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開業届に必要なものとは? 書き方や提出方法などくわしく解説
vol.115

開業届に必要なものとは?
書き方や提出方法などくわしく解説

コロナ禍で生活スタイルが変化し、働き方においてもテレワークが一般的になりました。通勤時間や会食が減り時間に余裕ができたことから、副業や兼業をする人が増えています。個人事業主としてスタートする人も多いでしょう。個人事業主として事業を始めるには税務署に開業届を出す必要があります。新たな働き方をスムーズにスタートさせるためにも、開業届に必要なものや記載方法、提出方法などを知っておきましょう。
※本記事の内容は2022年8月6日現在のものです。

開業届はなぜ必要?

 開業届が必要な理由は、事業開始の事実を税務署へと通知するためです。
 事業を開始すると、収支報告や納税の義務が発生します。そこで所轄の税務署に対して事業の開始を申告する書類が開業届です。
 なお開業届を提出しない場合でも、罰則は科されません。しかし以下のようなメリットがあるため、開業届の提出が推奨されます。

開業届を出すメリット

  • ・税制面での恩恵が多い「青色申告」ができる
  • ・屋号での口座開設ができる
  • ・初年度から小規模企業共済に加入できる

これらのメリットを、一つずつ見ていきましょう。

税制面での恩恵が多い「青色申告」ができる

開業届を提出すると、確定申告の際に「青色申告」が可能です。
青色申告では、事業所得などの一部を控除の対象にできます。最大65万円まで控除を受けられるため、節税の面で有利です。加えて、赤字の繰り越しや専従者給与(親族が事業を手伝う場合の特例)など税制面での優遇措置があります。
開業届を提出しない場合には青色申告ができず、これらの恩恵を受けられません。青色申告による確定申告をしたい場合には、開業届を提出しましょう。


屋号での口座開設ができる

開業届を提出すると、屋号を付けた「屋号+個人事業主名」の口座を作ることができるようになります。
屋号とは、個人事業において会社名のような役割を持つ呼称です。屋号のついた金融機関口座があれば、振込を行う顧客に対して安心感を与えられるケースもあります。
開業届が未提出の状態では、個人名義の口座しか開設できません。ビジネスにおいて屋号を持つ口座を利用したい場合には、開業届を提出しましょう。


初年度から小規模企業共済に加入できる

開業届を提出すると、初年度から小規模企業共済に加入できます。
小規模企業共済とは、個人事業主向けの共済金積み立て制度です。毎月一定の金額を積み立てることで、退職や廃業時に共済金を受け取れます。加えて、低金利の貸付制度も利用できます。
小規模企業共済に加入するには、確定申告書の写しが必要です。そのため、通常は開業初年度からの加入ができません。しかし開業届を出せば、その控えの提出によって開業初年度から加入できるようになります。
このような理由から、開業初年度から小規模企業共済に加入したい際は、開業届を提出しましょう。

開業届を出すのに必要なもの4つ

 開業届の提出にあたって、必要なものは以下の4点です。

  • ① 個人事業の開業届出・廃業届出書
  • ② マイナンバーが分かるもの
  • ③ 本人確認ができる書類
  • ④ 青色申告承認申請書

 なお、令和3(2021)年度の税制改正により開業届への押印が廃止となったため、印鑑は不要です。それぞれの項目を、くわしく見ていきましょう。

① 個人事業の開業届出・廃業届出書

まず開業届の書類を用意し、必要事項を記入します。
開業届の書類は所轄の税務署で入手するか、国税庁のホームページからダウンロードできます。他に、クラウド会計ソフトからの出力も可能です。
税務署で記入する場合には、事前に書類を用意する必要はありません。ただし、あらかじめ必要事項の記入を済ませておいた方が、税務署でスムーズに申請できるでしょう。


② マイナンバーが分かるもの

マイナンバーが記載された、公的機関の発行する書類が必要となります。具体的には、以下の3種類からいずれかを用意しましょう。
●マイナンバーカード
●マイナンバーの通知カード
●住民票の写し(「マイナンバー記載あり」で請求したもの)
これらの書類は、住民登録をしている市区町村の窓口から入手できます。


③ 本人確認ができる書類

公的機関の発行する身分証明書が必要です。代表的な身分証明書として、以下の書類が挙げられます。
●運転免許証
●パスポート
●公的医療保険の被保険者証
なお、「②マイナンバーが分かるもの」においてマイナンバーカードを利用する場合、身分証明書は不要となります。


④ 青色申告承認申請書

青色申告をする場合には、青色申告承認申請書を準備しましょう。
青色申告承認申請書がなくても、開業届の申請は可能です。しかし開業届と合わせて提出すると、スムーズに手続きできます。
青色申告承認申請書は所轄の税務署でもらうか、国税庁のホームページからダウンロードしてください。

開業届の提出期限は「事業開始から1カ月以内」

 開業届は、事業を開始した日から1カ月以内に提出しなければなりません。提出期限が土日・祝日など行政機関の休業日にあたる際は、その翌日が期限となります。
 万が一、事業開始から1カ月を経過してしまった場合には、すみやかに所轄の税務署で開業手続きをしてください。
 開業届が受理されると、押印済みの「控え」が発行されます。控えは、個人事業を開業した証跡となります。金融機関や保険会社での手続きで必要となる場合もあるため、重要な書類です。そのため、控えは大切に保管しておきましょう。
 もし控えを紛失した際は、以下の手順で再発行が可能です。

1.税務署に対して、個人情報の開示請求を行う
2.税務署から通知決定を受け取る
3.「保有個人情報訂正請求書」を提出し、開業届の控えの受け取り方法を指定する

なお、控えの再発行には30日ほどを要します。

開業届の書き方

 開業届の書類は、所轄の税務署でもらうか、国税庁のホームページからダウンロードできます。
以下の書類を入手したら、手順に沿って必要事項を記入してください。

納税地の税務署名/提出日

納税地の税務署名を記入します。納税地の税務署名は国税庁のホームページから検索可能です。税務署記入欄の下には、開業届の提出日を記入します。

納税地/上記以外の住所地・事業所等

納税地の住所を記入します。個人事業主は、原則として自宅の住所が納税地です。事務所や店舗を持つ場合は、その拠点を納税地として申告できます。

氏名/生年月日/個人番号

氏名と生年月日、個人番号を記入します。
ここで記載する情報は、公的な身分証明書に記載された内容と完全に一致している必要があります。

職業

個人事業主として営む職業を記載します。この職業欄は、特に記載方法の指定がありません。
そのため総務省が定める「日本標準職業分類」などを参考に、客観的に分かる職業名を記載しましょう。

屋号

屋号を名乗る場合には、記載が必要な項目です。屋号とは個人事業の呼び名であり、法人における会社名の役割を持ちます。
一般的には、店名やビジネス上の呼び名を登録します。ただし、屋号の届出は任意です。そのため屋号を利用しない場合には、記載は不要です。

届出の区分

開業、廃業のどちらの申請なのかを指定します。ここでは開業が目的のため、「開業」に◯を付けてください。

所得の種類

個人事業によって得る所得の種類を選択します。不動産所得や山林所得以外の収益は、全て「事業所得」に該当します。

開業・廃業等日

個人事業を開業した日付を記載します。なお、開業日の定め方には厳格なルールがありません。そのため、自身が事業を開始したと判断する日が開業日となります。

事業所等を新増設、移転、廃止した場合/
  廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合

新規開業の場合は、この欄は記入不要です。

開業・廃業に伴う届出書の提出の有無

開業届とともに以下の書類を提出する場合には、チェックを入れます。
●青色申告承認申請書
●課税事業者選択届出

事業の概要

「④職業」で記載した業務について、より具体的な事業内容を記入します。
記入方法に厳格なルールはありませんが、以下のように事業内容が明確に分かるように記入しましょう。
【例】
飲食店の場合……店内での食事、酒類の提供
学習塾の場合……小中学生に対する学習サービスの提供
プログラマーの場合……Webシステムの設計開発や販売

給与等の支払の状況

従業員に支払う給与の状況を記入します。従業員を雇用する場合、記入が必要です。
まず「従業員数」について、以下の区分に従って人数を記入します。
●専従者……個人事業を手伝う家族・親族で、申請者と生計を共にする者
●使用人……専従者以外の従業員
次に「給与の定め方」を記入します。ここでは、以下のいずれかの選択肢から従業員の給与形態を指定します。
●月給
●日給
●時給
「税額の有無」では、源泉徴収の有無を選択してください。原則として給与を支払う場合は、源泉徴収の対象です。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無

「源泉所得税の納期の特例」の申請の有無を記入します。この特例は、源泉徴収をした所得税や復興特別所得税をまとめて納付できる制度です。
通常、源泉所得税は徴収した翌月の10日までに納付する必要があります。対して「源泉所得税の納期の特例」が適用されると、所得税や復興特別所得税を年に2回にまとめて納税できます。
申請にあたっての条件は、以下の通りです。
●申請者が源泉徴収義務者に該当する
●給与の支給人員が常時10人未満である
特例制度の申請をする際は、開業届とともに「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出しましょう。

給与支払を開始する年月日

従業員への給与支払いがある場合のみ、給与の支払い開始日を記入します。

開業届を出す手順

 開業届を出す手順は、提出方法によって流れが異なります。
 ここでは、以下4パターンの手順を紹介します。

  • ・税務署の受付時間内に出す場合
  • ・税務署の受付時間外に出す場合
  • ・税務署に郵送する場合
  • ・e-Taxでオンライン提出(電子申請)する場合

 なお提出先となる税務署は、事業を営む所在地によって変わります。そのため事前に、国税庁のホームページから所轄の税務署を確認してください。

税務署の受付時間内に出す場合

税務署の受付時間内に訪問できる場合には、対面による申請が可能です。
税務署で職員に開業届を提出したい旨を伝えると、その場で手続きできます。まだ開業届を記入していない場合には記入用紙を受け取り、必要事項を記入してください。
対面での手続きなら、不備があった際にもすぐに対応できます。加えて、書類が受理されたタイミングで控えを入手できるためスムーズです。


税務署の受付時間外に出す場合

税務署の受付時間外に出す場合は、時間外収納箱を利用しましょう。時間外収納箱とは、受付時間外を含めていつでも書類を提出できる投函箱です。利用の際は開業届を封筒に入れて、返信用の封筒と切手を同封する必要があります。
ただし、職員による内容確認は後日となるため、書類に不備があった場合は受理が遅れてしまうことも理解しておきましょう。


税務署に郵送する場合

開業届は郵送による税務署への提出も可能です。この方法であれば、税務署へ訪問する手間がかかりません。
郵送の際は開業届を封筒に入れて、返信用の封筒と切手を同封し所轄の税務署へ送付します。なお所轄の税務署以外にも、事務手続きを専門とする「業務センター」が送付先となる場合があります。国税庁のホームページで自分が住んでいる地域における送付先を確認しましょう。


e-Taxでオンライン提出(電子申請)する場合

国税電子申告・納税システム「e-Tax(イータックス)」を活用した提出も可能です。
e-Taxを利用すれば、自宅からオンラインで申告できます。税務署に出向いたり、郵送したりする手間がかからないため便利です。
e-Taxを利用する場合には、マイナンバーカードが必要となります。マイナンバーカードがあれば毎年の確定申告でもe-Taxを利用したオンライン申告が可能です。まだ持っていない場合は早めに準備しておきましょう。

開業届に必要な書類などは早めに準備しよう!

 個人事業をスタートする時期は、事業の準備に追われ多忙なため、開業届の提出など、行政手続きが後手に回ってしまいがちです。
 しかし開業届の提出が遅れると、本来なら得られたビジネス上のメリットを得られない恐れがあります。そのため、早い段階から開業届の準備を進めましょう。

 なお開業届の提出後は、毎年の確定申告に向けて個人事業の収支を記帳する必要があります。そこで役立つのが、ビジネス用のクレジットカード「NTTファイナンスBizカード」です。
 NTTファイナンスBizカードを使えば、経費を一元管理でき、正確に記録できます。また、ポイント還元率が1%など、サービスが充実しているのも特徴です。これから起業を考える人におすすめのクレジットカードなので、ぜひこの機会に検討してみてはいかがでしょうか。

参考文献(順不同)
国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
国税庁 https://www.nta.go.jp/information/other/data/r03/osp_center/index.htm
国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_14.htm

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