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ますます広がるスマートフォン
vol.103

利用率は9割突破!
ますます広がるスマートフォン

NTTドコモ モバイル社会研究所のスマートフォン・ケータイ所有に関する動向調査によると、日本国内でスマートフォン、ケータイを所有している人のうち、スマートフォンの所有者の比率が92.8%に上ったそう。2010年には4%程度だった比率は、2015年に5割、2019年に8割、そして2021年に9割を超え、この10年で急速に普及したことがわかります。私たちの生活に欠かせなくなったスマートフォン、そのあれこれを辿ってみました。

今でも使える? 世界初のスマートフォン


■ディスプレイ:白黒(スタイラスの操作に対応)
■サイズ:200×64×38mm
■重量:510g
主な機能:1MBのRAMと1MBのROM、カスタマイズされた専用プロセッサを搭載。電話、ファクス、電子メールをはじめ、カレンダー、ToDoリスト、計算機、アドレス帳、スケジュール管理、世界時計、メモ帳などのアプリケーションを利用可能


 上は“世界初のスマートフォン”といわれるIBM Simon Personal Communicatorの主なスペックです。
 Simonは1994年にアメリカで一般販売された端末です。音声通話がメインの携帯電話とともに、通信機能とスケジュール管理やアドレス帳、メモ機能などを兼ね備えたPDA(Personal Digital Assistant)が重宝されていた当時、両者の良いとこ取りといえるSimonは、発売から半年で5万台を売り上げたそう(価格は899ドルから)。スマートフォンという言葉がまだ生まれる以前、こうした端末は「Communicator(コミュニケーター)」と呼ばれていたといいます。

あの大統領も愛用してました

 黎明期のスマートフォンを代表する機種のひとつが、RIM(現ブラックベリー)のBlackBerryではないでしょうか。QWERTY配列の物理キーボードを搭載し、高いセキュリティを備えた端末は、日本で広く支持を集めたとは言い難いものの、欧米ではビジネスパーソンを中心に愛用されました。
 2009年に就任し、2期8年の任期を務めたバラク・オバマ米元大統領も熱心なユーザーだった一人。大統領就任前から愛用し、ホワイトハウスに多機能な端末を初めて持ち込んだ大統領となりましたが、機密保持のために国家安全保障局が研究室を新設し、専門家が数カ月かけて安全性を高める改良を行うほどの大ごとだったそう。
 BlackBerryは2016年以降、ライセンス契約を結んだ中国企業が端末をリリースしていましたが、2020年8月に終了を発表。しかし、アメリカのスタートアップが新たに5G対応のAndroid版BlackBerryを復活させるとアナウンスしたことで、熱心なファンはいまや遅しと続報を待っているようです。

ガラケーからスマホへ

 1999年、NTTドコモが携帯電話に対応したインターネット接続サービス「iモード」を投入し、他社も同様のサービスを展開していた日本では、スマートフォンの普及を待たなくても携帯電話1台で、メールや写真の送受信から電子決済までこなすことができていました。
 いわゆるガラケー(フィーチャーフォン)が独自に進化する中、国内のスマートフォン市場を最初に確立した端末とされるのが、ウィルコム(当時)がシャープ、マイクロソフトと3社で共同開発し、2005年末にリリースしたW-ZERO3です。
 3.7インチと当時としては異例の大きさのタッチパネル式ディスプレイにスライド式のQWERTY配列キーボード、OSにWindows Mobileを搭載した端末は、ガジェット好きからビジネスパーソンまで多くの人の注目を集め、購入ではなく予約のために量販店に行列ができるほどだったそう。

“スマフォ”や“スマフォン”だったかも?

 ところで、日本ではスマートフォンを“スマホ”と縮めて呼ぶことが一般的ですが、スマートフォンという表記や発音から考えると、スマフォやスマフォンでもおかしくなさそうですよね。
 スマートフォンの普及当初はそうした表記、発音も見られたようですが、発音のしやすさや読みやすさからスマホが定着していったようです。初めてスマホの表記が登場したのは、2007年頃のパソコン雑誌『週刊アスキー』だったそう。

世界を熱狂させたプレゼンの裏で……

 現在流通しているスマートフォンのお手本となり、私たちのコミュニケーションやエンターテインメント、買い物、移動や仕事のあり方も一変させてしまった端末といえば、言わずもがなのアップルのiPhoneでしょう。
 2007年1月に行われた、当時のCEOである故スティーブ・ジョブズによる初代iPhoneのプレゼンテーションは伝説的に語り継がれていますが、実は、かなりのドタバタのなかでの決行だったようです。
 というのも、iPhoneが実際に販売されたのは2007年6月末で、半年前のプレゼン時に手元にあったのは未完成の試作品でした。そのため動作が安定せず、約100回を数えたリハーサルを不具合なく終えることはできなかったとか。
 開発者たちはフリーズしない操作の順序、その名も“黄金の道”をトライ&エラーで発見し、携帯電話用基地局を特別に会場に設置して電波状態を安定させ、電波の強弱にかかわらず常に5本のバーが立つように試作品をカスタマイズ。さらに複数のデモ機を準備して万一の事態に備えていたといいます。

カメラは増え、折りたたみも

 指紋認証や顔認証といった技術に私たちが触れたのもiPhoneの進化によるところが大きいですが、一方で、2018年頃からは韓国や中国メーカー発のAndroid端末の機能に驚かされることも多くなりました。
 例えばスマートフォンに欠かせないカメラ。広角、望遠と異なる機能のデュアルカメラを経て、2018年から19年頃には各社がトリプルカメラを搭載した端末をリリースし、最近は広角、超広角、望遠、そしてポートレイトで背景をぼかしてプロ並みの画づくりをしてくれる深度計測用のカメラなどを搭載したクアッドカメラモデルも珍しくありません。
 Galaxyシリーズでベゼルレス化、全画面化といったトレンドをつくり出してきた世界屈指のシェアを誇るサムスンは、2019年に大手メーカーとして初めて折りたたみスマートフォンGalaxy Foldをリリース。画面をとじた状態では普通のスマートフォン、画面を広げればタブレットのような大画面で新たなスマートフォン体験を提供しています。

スマホはいまや資源です!

 2021年に開催された東京2020オリンピック・パラリンピック。実は、選手に贈られたメダルの原材料にもスマートフォンが関わっているんです。
 これまでのメダルは天然鉱物が主な原材料でしたが、今回はリサイクル素材だけを原材料としてメダルをつくる初めての試みで、金、銀、銅、パラジウムといった貴金属や希少金属が使われているスマートフォンやフィーチャーフォン、小型家電などから、金32kg、銀3500kg、銅2200kgと、メダル5000個分以上に相当する金属を2年かけて回収したのだそう。
 スマートフォンや小型家電はリサイクルできる金属が眠った“都市鉱山”といわれています。おうちで眠っている古いスマートフォンがあったら、リサイクルをお忘れなく。

5GやIoTの普及で通信機器がますます増加することが見込まれ、14桁の携帯電話番号を100億個追加する検討も進められています。生活も仕事も変えてしまったスマートフォン、これからの進化にも期待です。

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