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マラソンのトリビア

五輪や世界陸上以外にも、世界ではさまざまなマラソンレースが開催されています。このページではそんなレースのエピソードや、ランナーを支えるアイテムのトリビアをご紹介。東京マラソンを含む世界の6大レースの中でも一番伝統があるボストンマラソンは、日本人にも古くからなじみ深いようで……?

世界中で争われる最高峰の戦い

 数あるマラソンレースの中でも、もっともメジャーかつハイレベルなのが、ワールドマラソンメジャーズでしょう。2006年にスタートしたこのマラソンシリーズは、ボストンマラソン、ロンドンマラソン、ベルリンマラソン、シカゴマラソン、ニューヨークシティマラソンで得られるポイントの総数で世界一のランナーを決めるというもの。2013年から東京マラソンも加わって世界の6大マラソンで競われるようになり(五輪と世界陸上も開催年のみポイントに)、優勝者には50万ドルもの賞金が贈られるんです。

丸裸に裸足でトラックを疾走!?

 ボストンマラソンは、暦年開催のマラソンレースとしては世界最古の伝統があるもの。1896年のアテネ五輪のマラソンに感動したボストン市長が1897年に始め、戦争中も途切れることはなく、その後の市民マラソンのお手本にもなりました。
 そんなボストンマラソンは古くから日本人になじみが深く、1951年の第55回大会では広島出身の田中茂樹がマラソン足袋を履いてレースを制し、現地の新聞でも大きく取り上げられました。また、1974年の第78回大会では、日本生まれで米国籍の美智子ゴーマンが2時間47分11秒のコース新記録で優勝しました。同選手は1977年にも優勝し、同年のニューヨークシティマラソンでも連覇を果たした強豪選手。五輪がもっと早く女子マラソンを採用していれば(1984年のロサンゼルス五輪が初)、日本に縁のある女子選手初の金メダル獲得になったかもしれません。

マラソンレースは儲からない?

 アメリカではボストンマラソンの初開催より1年前に、国内初のマラソンレースが行われていたといいます。1896年、ニューヨークの陸上クラブ主催でコネチカット州のスタンフォードからブロンクスの競技場までの25マイルを争ったマラソンレースは、泥道や砂利道に参加者が苦戦、大半が途中棄権という大混戦となったそう……。
 現在ニューヨークで開催され、6大マラソンのひとつでもあるニューヨークシティマラソンは、1970年に開催されたセントラルパークを周回するレースをルーツに、1976年、ニューヨークの5つの行政区を通過するコースで実施されたもの。人種のるつぼといわれるニューヨーク中を巻き込んだレースは一度だけの開催のはずでしたが、エントリーを打ち切らなければいけないほど応募が殺到し、恒例行事となったとか。「マラソンは儲からない」という通説を覆し、マラソンは都市の魅力をアピールできる競技であることを証明した同レースは、世界中の大都市で開かれるマラソンの指針となったのです。

過酷なエクストリームマラソン事情

 1980年代になると、42.195キロを超える距離を争うものやユニークなマラソンレースが世界中で増加します。なかには単に人間が走るだけでないレースもあるようで……その一部をここでご紹介しましょう。

スタートまで2週間かかる……

 世界最高峰のエベレストを駆けるマラソンがTenzing-Hillary Everest Marathonです。ニュージーランド出身の登山家、エドモンド・ヒラリー卿と、シェルパのテンジン・ノルゲイが1953年に世界で初めてエベレスト登頂に成功したのを記念して始まったこのレースは、標高5356メートルのエベレスト・ベースキャンプ近くにある町をスタートし、約2000メートル下にあるゴールの町までの約42キロを競うもの。参加者は身体を順応させるため、2週間以上かけて徒歩でスタート地点まで登っていくという、走る前から過酷なレースなんです。

人と馬、早いのはどっち?

 イギリスのウェールズで1980年から開催されているMan versus Horse Marathonは、人間と馬、長距離を競えば人間が勝つのではないかという二人の男のパブでの話をきっかけに始まったレース。フルマラソンより少し短めで、起伏の多い大自然の中の約24マイル(約38.6キロ)を人間と馬が競い合うもので、初開催から長い間、馬の勝利に終わってきましたが、2004年に初めて人間が勝利(2時間5分19秒)したとか。

2カ月近く走り続ける!?

 世界最長距離を争うのがThe Self-Transcendence 3100 Mile Raceです。ニューヨークのクイーンズに広がる規定のコースを5649周するもので、その総距離は3100マイル(約4991キロ)にもなるそう! 1日平均約60マイルを、朝6時から夜中の12時まで52日間かけて走るという過酷なレースとなるため、ボランティアが食べ物や水分を提供し、健康管理のために医者も常駐しているんです。身体だけでなく、強い精神も求められるこのレースはインドの宗教家によって始められたといいます。

“弁当箱”が腕に収まった!?

 さて、ここからはレースに欠かせないアイテムのエピソードも紹介していきましょう。マラソン選手の多くが付けている腕時計、ペース調整のために必須のアイテムですが、近年のランナー向け腕時計はGPS機能を搭載したり心拍数を計れたりと高機能化が進んでいます。
 そもそもこうした腕時計の走りとなったのが、セイコーが1981年に発売したセイコーランナーズS229。当時の心拍数計は携帯用といえど弁当箱ほどの大きさだったため、軽量化はもちろん、人間の身体が発するさまざまな電気雑音を排して、いかに心臓の電気信号だけを測定できるかに開発陣は苦心したのだそう。ストップウォッチ機能や日常生活防水も備えてリリースされた同腕時計は、科学的トレーニングに欠かせないものになっただけでなく、1960年代初めに発売された防水カレンダー付き自動巻きのセイコーファイブ、1970年代に発売された液晶デジタル水晶時計と並び、セイコーの腕時計の3大ヒット商品といわれているようです。

ランナーを支えるシューズの進化

 最後に、ランナーの足を支える大切なシューズのお話を。市民マラソンレースが盛んになった1970年代は、急な運動でひざやかかとの痛みを訴えるランナーも続出しました。それを受けて、1970年代後半にはブルックスがゴムよりも軽量で衝撃吸収性能に優れ、現在もクッション素材として使用されているEVAをソールに初めて採用。ナイキもミッドソールに圧搾空気を注入した“AIR”の開発に成功します。  シューズメーカーの開発競争が激化していく中、日本のアシックスからも多くランナーに受け入れられるシューズが登場しました。アシックスが1986年にリリースしたGT-Ⅱとフリークスαは、18メートルの高さから生卵を落としても割れないで受け止められる画期的な衝撃吸収剤“αGEL”を世界で初めてシューズに取り入れたもの。体重の3倍もの衝撃が着地時にかかるランナーにとって衝撃吸収性と前に進むための反発性に優れたシューズは人気を博し、現在も同社の代表的なテクノロジーとして進化しているんです。

厚底シューズがマラソン界を席巻!!

 最近のマラソン界のトレンドといえば“厚底シューズ”でしょう。従来のシューズよりも厚いソールが特徴のランニングシューズの先鞭をつけたのが、ナイキが2017年にリリースしたズームヴェイパーフライ4%です。約4センチと分厚いソールにカーボンファイバー製のプレートも搭載したこのシューズは、それまでのシューズがクッション性、もしくは薄いソールで反発性を追求していたのに対して、その両方を兼ね備え、軽量性も実現したもの。疲労を軽減できるだけでなく、反発性があることからスピードも生みやすく、2016年、リオ五輪でナイキの契約選手たちがこのプロトタイプで走った際には男女合わせて5つのメダルを獲得したほどなんです。
 また、2018年のベルリンマラソンでエリウド・キプチョゲが2時間1分39秒の世界記録を達成した時や、同年のシカゴマラソンで大迫傑が2時間5分50秒の日本新記録を達成した時にも、同モデルや同モデルをベースにしたシューズを着用していたそう。今年(2019年)の箱根駅伝でも参加選手の約4割がナイキの厚底シューズを履くなど、トップランナーから大きな支持を得ているんです。


最近はスピード化が進み、長らく“不可能”といわれていた人類初のサブ2(2時間切り)も、非公式で特別な環境のもとながらキプチョゲ選手が達成したばかり。トレーニングやアイテムの進化で、これからもエキサイティングな戦いが見られそうですね!

参考文献(順不同)
大島幸夫『市民マラソンの輝き』(岩波書店)/酒井政人『ナイキシューズ革命 “厚底”が世界にかけた魔法』(ポプラ社)/エド・シーサ『2時間で走る フルマラソンの歴史と「サブ2」への挑戦』(河出書房新社)/武田薫『マラソンと日本人』(朝日新聞出版)/トル・ゴタス『なぜ人は走るのか ランニングの人類史』(筑摩書房)/日本陸上競技連盟(ホームページ) 等

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