日本や世界で1年間に消費されるインスタントラーメンはどのくらいだと思いますか? インスタントラーメンにまつわるデータとともに、日本や世界の即席めん事情を探っていきましょう!

現在、日本で1年間に生産されるインスタントラーメンは約56億5000万食。日本人は1年間で1人平均44.3食のインスタントラーメンを消費するといわれています。まさに国民食といえるインスタントラーメンは、ご当地ものと呼べるさまざまな商品を楽しめるところも魅力のひとつですよね。
九州地方を中心に、西日本でポピュラーなのが、棒状即席めんの元祖でもあるマルタイの「即席マルタイラーメン」。棒状即席めんを全国区に押し上げた商品として高い知名度を誇りますが、九州ではマルタイ以外にも、“棒状即席めんひと筋”というメーカーが数多く存在していたのだそう。
ご当地といえば、全国で売られている商品でも、特定の地域でなければ食べられない味があるんです。というのも、日清食品「どん兵衛」や東洋水産「赤いきつねと緑のたぬき」のようなカップうどんは、関西と関東で味付けが異なっていることも。例えばどん兵衛は、パッケージの側面に西(West)を意味する「W」と書かれたのが関西風、東(East)を意味する「E」と書かれたのが関東風で、それぞれ昆布だしをベースにした薄口醤油仕立て、かつおだしをベースにした濃口醤油仕立てのスープと、地域によって味わいも異なっているんです!

世界の食文化に新風を起こした日清食品のカップヌードルは、自動販売機を活用し、インスタントラーメンをより身近にした商品としても知られています。カップヌードルは発売開始当時から、同商品専用の自動販売機が展開されていたんです。高速道路のサービスエリアやフェリーの自動販売機コーナーなどにはいまでも設置されていることがあるため、使ったことがある人も少なくないかもしれませんが、初期型の自動販売機には「自動給湯機能」が搭載されていて、フタをはがさなくても専用の管で熱湯を注いでくれていたのだとか。
また、最近では羽田空港に、日本全国のご当地インスタントラーメンを販売する自動販売機が設置されているといいます。いつでもどこでも気軽に食べられるインスタントラーメンは、24時間休まず稼働している自動販売機との親和性が高いのかも?
日本で誕生したインスタントラーメンは、いまや世界中で親しまれ、WINA(世界ラーメン協会)によると、2015年の1年間に全世界で消費されたインスタントラーメンは977.1億食にも上るのだそう! 1970年初頭から本格的な海外進出が始まったインスタントラーメンは、めん文化が根付いているアジア圏をはじめ、意外なところではフィジー諸島やロシアなどでも浸透。その国独自の食材や味付けがほどこされ、現地で生産・販売されているといいます。めんのバリエーションも、小麦粉を原料にしたものだけでなく、米粉や緑豆を使ったものなどさまざま。どんな商品が販売されているのか、世界の即席めん事情を少し覗いてみましょう。

1970年代から日本の即席めんメーカーが進出しているアメリカ。牛肉や鶏肉、海老味といったインスタントラーメンをはじめ、マッシュルーム味やチーズ味なるものも販売されているのだとか。

2015年の消費量が400億食以上と、世界一のインスタントラーメン需要がある中国。トマト味や野菜味などのほか、羊肉味のインスタントラーメンが発売されていたりとバリエーションも豊か。また、台湾では漢方薬をベースにした商品や、椎茸や昆布だしを利かせたベジタリアン向けの「素食」ラーメンも親しまれているようです。

中国に次ぐ世界2位のインスタントラーメン需要があるインドネシア。世界でもっとも多くのイスラム教徒を抱える国では、ほとんどの商品に豚肉が使われず、イスラム教の戒律に則って生産されたハラール・インスタントラーメンだといいます。インドネシアの焼きそば「ミーゴレン」の即席めんも人気で、日本の焼きそばと同じように“湯切り”も必須なのだそう。

1968(昭和43)年に誕生した日清食品「出前一丁」は、日本よりも海外発の商品のほうが味の種類が多彩という珍しいブランド。東アジアや欧州でも親しまれ、特に香港では袋めんタイプだけで20種類以上のバリエーションが存在するともいわれているんです。
最後はこの夏におすすめのインスタントラーメンレシピをご紹介! 今年3月にスタートしたNHKの料理番組「きじまりゅうたの小腹がすきました!」などで活躍する人気の料理研究家、きじまりゅうたさんに、短時間でもササッとおいしく仕上げられるインスタントラーメンのレシピを教えていただきました。
暑い時期にぴったりのさっぱり混ぜ麺。夏バテ気味のからだを元気にしてくれる卵にトマトの酸味がプラスされ、キャベツの食感も食欲をそそるはず!
●インスタント麺醤油味:1袋 ●キャベツ:100g ●トマト:小1個
●細ネギ:適量 ●卵:1個 ●ラー油:適量 ●添付の調味料:1/2袋分
キャベツを7~8mm幅の細切りにする。トマトは1cm角に切る。ネギは小口切りにする。
小鍋に水を入れて煮たて、麺を入れる。
麺の茹で上がりの1分前になったらキャベツを入れる。
時間になり、麺とキャベツに火が通ったら、ザルにあげて水気を切る。
を器に盛り、卵を割り入れる。トマトとネギを載せ、添付の調味料とラー油をかければ完成。いただくときはよく混ぜることを忘れずに!

ベトナムの麺料理「フォー」をイメージしたエスニックな塩ラーメン。本場は米麺を使用しますが、食べ慣れた卵麺でつくっても本格的な味わいを楽しめます!
●インスタント麺塩味:1袋 ●パクチー:適量 ●桜えび:大さじ1 ●レモン:適量
●ナンプラー:小さじ1 ●添付の調味料:1袋分弱
インスタント麺を表記通り茹でる。
どんぶりに、添付の調味料を少なめに入れてナンプラーも加え、表記通りの量の湯を注ぎ、麺を入れる。
桜えびをちらし、刻んだパクチーを添える。好みでレモンを絞れば完成!

きじま りゅうた さん/料理研究家
東京都出身。祖母は料理研究家の村上昭子、母は杵島直美という料理家一家に育ち、自身も幼い頃から培ってきた料理センスと独自の視点から考案した“ムリのない料理”を提案している。NHKの料理番組「きじまりゅうたの小腹がすきました!」「きょうの料理」をはじめ、雑誌やイベントを中心に活躍。「今日も、カレー味」(誠文堂新光社)、「きじまりゅうた すぐウマ料理」(角川マガジンズ)など著書も多数。
日本で生まれたインスタントラーメンは、半世紀以上の歳月を経て、世界中の人々の食生活を支えるまでに進化しました。まだまだ暑い日が続きますが、きじまさん考案のレシピも取り入れて、これからも“地球食”といえるインスタントラーメンを味わっていきましょう!
参考文献(順不同)
一般社団法人 日本即席食品工業協会 監修「日本が生んだ世界食! インスタントラーメンのすべて」(日本食糧新聞社)/山本利夫「日本懐かし即席めん大全」(辰巳出版)/山本利夫「即席麺サイクロペディア2 世界の袋麺編」(社会評論社)/一般社団法人 日本即席食品工業協会、世界ラーメン協会、日清食品ホームページ 等