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確定申告にレシートは使える? 領収書との違いや保管方法も解説
vol.118

確定申告にレシートは使える?
領収書との違いや保管方法も解説

自営業やフリーランスの場合、確定申告の際に領収書を用い、経費としての支出を証明するのが一般的です。とはいえ、全ての支出に対して領収書が残っているとは限りません。そこで、領収書の代わりとして、レシートを使うことは可能なのでしょうか。
今回は、確定申告におけるレシートの扱いについて解説します。
※本記事の内容は2022年12月6日現在のものです。

確定申告に必要な書類は?

 確定申告にあたっては、以下の書類を用意する必要があります。

  • ・確定申告書
  • ・収支内訳書(白色申告の場合)
  • ・青色申告決算書(青色申告の場合)
  • ・所得が証明できる書類
  • ・控除を受けるために必要な書類
  • ・本人確認書類

 必要書類を作成の上で、期限内に税務署へ届け出なければなりません。
 一方で領収書やレシートは、提出物の対象には含まれていません。ただし、確定申告に用いた領収書やレシートには保管義務があり、いつでも提示できる状態にしておく必要があります。

レシートと領収書の違い

 「領収書」は英語にすると「receipt(レシート)」であり、本来はレシートと領収書は同じものを指します。しかし、日本では、レシートと領収書は異なる目的で用いられるケースが多いです。

レシートとは

 レシートとは商品やサービスの取引に際して、金銭の受け渡しを証明するための書類です。多くは支払いのタイミングでレジ機から印刷され、基本的には何も申告せずとも受け取れます。
 レシートには、以下の情報が印字されています。

●支払日 ●店名 ●品目 ●単価 ●取引内容

 レシートは不特定多数の購入者に手渡すものであるため、購入者ごとの個々の宛先は記載されません。レシートの用途は人によってさまざまで、確定申告に限らず家計簿の記入や商品の返品にも用いられます。

領収書とは

 領収書を英語にすると「receipt(レシート)」であり、前述のレシートと同じ意味を持ちます。一方で、日本の小売業や飲食業における商慣習では、その場で必要項目を手書きした証明書を「領収書」として扱います。
 領収書には品目や単価などといった、レシートに記載されるような詳細な取引内容の記載がありません。その代わりに、支払いの総額のみを「〇〇代」のようにひと括りで記載するのが一般的です。
 その他、領収書には宛先が書かれる点も、レシートと異なります。領収書の左上には、支払いを行った法人や個人の名称が記載されます。個別の対応が必要となるため、小売業や飲食業の店舗では申告しないと領収書を発行してもらえません。
 日本の商慣習において、領収書は確定申告など財務処理の目的で用いられるケースが多いです。

確定申告においてレシートは領収書の代替にできる

 確定申告では、レシートも領収書のように支出を証明する証跡として認められています。
 本来、領収書には以下5つの項目の記載が求められます。

●支払日 ●支払先 ●取引内容 ●金額 ●支払人(宛先)

 これに対してレシートには、「支払人(宛先)」の記載がありません。しかし、不特定多数の顧客と取引をする以下のような業界では、そもそも「支払人(宛先)」の記載が免除されています。

●小売店 ●旅客運送サービス(電車やタクシー) ●飲食店 など

 このためレシートは、領収書と同様に支出を証明できる効力を持ちます。
 ただし、数万円や数十万円に及ぶような高額の取引の場合は、個別に領収書を発行してもらったほうがよいでしょう。なぜなら、頻繁に高額の取引がある場合は、税務調査の際に確認の対象となりやすいからです。
 レシートだけでは申告者自身が本当に支払ったのかを検証できないため、他の人のレシートではないかと疑われてしまう懸念もあります。また、企業によっては、そもそも領収書がないと経費として認めないというケースもあります。そのため、特に高額の取引を行う際は、可能な限り領収書を発行してもらいましょう。

クレジットカードの明細書でも大丈夫?

 クレジットカードを利用すると、1カ月間の利用履歴をまとめた明細書(利用明細書、支払明細書等)が発行されます。このクレジットカードの明細書も、支払いの事実を示す証跡として有効です。確定申告の対象年度中の明細書をダウンロードし、保管しておくことで領収書・レシートの代わりとなります。
 ただし、カード会社によっては明細書をダウンロードできる期間に限りがあります。一定期間が過ぎると明細書を確認できなくなってしまう可能性があるため、データをダウンロードできるうちに取得し、保管しておきましょう。

確定申告におけるレシートの保管方法

 確定申告において、税務署にレシートを提出する必要はありません。ただし、確定申告を行ったあとも、レシートは一定期間にわたって手元に保管しておかなければなりません。具体的には、以下の年数の期間は保管しましょう。

●白色申告の場合:5年間 ●青色申告の場合:7年間

 ここでは、確定申告におけるレシートの保管方法について解説していきます。

あとから取り出せるように仕分けする

 レシートはひとまとめに保管するのではなく、以下のような方法で支払月ごとに分けて保管するのがおすすめです。

●ノートに貼り付ける ●クリップやホチキスでまとめる ●封筒に入れる

 このような方法で保管しておけば、税務調査の対象となったときもスムーズに提示できます。
 事業の内容によっては、レシートの枚数が膨大になるケースもあります。受け取ったレシートは紛失しないように、整理してまとめておきましょう。

電子データで保管する

 令和3年度の税制改正によって、電子データによるレシートの保管も認められるようになりました。これにより、スマホやデジタルカメラで撮影したレシートの写真も、証跡として扱われます。
 ただし、電子データの利用にあたっては、改ざんを行っていないことを証明できる状態で保管する必要があります。例えば、「タイムスタンプ」と呼ばれる保存日時が刻印されるシステムを導入するなどです。あるいは、保存タイミングや変更履歴が記録されるクラウド保存サービスを利用しましょう。
 なお、電子帳簿保存法に対応した会計システムであれば、これらの改ざん防止の仕組みがあらかじめ組み込まれているため、活用するのも手です。

確定申告においてレシートを
領収書の代替とする際の注意点

 レシートを領収書の代替として用いる場合には、いくつか気をつけなければならない点があります。あとで混乱しないよう、保管時のポイントを押さえておきましょう。

提出の必要はないが紛失には気をつける

 レシートは私生活の買い物でも受け取るため、ビジネス上で発行されたレシートと混在してしまう恐れがあります。そのため、レシートを入手した時点で、明確に区別して保管する必要があります。
 加えて、一度発行されたレシートは原則再発行されません。レシートがなくて確定申告の会計処理ができない……といったことにならないよう、紛失には十分に気をつけましょう。

仕事用と私用の品目が分かるようにしておく

 仕事用と私用の品目が混在したレシートでは、仕事用の支出に印を付けるなどして品目を区別する必要があります。この作業が面倒であるならば、仕事用と私用の会計を別々に行っておくのが良いでしょう。
 なお、クレジットカードの明細を領収書代わりとするときも同様に、仕事用の支出に印を付けるなどして品目を区別する必要があります。あるいは、ビジネス目的のみで用いるクレジットカードを用意するのも手です。
 ビジネス用クレジットカードのBizカードには「Web明細編集サービス」という機能があり、支払い明細をWeb上の操作で分割できます。仕事用と私用の会計をまとめて支払っても、その後の処理が楽になる便利な機能なので、活用してみてはいかがでしょうか。

NTTファイナンスBizカードの「Web明細編集サービス」について気になる方はこちら

確定申告において
レシートや領収書がないときはどうする?

 レシートを紛失したとき、あるいは慶弔費などレシートも領収書も発行されない支払いを行った場合はどうすればよいのでしょうか。ここでは、レシートや領収書に代わる手段を紹介します。

出金伝票を使う

 出金伝票とは、法人や個人事業主が自ら発行する、支出を記録した帳票です。この出金伝票は結婚祝金や香典など、レシートや領収書が受け取れないシーンで代替としての機能を有します。レシートや領収書と違い、自分で記載し発行できる点が特徴です。
 出金伝票を発行するにあたっては、以下の項目を記載する必要があります。

●支払日 ●支払先 ●摘要 ●勘定科目 ●金額

 なお、出金伝票の書式は、文房具店や100円ショップなどで入手できます。
 注意点として、出金伝票はレシートや領収書と比較して支出の証明力が劣ります。レシートや領収書がなかったとしても、支出の証拠となる書類を別途残しておきましょう。

【例】
●結婚祝金の場合:結婚式の招待状
●香典の場合:訃報や礼状など

 出金伝票は、あくまでレシートや領収書がどうしても受け取れないシーンでの代替と考えるべきです。レシートや領収書が受け取れるシーンでは、レシートや領収書を忘れずに受け取っておきましょう。

銀行の入出金記録を使う

 レシートや領収書がない場合は、銀行口座の引き落としや振り込みの記録を証跡として活用できます。銀行の入出金記録は、レシートや領収書のように保管する必要はありません。ただし、あとからでも記録をたどりやすいように、通帳の写しと確定申告の資料を一緒に保管しておくのが望ましいです。

クレジットカードの明細書を使う

 以下の内容が記載されていれば、クレジットカードの明細書(1カ月の利用履歴をまとめた書類)も支出を証明する手段となります。

●支払日 ●支払先 ●金額

 ただし、クレジットカードの明細書には、取引内容が記載されないケースも多いです。仮に税務調査が入った場合、プライベートの支出と混在していないかという点で、より詳細な確認をされる可能性もあるでしょう。
 また、確定申告における経費の申告とは別に、消費税の控除を受ける際にはクレジットカードの明細書は証跡として認められません。そのためレシートや領収書を受け取れる場面では、それらの保管を優先しましょう。

確定申告用のレシートは
月ごとに分類してきちんと保管しよう!

 確定申告時、レシートは領収書と同じように、支出を証明する手段として活用できます。そのため、領収書を入手できない状況ではレシートを受け取り、きちんと月ごとに保管しておきましょう。
 なお、レシートは税務署へ提出する必要はないものの、あとからでもすぐに参照できる状態にしておかなければなりません。
 法人や個人事業主の場合は、ビジネス用クレジットカードに支払いをまとめると、支出の流れを追いやすくなります。確定申告の手間も減らせますので、経理業務を効率化したい人はビジネス用クレジットカードを検討してみてください。

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※掲載内容は一例です。実際の申告の際は、税理士や所轄税務署にご確認ください。

参考文献(順不同)
国税庁 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/19/33.htm
国税庁 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/1506/01.htm
国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/index.htm

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