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寝台列車の意外なエピソード

誰もがご存じのあの高速鉄道に幻の寝台車があった、アフリカ大陸でブルートレインが活躍している?……国内に限らず、世界の寝台列車にまつわるさまざまなエピソードをご紹介します。

結婚式もできる最新クルーズトレイン

 国内でもっとも新しいクルーズトレインは、2017年7月に横浜~伊豆急下田間で運行を始めた「THE ROYAL EXPRESS」です。こちらは寝台列車ではないものの、前ページで紹介したななつ星などと同様に、超豪華なクルーズトレインとして注目を集めています。
 通常の特急なら2時間ほどで到着する距離を、3時間あまりかけてゆったりと走行するTHE ROYAL EXPRESSは、列車では世界初という天井のステンドグラスを車内にあしらい、移動中はななつ星の食事も担当する日本料理店などがメニュー提供した豪華な食事を楽しめます。またバイオリンのコンサートを行っているマルチスペースでは、結婚式や展覧会までできるそう。クルーズトレインにふさわしく、名旅館やリゾートホテルでの宿泊をセットにした1泊2日のプランのお値段は15万円(1人)! ちなみに、この車両のベースとなっているのは、1993年に登場した観光列車「アルファ・リゾート21」をリメイクしたもので、これからも伊豆の観光を牽引してくれそうです。

新幹線にも寝台車があった!?

 航空機と並んで、国内の長距離移動に欠かせないのが新幹線。実は、日本が誇るこの高速鉄道にも寝台車が連結されたことがあるんです。
 1973年に試作された961形の寝台車には、ベッドやソファが設けられた個室や、ビジネス客を対象に寝台のないソファを設けた特別個室などが設けられていました。当時未開業だった山陽新幹線の岡山〜博多間などで走行試験が行われたものの、1990年には実際の営業での出番がないまま廃車されてしまったそう。試験時の最高速度は時速319kmを誇ったため、もし計画が実現していれば、世界最速の寝台列車となっていたかも?

デゴイチが牽引した“寝台列車の女王”

 「オリエント急行」といえば、アガサ・クリスティの名作『オリエント急行の殺人』をはじめ、小説や映画の舞台にもなった豪華寝台列車。1883年にパリ〜イスタンブール間で運行を開始し、鉄道界の女王として、ヨーロッパ各国の王族や貴族、富豪、文化人などに親しまれていました。
 1977年に運行を終えるものの、アメリカの海運王ジェームズ・シャーウッドが車両2両をオークションで落札したのをきっかけに、世界各地に散らばっていた車両が集められ、1982年から「VSOE(ベニス・シンプロン・オリエント急行)」として、ロンドン〜ベネチア間で運行が再開されます。そんな世界有数の寝台列車は、豪華寝台列車の登場に湧いていた1980年代の日本でも運行されたことがあるんです。
 1988年9月から年末にかけて、フジテレビが開局30周年を記念して実施したプロジェクトにおいて、オリエント急行はヨーロッパ〜日本間を走破しました。同年9月7日にフランス・パリを出発し、当時のソ連、中国を経由して同26日には香港へ到着。その後、山口県下松市の日立製作所事業所まで船で輸送されて整備を受け、10月17日に広島駅から国内での運行をスタート。12月25日の上野駅到着でプロジェクトは終了しますが、最終運行時にはデゴイチの愛称で知られるD51形蒸気機関車が復活し、車両を牽引しているんです。
 日本を走ったオリエント急行は、現在も寝台列車として定期運行しているVSOEとは異なり、スイスにあった「NIOE(ノスタルジー・イスタンブール・オリエント急行)」が運行していたもの。古くから愛されたオリエント急行は、現存するクラシックな車両を使い、VSOEのように現在も各地で運行が続けられているんです。

アフリカ大陸でブルートレインが活躍?

 鉄道少年たちの憧れだったブルートレイン。1970年代後半には“ブルトレブーム”が起きたほどですが、日本からはるか離れた南アフリカでも「ブルートレイン」が走っているってご存じですか?
 といっても、このブルートレインは、南アフリカのプレトリア〜ケープタウン間の1600kmを約27時間で結ぶ「ザ・ブルートレイン」という寝台列車で、日本の車両とはまったく別モノ。ヨーロッパの王室が好んで使うロイヤルブルーを基調にした車両の中には大理石製のバスタブまで用意されていて、世界一の豪華列車としてギネスにも認められているんです。乗り心地を快適なものにするために、常に最新の車両にアップデートされているのも特徴で、運賃は数十万円と高級ホテルも顔負けなんだとか。

世界最長の寝台列車は旅程もハード

世界一の豪華列車がザ・ブルートレインだとすると、世界最長の寝台列車がロシアのモスクワ〜ウラジオストク間、全長9297kmを6泊7日で結ぶ「シベリア鉄道」です。全長500mという車両のスケールもさることながら、聞き逃せないのがその設備。一部の車両を除いて原則的にシャワーがないため、なかなかハードな寝台列車の旅になるとか……。


世界に目を向けると、シンガポールからマレーシアを経由してタイへ至るマレー半島縦断鉄道(E&O)など、大陸を横断するスケールの大きな寝台列車も活躍しています。優雅な列車の旅を演出してくれる豪華寝台列車、いつかは乗ってみたいものですね。

参考文献(順不同)
『寝台車の世界』(交通新聞社)/桜井寛『世界豪華列車の旅』(小学館)/同『世界の鉄道旅行案内』(講談社)/同『世界一周!大陸横断鉄道の旅』(PHP研究所)/『鉄道ファン 2017年12月号』(交友社)/一志治夫『「ななつ星」物語 めぐり逢う旅と「豪華列車」誕生の秘話』(小学館) 等

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