トップページ > 特集 vol.45 日本の受験のこれから

日本の受験のこれから

いま、受験は2020年度の制度改革に向けて、大きく変化しています。1990年代に入り「大学全入時代」に突入してからの受験事情を中心に、このページではこれからの受験についても見ていきます。

“お受験”過熱、そのルーツは?

 1980~90年代、好景気に沸く日本では、経済的なゆとりから国立・私立小学校受験が社会的なブームになります。「お受験」をテーマにしたテレビドラマ「スウィート・ホーム」(TBS)が放送され、受験の準備に翻弄される親の姿や厳格な入学選考方法がメディアで取り沙汰されることも多くなりました。
 しかし、私立小学校の設立当時にまで遡ってみると、厳しい入学選考を課す学校は多くなかったといいます。例えば明治期の慶應義塾幼稚舎では、入学希望者に学校長が面接を行い、簡単な学力を試した上で入学者を決定していました。また、1917(大正6)年に設立された成城小学校は、先着順に入学希望者を受け付け、定員に達したところで締め切るか、受け付け順に個別に面接や知能検査・身体検査を行った上で入学者を決定していたのだそう。
 そんなお受験が過熱し始めるのは大正後期から。中等・高等教育機関を併設していた一部の私立小学校へ入学希望者が殺到したことで定員を大きく上回ったため、高校や大学入試と同じような入学試験が入学選考に導入されました。そのため親たちは、子どもを受験専門の教室に通わせたり、入学選抜で導入されていた知能テスト(メンタルテスト)の過去問を利用して、お受験の準備を進めるようになったといいます。

多様化する大学受験

 1993(平成5)年になると、前年の約205万人をピークに18歳人口が減少に転じ、受験市場にも大きな変化が訪れます。少子化に反して大学数や大学定員が増加していたことから「大学全入時代」が訪れ、それぞれの大学が学生を確保するために入試制度も多様化しました。
 現在の主な大学の入試方法は以下の通り。どの世代でもなじみのある一般入試をはじめ、センター試験を利用したものや、受験生の学力や適性などを総合的に判断するAO入試など多岐にわたっています。

一般入試

個別の学力検査の結果にもとづいて合否を判定する入試。国公立大学ではセンター試験を受験してから、大学独自の一般入試を受ける。


センター試験利用入試

センター試験の結果で合否を判定するものと、センター試験に加えて大学独自の入試を実施するものがある。


AO入試

書類審査や面接、小論文などを実施し、受験生の学力や適性などを総合的に判断する。


指定校推薦入試

高校などの学校長などによる推薦により、高校での成績や取り組みをもとに、調査書と面接で主に判定される。


公募推薦入試

大学の指定校以外でも受験資格のある推薦入試。一般的に全国の高校に在籍する受験生が対象となる。


自己推薦入試

公募推薦と違い、学校長などの推薦を必要とせず、自分で自分を推薦する入試方式。

 また、海外の中等教育機関で留学経験のある学生が対象となる帰国子女入試や、社会人経験がある受験生向けの社会人入試などもあります。大学受験といえば、志望する大学のキャンパス内で行われるのが常でしたが、近年は離れたところで暮らす受験生も受験しやすいように、試験会場をキャンパス外に設置する大学も。さらに、試験日を2日以上設定し、受験生が都合のよい日を選んで受験できる試験日自由選択制を導入している大学も増えているんです。

受験の影響でお菓子業界にも変化?

 近年は受験シーズンを前に、お菓子メーカーが“受験必勝祈願”の期間限定商品を発売することも多くなりました。受験生を応援するお菓子の元祖といわれているのが「キットカット」(ネスレ)。商品名が「きっと勝つとぉ(きっと勝つよ!)」という九州の方言に似ていることから、2002(平成14)年頃から九州を中心に口コミで広がったのがきっかけなのだそう。いまでは「勝っぱえびせん」(カルビー「かっぱえびせん」)や「ウカール」(明治「カール」)、「トッパ」(ロッテ「トッポ」)など、商品名を変えたお菓子も登場するなど、会社をあげた応援が風物詩になっています。

センター廃止後の受験はどうなる……?

 前身となる大学共通第一次学力試験に始まり、長い間、国公立大学等の入学条件となっていた大学入試センター試験(以下、センター試験)。日本最大規模のこの入試方式が2020(平成32)年1月の実施を最後に廃止され、新しいテストに代わることが文部科学省から発表されています。この先、受験はどう変わっていくのでしょう?
 文部科学省が2020年度からの導入を検討しているのが、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」です。これは、知識詰め込み型の勉強で対応できてしまう従来の試験を見直し、受験生の知能・技能だけでなく、思考力、判断力、表現力や、主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度まで評価しようというもの。高校と大学の教育を一体で見直しながら、高校で習得した基礎的な内容を測る「高等学校基礎学力テスト(仮称)」や、十分な思考力や判断力、表現力があるか評価される「学力評価テスト」の導入、各大学の個別の入学者選抜の改革が計画されています(2016年8月末時点)。
 2017(平成29)年度初めには具体的な方針が公表される予定ですが、最近では一般入試のみだった東京大学と京都大学でも、受験生の学力や意欲、各学部への適合力などを総合的に評価する新しい推薦入試や特色入試(AO入試)が導入されています。今後も後期入試の募集定員の一定数を推薦入試やAO入試に充てる国立大学は増えるとみられており、受験改革はすでに始まっているといえそうです。

個別の筆記試験は日本だけ!?

 これまでは日本の受験について見てきましたが、最後にほかの国の受験事情ものぞいてみましょう。そもそも日本の大学のように、各大学や学部が独自の筆記試験を課している国は、世界のなかでも珍しいのだそう。例えばアメリカでは、大学が個別で入学試験を課す代わりに、SAT(Scholastic Assessment Test)やACT(American College Testing Program)と呼ばれる日本のセンター試験のような共通筆記試験のスコア提出を求めることが一般的。その共通筆記試験も“年に一度”ではなく複数回受けることができ、高校1・2年生にも受験資格があるのだそう。大学の合否は、共通筆記試験でもっとも高いスコアとともに、志望理由書や高校の成績証明書など、各大学の募集要項に沿った書類選考などを経て判定されるのです。
 一方、日本のお隣・中国は、日本のセンター試験に相当する「全国大学入試統一テスト(普通高等学校招生全国統一考試)」の結果によって志望校から合否が通知されるシステムが主流です。地域によってはテスト前に志望校を選択しなければならなかったり、各大学で二次試験が行われない“一発勝負”のため、受験生にとっては大きなプレッシャーとなっているようですが、こちらについても日本と同じように、入試改革が進められているといいます。


苦い思い出、有意義な経験と、受験に対する想いはさまざまでしょうが、志望校合格を目指して勉強に励む受験生には良い結果を出してほしいもの! 受験生が周りにいるという方は、受験必勝祈願のお菓子を差し入れてみてはいかがでしょう?

参考文献(順不同)
竹内洋『立志・苦学・出世 受験生の社会史』(講談社学術文庫)/櫻田大造『大学入試担当教員のぶっちゃけ話』(中公新書ラクレ)/『月刊高校教育』2008年4月号(学事出版)/小針誠『〈お受験〉の歴史学 選択される私立小学校 選抜される親と子』(講談社選書メチエ)/天野郁夫『試験の社会史 近代日本の試験・教育・社会』(平凡社ライブラリー)/北京研究連絡センター 横松良介「中国の学校教育制度と大学入試制度改革」(論文)/吉野剛弘「近代日本における予備校の歴史」 (論文)/全国語学教育学会、河合塾「Kei-Net」、ベネッセ教育情報サイト、ネスレホームページ 等

  • 1
  • 2

Traceおすすめの関連商品

  • 姿勢良く勉強できるチェア アップライト(UPRIGHT)
  • innovator(イノベーター家具) Kids キッズテーブル100cm
  • DeLonghi/デロンギ セラミックファンヒーター
  • Kowa/コーワ 面発光 LEDデスクライト スタンドタイプ
ディノス

バーゲン&セール情報やスペシャルな特集が満載!

カタログ、テレビ通販「ディノス」のオンラインショップ。 幅広いジャンルで多数の商品をご用意。

倍増TOWN経由でディノスをご利用いただくとNTTグループカードご利用ポイントが2倍!(2016/12/20現在)

※倍増TOWNのご利用にはMyLinkへのログインが必要です。 ※一部ポイント加算の対象外となる商品・ご注文がございます。詳しくはこちら

※別途送料がかかる場合がございます。 ※掲載の商品は、在庫がない場合や予告なく販売終了する場合がございます。あらかじめご了承ください。 ※価格は変動の可能性がございます。最新の価格は商品ページでお確かめください。 ※商品の色はご覧頂いている環境によって実際の色とは異なる場合がございます。

PageTop