ラジオのこれから

インターネットを通じて地上波ラジオ放送が楽しめるradiko.jp(ラジコ)。ラジオの聴取スタイルを変えた、この仕組みはいかにして生まれたのでしょうか。そして、この先、どのような進化を遂げていくのか。エリアフリー聴取サービス「radiko.jpプレミアム」がスタートした、このタイミングで話を伺いました。

―2010年3月に地上波ラジオ放送をインターネット経由で配信するradiko.jpが誕生しました。そのきっかけを教えてください。

一番のきっかけは難聴取エリアの解消です。ビルが立ち並ぶ都心を中心に電波を万遍なく届けることが難しくなってきた今、ラジオを聴きたくても聴けないエリアを解消するために、それを通信で補うという考え方です。もうひとつは、若者のラジオ離れを食い止めることです。というのも、私たちが10代の頃、ラジオは部屋で1人、唯一自由にできるメディアとして若者に愛用されておりました。しかし、今の10代〜20代にとっては、その頃に比べると、ラジオは遠い存在になりつつあって、これは、携帯やスマホの普及によって、生活の中にある余白時間を奪われてしまったためと考えております。だとすれば、若者がこれから確実に手にするであろう、そのスマホに適応していくことが近道だと考えたのです。どんな手段でもいいから「ラジオの聴取文化」を維持・拡大していくことが、設立の大きな目的です。

―radiko.jpはラジオを聴くスタイルそのものを変えた、とも言われていますが、実際にどのように変わったのでしょうか。

これまでのラジオ放送は、比較的ザッピング(選局)せず、「TBSラジオ派」や「TOKYO FM派」のように放送局主体で選ばれていました。しかし、radiko.jpは画面をタップすれば、簡単に局が変わり、音質は全局同じ。今後は局間を往来しながら、番組で選ぶスタイルに変わっていくと考えられます。そういったニーズに応えるために、考えているのが番組のレコメンド機能です。近い将来、amazonのおすすめ商品のように、あなた好みの番組をradiko.jpが解析し、提案する機能を実現できればいいなあと思っています。こういった機能は、はじめてradiko.jpを通じてラジオを聴く人にとっても欠かせないものとなるはずです。

―4月1日からは月額350円(税別)で、全国のラジオ局をエリアフリー聴取できる「radiko.jpプレミアム」がスタートしました。聴き所を教えてください。

radikoスタート当初から、エリア制限をなくして欲しいというユーザーの声は多数あり、それを実現しました。このサービスの聴き所は、まず、プロ野球全12球団をはじめとしたスポーツ中継ですね。東京にいながら大阪のラジオ局の阪神戦中継が聴けるわけです。地域のラジオ局は、ほとんど応援放送とも言えるので、離れた地域にいるファンにはたまらないと思います。また、有名人の番組も同様。東京にいながら、大阪ローカルのお笑い芸人の番組が聴けたり、AKBファンであれば、福岡で放送されているHKT48の番組も聴けたりします。これはファンにとって、うれしいでしょうね。

―「radiko.jpプレミアム」では、全国の各ラジオ局のCMもそのまま流れるそうですね。

そうですね。それも大きな魅力だと思います。地元ならではのCMって、結構年月が経っても耳に残っているものですよね。それを聴くだけで、故郷を思い出すことがあるかもしれません。それに、自分の知らない地域のCMってちょっと興味ありますよね。「沖縄ではどんなCMが流れているの?」、「京都では?」と、地域色の強いラジオだからこそ、聴くだけで地元気分が味わえるところも魅力です。

―今後はどのようなサービスを提供していく予定ですか。

いつでも番組が聴ける「タイムシフト機能」は、いつか実現したいと思っています。ここ最近はラジオで話されたことが、その放送直後に、SNSで拡散しているケースも多いんですね。ただ、その番組を後から聴こうと思ってもその手段がない。そこで、「タイムシフト機能」の出番です。このようにある番組を通してラジオに興味を持ってくれた瞬間に、その番組に触れることができる環境を作ることも私たちの役割だと思っています。

―ラジオを取り巻く環境は大きく変わっていますが、その中でも変わらない、
ラジオの魅力とは何でしょうか?

やはり、パーソナリティの存在ですね。そこに尽きると思います。今はネットを介して様々な情報を得ることができますが、ラジオの持つ人肌感はここにしかありません。文字で読むのと、人に語りかけられるのとでは心に刺さる度合いが違うような気がします。ラジオを取り巻く環境が変わっても、一番の根っこであるこの部分がアナログであることは、ラジオが絶対に変えてはいけない“財産”であり、最大の魅力だと思います。

―最後にラジオの“非”リスナーに向けて、メッセージをお願いします。

ラジオに興味を持てない人の多くは、ラジオの中で何が起きているのかを知らないから、だと思います。私たちの情報伝達不足があるかもしれませんが、「聴かず嫌い」もあるかもしれません。騙されたと思って一度聴いていただきたいですね。まずは、自分の興味のあるものからでいいと思います。もし、何から聴いていいのかわからない…という方は、radiko.jp のトップ画面に検索窓があるので、そこに気になるワードを打ち込んでみてください。有名人の名前でも、気になる事柄でも結構です。全国のラジオ局から、あなた好みの番組がきっと見つかるはずです。嫌いなものでも、食べてみたら、意外にうまいじゃん!ってこと、ありますからね。

株式会社radiko

地上波ラジオ放送の配信をインターネット経由で行う。2010年3月からサービス開始。現在、全国のAM、FM合わせた68局と放送大学が参加している。2014年4月1日より、有料でエリアフリー聴取を楽しめる『radiko.jpプレミアム』がスタートし、話題を集めている。

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