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個人事業主とは? 開業までに知りたい基礎知識
vol.112

個人事業主とは?
開業までに知りたい基礎知識

「会社に属さない自由な働き方をしたい」と、会社員を辞めて個人事業主になる人が増えています。また、副業可の会社も増加しており、会社に属しながら個人で開業するといった働き方も注目されていますね。ここでは、そもそも個人事業主とは何か、法人との違いや、個人事業主になるメリット・デメリット、必要な準備についてご紹介します。個人事業主になることを検討している人は、ぜひチェックしてみてください。
※本記事の内容は2022年7月20日現在のものです。

個人事業主とは?

 個人事業主とは、その名の通り「個人」で「事業」を営んでいる人のことを指します。その定義について、法人やフリーランス、自営業との違いもふまえながら見ていきましょう。

法人との違い

 まず、法人と個人事業主とでは事業開始の手続きが異なります。
 法人を設立する際は、定款の作成や法務局での登記が必要となります。一方で個人事業主は、税務署に開業届を提出すれば事業を開始できます。設立費用についても、法人の場合は定款の認証手数料や登記免許税などを合わせて20万円以上がかかりますが、個人事業主の場合は費用はかかりません。
 また、法人と個人事業主とでは、以下のように課される税金の種類が異なります。
法人:法人税、法人住民税(赤字・黒字にかかわらず年7万円)、消費税、法人事業税など
個人事業主:所得税(累進課税)、住民税、消費税、個人事業税
 また、法人は社長である自分自身への給与や生命保険料など、個人事業より必要経費として認められるものが多い点も違いとして挙げられます。
 多くの場合において、利益が少ないうちは個人事業の方が税負担は少なく、利益が多いと法人の方が税負担が軽くなります。法人が有利になる利益の目安は、個人や事業の状況によりますが、だいたい1,000万円以上と言われています。法人設立を検討する際は一つの目安にしてみてください。


フリーランスとの違い

 「フリーランス」は実は法令上の用語ではないため、定義も様々です。
 しかし実店舗がなく、従業員もいない個人事業主や、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る人のことを指すことが多いようです。つまり、自身のスキルを活用しながら、場所にとらわれず自由に働くスタイルを指す用語と言えるでしょう。


自営業との違い

 個人事業主と自営業者はほぼ同義で、業種や店舗の有無、従業員の有無を問わず、自分自身で事業を経営する人のことを指します。そのため、飲食店や美容院の経営者、フリーランスのデザイナーやエンジニアもすべて自営業者に含まれます。

個人事業を開業する前に知っておくべきこと

 会社員が個人事業主になるにあたっては、多くのメリットがある一方でデメリットも存在します。その両方を以下で解説していきます。

個人事業主になるメリット

 個人事業主になるメリットは、大きく分けて以下の5点が挙げられます。

Merit 1

開業手続きが簡単で費用がかからない

前述の通り、個人事業主になるための手続き自体は、税務署に開業届を出すだけで完了します。一方、法人の設立には費用が必要となるうえ、定款の作成や登記といった手続きには、長ければ1ヵ月超かかる場合もあります。

Merit 2

働き方が自由

個人事業主は、働く場所や時間、仕事内容を自由に決めることができます。何らかの事情で毎日会社に行くことができない人や、育児や介護との両立に課題を抱えている人などにとっては大きな魅力と言えるでしょう。またワーケーションや二拠点生活なども実現しやすくなります。

Merit 3

実力次第で収入を大きく増やせる

給与がある程度決められている会社員と異なり、個人事業主の場合は実力さえあれば仕事量を増やしたり、受注単価を上げたりすることで収入を大きく増やせる可能性があります。

Merit 4

青色申告を行うと特別控除を受けられる

青色申告とは、売上や経費などを帳簿につけて正しい所得税の申告を行う制度のことです。青色申告をすると、記帳や申告の方法に応じて最大65万円の「青色申告特別控除」が受けられます。つまり課税対象の所得額が減らせる=節税できるというわけです。

Merit 5

最大3年間の赤字繰り越しが可能

事業で赤字が出た場合、翌年以降黒字化できた際にその損失額分を利益から差し引くことができます。つまり、赤字が出た年の翌年以降は、黒字化できた際にも節税ができるということです。

個人事業主になるデメリット

 個人事業主になる際のデメリットも、併せて確認しておきましょう。

Demerit 1

毎年確定申告を行う必要がある

会社員であれば毎月所得から源泉徴収され、年末調整も会社側が行ってくれます。しかし個人事業主の場合は毎年必ず確定申告をし、正しい所得税額を申告しなければなりません。

Demerit 2

青色申告を行う場合は複式簿記の記帳が必要

青色申告を行う場合は、複式簿記によって記帳し、貸借対照表と損益計算書を作成して税務署に提出しなければなりません。ただ、これは会計ソフトなどを利用すれば作業がある程度簡略化されます。

Demerit 3

失業保険がない

会社員と異なり失業保険=雇用保険がないため、失業した場合も失業手当が受け取れません。次の仕事に就くまでは無収入になってしまうため、貯蓄や小規模企業共済などで準備しておくのが良いでしょう。

Demerit 4

金融機関からの融資のハードルが高くなりがち

個人事業主は法人や会社員と異なり、金融機関からの融資を受けにくくなります。個人事業は収入が安定しづらいうえ、事業資金と個人の生活費の境目があいまいになりがちなので、融資の審査が厳しくなるからです。融資を受けたい場合は、事業用と生活費の預金口座を分けて管理するようにしましょう。

Demerit 5

企業によっては、法人との契約を優先させる場合がある

個人事業は法人と異なり、簡単に開業・廃業できます。そのため大手を中心に、法人との取引を優先させる企業もあります。

個人事業主になるために必要なこと

 事業開始自体に必要な手続きは開業届の提出のみですが、付随して必要になる手続きもあります。詳しく見ていきましょう。

開業届の作成・提出

 事業開始から1カ月以内に、「個人事業の開業・廃業等届出書」を、事務所所在地管轄の税務署に提出しましょう。持参でも郵送でも可能です。
 マイナンバー(個人番号)の記入と、本人確認書類(運転免許証etc.)の提示又はコピーの添付も必要になります。
 また、青色申告ソフトなどで、必要事項を入力するだけで開業届を作成してくれるサービスもあります。


国民健康保険や国民年金への切り替え

 会社員から個人事業主になる場合、会社で加入していた健康保険を任意継続するか、国民健康保険に切り替える必要があります。国民健康保険に加入する場合は、退職から14日以内に市区町村の窓口で手続きを行いましょう。任意継続の場合も、その健康保険所定の手続きを行う必要があります。
 年金についても、厚生年金から国民年金に切り替わるため、手続きが必要です。こちらも市区町村の窓口で、退職日から14日以内に手続きを行いましょう。
 ちなみに国民年金保険料は、クレジットカードでの決済が可能です。カード利用によるポイントがつき、払い込み忘れの心配もありません。検討してみてください。

個人事業主になった後、行うと良いこと

 個人事業主になるために絶対に必要な手続きではありませんが、役立つことがいくつかあります。詳しく見ていきましょう。

クレジットカードの契約

 クレジットカードの中でもビジネスカードと呼ばれるものを作っておき、事業経費はすべてそこから引き落とすようにすると、経費精算がぐっとラクになります。
 カード利用によりポイントがたまるほか(中には1%還元も!)、海外・国内旅行傷害保険がついているなど、経費削減やビジネスに役立つ数多くの特典があり、非常にメリットが高いです。
 また、生活費と事業経費を分けて管理することができるため、金融機関からの融資を受ける際にも評価につながります。ぜひ検討してみてください。


確定申告を青色申告で行う/
青色申告承認申請書の提出

 確定申告の方法には、白色申告と青色申告の2種類があります。違いは、青色申告には大きく3つの節税メリットがあるという点です。

Merit 1

最大で特別控除65万円を受けられる

記帳や申告などの方法に応じて、所得から65万円、55万円、10万円のいずれかを控除できます。65万円控除を受けるには、複式簿記の記帳などに加え、e-taxによる電子申告か、電子帳簿保存が必要です。e-taxの利用には、マイナンバーカードと、ICカードリーダーもしくはマイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォンが必要です。

Merit 2

家族従業員への給与を経費にできる

家族従業員に支払う給与を必要経費にできます。税務署への届け出が必要です。

Merit 3

赤字が出た場合、赤字額分を他の年の所得から差し引ける

前述の通り、事業で赤字が出た場合、翌年以降黒字化できた際にその損失額分を利益から差し引くことができます。
青色申告を希望する場合は、税務署に青色申告承認申請書を提出しましょう。原則、申告しようとする年の3月15日までに税務署に申請書を提出すればOKです。


小規模企業共済への加入

 個人事業主になる際は、小規模企業共済への加入をぜひ検討してみてください。
 小規模企業共済とは、国の機関である中小機構が運営する、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。掛金は全額が所得控除されるため、高い節税効果が得られます。
 月々の掛金は1,000~70,000円まで500円単位で自由に設定が可能。しかも加入後も増額・減額が可能なので、収入やライフプランの変化に合わせて都度変更できます。
また、掛金の範囲内で、低金利の貸付制度もあります。即日貸付も受けられるため、急な事業資金が必要になった際にも安心です。


補助金・助成金の申請

 国や自治体等による、個人事業主を対象とした補助金・助成金制度もあります。それぞれ見ていきましょう。

【 補助金 】

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者等が、販路開拓や業務効率化に取り組む費用の一部を補助する制度です。経営計画を策定し、それに基づいて商工会議所の支援を受けながら取り組みを実施する必要があります。

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

環境負荷低減、デジタル化を推進するための製品・サービスの開発、生産プロセスの改善に取り組む中小企業や、業績が厳しい中でも生産性向上や賃上げ等に取り組む事業者を支援する制度です。

事業承継・引継ぎ補助金

経営革新やM&Aを行おうとする中小企業を支援する制度です。事業承継を契機として新しい取り組み等を行う中小企業や、事業再編、事業統合に伴う経営資源の引き継ぎを行う中小企業を対象に、補助金が支給されます。

地域中小企業応援ファンド【スタート・アップ応援型】

地域貢献性が高い新事業に取り組む中小企業への支援制度です。主に研究・商品開発、需要の開拓に係る費用が助成対象となります。

【 助成金 】

雇用調整助成金

新型コロナウイルス感染症の影響により、事業活動の縮小を余儀なくされた企業を対象とした助成金です。従業員の雇用維持を図るために、労使間の協定に基づき、雇用調整(休業)を実施する事業主に対し、休業手当等の一部が助成されます。

事業復活支援金

新型コロナウイルス感染症に伴う需要の減少・供給の制約の影響により、売上が大幅に減少した中小企業や個人事業主を対象に、事業全般に広く使える事業復活支援金が支給されます。

雑務が多い個人事業主に役立つアイテム・サービス

 個人事業主になると、経理処理など事務作業がぐっと増え、そちらに時間をとられがちです。開業してから慌てないためにも、事前にリサーチしておくと便利なツールを知っておきましょう。

ビジネスカード

 前述の通り、事業経費はすべてビジネスカードで決済すると、様々なメリットがあります。

Merit 1

ポイントがためられる

カード決済によって、ポイントがたまります。中には1%の高ポイント還元率のものも。現金で経費を支払うよりも断然お得です。

Merit 2

経費の管理がラクに

事業経費はビジネスカードで決済するようにすると、個人の生活費と事業経費を分けて管理できるため、経費管理が楽になるうえ、計上漏れも防止できます。

Merit 3

キャッシュフローに余裕を持たせられる

経費の支払い日を毎月のカード支払い日に集約できるので、時間的な猶予が生まれ、資金繰りがしやすくなります。

Merit 4

充実した付帯サービス

旅行傷害保険やオフィス用品の割引サポート、出張に役立つ新幹線のネット予約やホテル・航空券の手配といった、ビジネスカードならではのお得で便利なサービスがあります。中にはWeb上で明細に経費費目の追記などの編集ができるなど、青色申告を行う個人事業主にうれしい機能をもつカードも。

Merit 5

開業したばかりでも申込可能な場合も

決算書の提出が不要で、開業したばかりでも申込可能なビジネスカードがあります。

Merit 6

年会費が無料など、手軽に作れるカードもある

中には、年会費無料のカードもあります。まずは年会費無料で使ってみて、より手厚いサービスが必要になればゴールドカードにアップグレードするのも一つの方法です。

会計ソフト

 確定申告、特に青色申告をするのであれば、会計ソフト(青色申告ソフト)を利用するのがおすすめです。
 経理や簿記の知識がなくてもWeb上で複式簿記の作成が可能で、確定申告書の作成まで一括して行えるため、初心者でも確定申告をスムーズに行うことができます。また、中にはサポートデスクを用意しているサービスもあります。分からないことがあればすぐに聞けるので、操作などに不安がある人はこうしたサービスを利用するのも良いでしょう。

個人事業主にもおすすめのビジネスカード!
NTTファイナンスBizカード

 個人事業主としてビジネスカードを作るなら、NTTファイナンスBizカードがおすすめです。

Merit 1

ビジネスカード屈指の1%ポイント還元

カード利用で1%のポイントが還元されます。貯まったポイントはキャッシュバックのほか、ギフトカード、電子ギフトなどに交換可能。経費精算で高いポイント還元を受けられるのは大きなメリットです。

Merit 2

手厚い海外・国内旅行傷害保険

ゴールドカードは最高1億円の海外旅行傷害保険、最高5,000万円の国内旅行傷害保険を付帯。レギュラーカードも最高2,000万円の補償がついており、出張が多い方におすすめです。
※保険適用には当社所定の条件がございます。

Merit 3

福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」を
優待価格で利用可

140万件以上の特典が利用可能な福利厚生サービスを、お得に利用できます。

Merit 4

空港ラウンジサービス

ゴールドカードなら国内外の空港ラウンジが利用可能です。

Merit 5

Web明細編集機能

Web上でメモ入力や経費費目等の追記ができるため、確定申告用の帳簿作成に便利です(特許第6923584号)。

Merit 6

Amazon Businessを利用可能

Amazonによる法人・個人事業主向けのサービスに簡単に登録できます。オフィス用品など一部の商品が個人向けよりもお得に購入できるなど、多くのメリットがあります。

参考文献(順不同)
独立行政法人中小企業基盤整備機構 https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list6/6-1-1.html
一般社団法人 全国青色申告会総連合 https://www.zenaoirobr.jp/
日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/index.html
中小企業庁ウェブサイト https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/index.html
厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index.html
日本商工会議所・小規模事業者持続化補助金 https://r1.jizokukahojokin.info/
事業承継・引継ぎ補助金Webサイト https://jsh.go.jp/r3h/

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