進化するラジオ

進化するラジオ

ラジオと聞くと、周波数を合わせ、パーソナリティの声に耳を傾ける。そんなイメージを思い浮かべる人も多いのでは? しかし、ここ数年のラジオ界にはそんなイメージを覆す大きな進化がドンドン起こっているのです。それも、ラジオとの接し方を変えるほどの革新的なトピックが盛りだくさん! そこで、今回はラジオのルーツについて掘り下げていきます。


世界初のラジオ放送は クリスマスソング!?

電波に音声情報を持たせ、遠方で受信するラジオ技術。はじめてこの実験を成功させたのは、エジソンの元部下でもあるカナダ人のレジナルド・フェッセンデンという電気技術者でした。1900年に行われた実験では、約1.6km離れた地点で受信に成功し、これが世界初の音声信号の無線通信となりました。その後、1906年のクリスマスイブには自身が所有していたアメリカ・マサチューセッツ州の放送局から放送を行いました。事前に「クリスマスイブに特別な通信が入るらしい」という噂を聞いていた船の通信士たちは、固唾を飲んでその瞬間を待ちわびていました。そして、流れてきたのはクリスマスソングや聖書の朗読。モールス信号のような音しか流れてこなかった時代ですから、通信士たちはスピーチや歌が流れてきたことに心底驚いたそうです。

ラジオCMの ビジネスモデル確立

世界初の公共放送は、1920年11月2日、アメリカ・ペンシルバニア州のKDKA局によるものでした。内容は当時のアメリカ大統領選でウォレン・ハーディングが当選したという速報です。また、KDKA局は番組の途中に企業のCMを流す「民間放送」というビジネスモデルを確立したことでも知られています。世界初のラジオCMは時計会社やカーディーラー、音楽出版社など諸説あるようです。ちなみに、日本初のラジオCMは、1951年9月1日(開局日)の午前7時に大阪のMBSラジオで流れた精工舎(現・セイコーホールディングス株式会社)のCMです。「精工舎の時計が、ただ今、7時をお知らせしました」という、時刻を知らせる時計メーカーならではの内容でした。

AM、FM、短波? それぞれの違いは?

ラジオにはAM(Amplitude Modulation)とFM(Frequency Modulation)がありますが、何が違うのでしょうか? まず、もっとも大きな違いは、AM「kHz(キロヘルツ)」、FM「MHz(メガヘルツ)」という周波数です。「MHz」は「kHz」の1000倍に相当します。そのため、FMの方が情報量が多く、音がいいことから「FM=音楽」のイメージが強いのです。また、音声を電波にして各ラジオに送信する際の変換方法も異なります。AMは「振幅変調」と呼ばれる方法で、FMは「周波数変調」。特徴は一長一短で、AMは遠くまで聴こえますが、ノイズが入りやすく、音質が悪い。FMは遠くまで伝わりにくいのですが、干渉を受けにくく、音質がいいのです。また、これ以外にも「ラジオNIKKEI」や「NHKワールド・ラジオ日本」のような短波放送もあります。これは「3MHzから30MHzの周波数」を使っているため、この周波数に対応した短波放送が受信できるラジオが必要になります。

ざっと見!日本のラジオ放送史

戦前からはじまったラジオは、いかにして受け入れられるようになったのでしょうか。その流れを、時系列でご紹介します!

日本のラジオの歴史はNHK放送から!

日本ではじめてのラジオ放送は現NHKラジオ第一放送東京放送局である社団法人東京放送局でした。3月22日午前9時30分、東京・芝浦にあった府立東京高等工芸学校の放送所から「JOAK、JOAK、こちら東京放送局であります」という第一声が流れました。2年前に起きた関東大震災で情報伝達メディアの必要性が叫ばれ、開局が急ピッチで進められたそうです。その後、東京から発信された電波は大阪、名古屋でも聴けるようになったのですが、電波が弱く東京以外は非常に聴き取りづらかったそうです。

ラジオは戦時中の重要な情報源に

ラジオ放送がスタートしても、受信機がなければくこともできません。ラジオの普及が進んだのは1931年におこった満州事変がきっかけだそうです。戦況や国内の状況などの情報を求める人が多く、ラジオの契約者数は、1931年9月の約65万から、翌年3月には105万にまで増えたそうです。その後、第二次世界大戦ではラジオを通じて天皇が日本の降伏を告げる「玉音放送」が放送されました。

放送法により民間ラジオ局解禁!

第二次世界大戦後になると、逓信省(ていしんしょう:郵便や通信を管轄する中央官庁)によって制限されていた民間ラジオ放送の設置が「放送法」によって解禁になります。ここから怒濤のように民間ラジオ局が開局していきます。

民間放送一番乗りは名古屋?大阪?

民間放送局第1号は愛知の現CBCラジオ(中部日本放送)。1951年9月1日の朝6時30分に開局しました。また、同日の昼には大阪のMBSラジオ(毎日放送)も開局。その差はわずか6時間。噂レベルではありますが、本当は同時に放送をスタートするはずが、CBCラジオが手違いで、先に放送したという話もあります。

主なAM局の開局日

ラジオは長寿番組の宝庫

日本初の民放FM放送! またも名古屋が初!

FM放送がはじまったのはAM放送から遅れること18年。1969年のことでした。何とこちらも日本初は愛知の放送局。12月24日に日本の民間放送で初のFM放送局として「愛知音楽放送」が開局しました。その後、「愛知音楽FM放送」となり、現在も「FM愛知」として親しまれています。

主なFM局の開局日

IPサイマルラジオ 「radiko.jp」配信スタート

都市部の高層建築物の乱立による電波の乱れや若年層のラジオ離れなどを考慮して、2007年頃からインターネットを通じたラジオ聴取の形が模索されていました。こうして2010年に誕生したのがラジオ放送をインターネットで同時にサイマル配信(ライブストリーミング)する「radiko.jp」です。また、この頃から世の中にスマートフォンが普及。スマホやPCで「Podcast」を楽しむ習慣も根付いてきました。

2014年はトピックス満載! これから、ラジオが熱くなる!

今年はラジオ界の話題が豊富。ひとつは「radiko.jpプレミアム」サービスのスタート。これまでエリア制限によって、受信エリア外のラジオはけませんでしたが、月額350円(税別)で全国60局の番組をくことが可能になりました(詳細は株式会社radikoインタビュー参照)。また、4月1日には名古屋に「Inter FM NAGOYA」が開局。2001年の岐阜FM以来の開局となり、盛り上がりを見せています。今年はラジオ史において重要な1年になるのかもしれません。

1925年に、NHKラジオからはじまった日本のラジオの歴史。現在、全国には100以上のラジオ局があり、各地域で愛され続けています。そして時代の流れを追って行くと、まさにここ数年がラジオを取り巻く環境が変わる時だということがわかります。次のページではラジオの歴史にまつわるトリビアをご紹介します!

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