう。

具体的な避難の行動方法

避難所に行くときはリュックサックなどのバッグにこれらを詰めておくのがおすすめです。

このほか、子どもや女性、高齢者、障がい者、時期などによって、
必要なものをプラスしましょう。

普段から家族で水害対策の訓練をしよう!

水害は突然やってくるもの。普段から家族で水害対策に意識を高めるのがおすすめです。そのためには、降雨時にどれくらいの雨量があるかを予測して調べる癖をつけます。降雨量は「雨ですかい?」などのアプリで調べることが可能。子どものスマホに入れておけばゲーム感覚で予測できます。また、40mm以上など、一定の降雨量を超えたら、「家族で健康ランドに行く」などと行動を決め、避難訓練をしてみるのもいいでしょう。実際にも、避難は何も避難所に行くだけでなく、安全で24時間営業しているファミリーレストランやホテルでもOK。楽しみながら、とにかく安全な場所に行く体験をしてみましょう。

監修:国崎信江さん

危機管理教育研究所代表/阪神淡路大震災をきっかけに自然災害から子どもを守る研究を始める。これまで、内閣府や東京都、文部科学省など多数の災害対策の諮問委員会に専門家として参加。講演や著作を通して、災害や子どもに対する防犯に関する活動に取り組んでいる。
https://www.kunizakinobue.com

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