トップページ > 特集 vol.39 スポーツ新聞のナゾを探る

スポーツ新聞のナゾを探る

いまではおなじみのあのイベントは、スポーツ新聞がなければ浸透しなかった……? このページでは、スポーツ新聞のデータや紙面にまつわるこぼれ話を掘り下げていきます!

一般紙を抜く発行部数を誇るスポーツ新聞とは?

 現在、スポーツ新聞は約355万部発行されており、新聞全体の発行部数に占める割合は約8%(※)。新聞業界全体の発行部数が年々減り続ける中、スポーツ新聞も例外ではありませんが、発行部数で“明るい話題”を持っているスポーツ新聞があるんです。
 1948年に関西初のスポーツ新聞として誕生したデイリースポーツは、阪神タイガース愛に溢れる新聞としておなじみ。野球以外のスポーツでビッグニュースが入ったり、社会的関心事が起こっても、1面はほぼ阪神の記事というブレのなさは、「デイリーといえば阪神、阪神といえばデイリー」と呼ばれるほどで、テレビのバラエティ番組でも度々取り上げられています。
 そんなデイリースポーツは、阪神愛だけが特徴ではありません。同紙は系列会社に神戸新聞社を持っていますが、発行部数が系列の神戸新聞よりもはるかに上回っているのだそう。いまでは多くのスポーツ新聞が、朝日、読売、産経などの一般紙を系列会社に持っていますが、発行部数でそうした系列紙を抜いているのは、数あるスポーツ新聞の中でもデイリースポーツだけなんです!
※一般社団法人日本新聞協会「新聞の発行部数と世帯数の推移」より

あのイベントも? スポーツ新聞発の試み

 スポーツ新聞主催のスポーツ大会やイベントは、いたるところで開催されていますが、調べてみると、意外なイベントの立ち上げにも貢献していたことがわかります。その一例をここでご紹介!

市民マラソンの発展に貢献!

市民マラソンの草分けといわれる青梅マラソンは、スポーツ報知(報知新聞社)の主催で始まりました。「マラソンの普及と強化」を目的に、誰でも参加できる大衆マラソンとしてスタートし、今年で50回目を数える由緒あるマラソンイベントでもあるんです。


モータースポーツの普及にひと役!

世界最高峰のモータースポーツであるF1。1976年に日本で初めて開催されたF1は、スポーツニッポンの主催で実現したもの。日本のモータースポーツの普及に、スポーツ新聞は大きく貢献したんですね。

朝刊<夕刊のほうがセンセーショナル?

 スポーツ新聞は朝に発行される朝刊紙だけでなく、夕刊を専門に発行する夕刊紙というジャンルもあります。現在発行されている夕刊紙は、夕刊フジ、日刊ゲンダイ、東京スポーツの3紙。そのうち、東スポを除く2紙は、ブランケット判の半分のサイズであるタブロイド判で販売されています。
 サイズだけでなくその内容も、夕刊紙と朝刊紙で少々異なるようです。スポーツを中心に、社会や政治、経済のニュースを取り入れるという情報内容は大きく変わらないものの、夕刊紙では政治や経済ネタを1面の中心にして、センセーショナルな見出しを使ったり、一般紙では伝えられることのない、政治や事件の“裏ネタ”を掲載するケースが多くなる様子。宅配が6割以上を占めるといわれる朝刊紙と異なり、夕刊紙はコンビニエンスストアや駅の売店での即売が大きな割合を占めていることから、読者を惹き付ける刺激的な内容や話題性にウエイトが置かれているのかも?

宅配と駅売りで内容も違う?

スポーツ新聞は宅配と即売で、紙面の内容が異なることも。大人向けの“お色気情報”が掲載されているスポーツ新聞は少なくありませんが、宅配版となるとそのページがテレビやラジオの番組表「ラテ欄」に差し替えられることもあるんです。こうした取り組みで、スポーツ新聞は幅広い世代に楽しまれているんですね。

いま、学生スポーツ新聞が花盛り?

 スポーツ新聞は、新聞社が発行するものだけにあらず! 大学の体育会の試合や選手を、学生自身が取材して発行する学生スポーツ新聞は、1953年に駿台スポーツの名で創刊された明大スポーツが、現存する中でもっとも長い歴史を持つといわれています。この学生スポーツ新聞、学生たちだけでなく、新聞社が立ち上げに協力するケースもあり、新聞業界全体の発行部数が減少する中、新創刊も相次いでいるのだとか。
 学生スポーツのビッグイベント時には総力を挙げた特集記事が組まれるのも特徴で、なかでも早稲田大学の早スポは、早稲田対明治のラグビー対決を取り上げる「早明ラグビー号」で、約2万部も刷るのだそう!(通常は5,000部) また、Webサイトやtwitterなどでも情報発信するなど、通常のスポーツ新聞にも劣らない活動の幅を見せています。

スポーツ新聞の未来は子どもにあり?

 スポーツニッポンが業界初の取り組みとして手がけているのが、スポニチジュニアと呼ばれる子ども向けのスポーツ新聞。夢に向かって挑戦する子どもたちに希望と勇気を与えたいという想いから、2010年2月に誕生したもので、人気スポーツ選手のメッセージをはじめ、道具を大切に扱うことや食事の大事さなどを伝える記事も掲載。記事中のすべての漢字にルビが打たれているだけでなく、赤や金といったインパクトの強い色をなるべく避け、子どもに受け入れられやすいパステルカラーを中心にした色遣いにするなど、紙面制作でも随所に工夫をこらしています。読者の中から、スポーツ新聞愛を持った大人が出てくる日も近いかもしれません!


誕生から70年。ビジネスパーソンだけでなく、子ども向けのコンテンツを生み出すなど、新しい取り組みが広がるスポーツ新聞。あまり読んだことがないという人は、ぜひこの機会に手にとってみてはいかがでしょう?

参考文献(順不同)
藤竹暁「図説 日本のメディア 」(NHK出版)/「現代スポーツ評論22」(創文企画)/芹沢俊介「スポーツ新聞はなぜ面白いか」(ジャプラン出版)/東スポ探検隊編「東スポ伝説 一面見出し、そこは一行の劇場だ」 (扶桑社) 等

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