働き方改革がスタートし、副業を認める会社が増えてきました。それにあわせるように、インターネットを活用してすきま時間でうまく稼げる副業も増えています。今回は、会社勤めをしている人でもやりやすい副業をご紹介。副業評論家の藤木俊明さんに新しい副業事情を教えてもらいました。
これまでの副業といえば、会社が終わってからコンビニなどで働くスタイルが主流でした。配送業や工事現場などの肉体労働、クラブやスナックでの接客業も、これに当たります。こうした副業は、時給が決まっていて、時間を拘束される代わりに賃金が支払われていました。
一方、新しい副業はインターネットの仲介サービスを利用して、すきま時間でスキルや労働力を提供するスタイル。代表的なものがクラウドソーシングといってネットを介して書き物の案件を請け負ったり、Uber Eatsのように自分の労働力を提供するものです。誰でもできるものは単価が安く、売れたらいくらというものもあるため、収入の見込みが立てにくい面はあります。ただ、会社員はもちろん子育てや介護に忙しい人にとっても、すきま時間でできるのが魅力。従来のスタイルに加え、新しい副業ができたことで、選択肢が増えているわけです。
会社が副業を認めるようになった背景には終身雇用制度が崩れ、定年までの給料や雇用を保証できなくなったことが挙げられます。これからは大企業であっても安泰ではなく、40歳を境に早期退職の勧告も増えていくと考えられます。年金の支給開始年齢もどんどん上がっていて、老後のお金も心配です。だからといっていきなり起業を目指しても、それまでの定型的な仕事以外のスキルがなく、なかなかうまくいかないようです。
老後のお金を貯めるにも、定年後に起業するにも、自力で稼ぐ術を身につけておきたいもの。副業を経験することで、自分で1万円稼ぐ大変さを経験し、それを乗り越える力をつけておくのはマストと言えます。早いうちから、副業で小さく稼ぐ力を身につけておきましょう。
副業をすると、本業がおろそかになったり、働く時間が増えて疲れてしまうのでは、と考えます。しかし、2017年に経済産業省が発表した『「多様で柔軟な働き方」の実態について』で労働時間を比較した統計資料によると、「本業+副業」の労働時間が週平均38.1時間だったのに対し、「非農林業従事者(自営業を含む)」の労働時間は週平均38.9時間でした。副業をしているからといって、それほど労働時間が長いわけではないことがわかります。
実際に副業している人に話を聞いても、「時間の使い方を工夫するようになった」「時間の使い方が上手になった」という声が多いそう。副業を始めることで、時間の使い方への意識が高くなり、本業にもいい影響がでるようです。
副業をすると、本業では得られなかった知識やスキルを得られる機会が増えます。それを期待して社員の副業を認める会社も増えているのです。情報も人脈もできてくるようになるでしょう。そうなってくると、本業へのビジネスチャンスも広がっていくことが考えられます。自然と起業家精神が身について、人生の幅も広がるかもしれません。
インターネットによるプラットフォームができたことによって、副業の種類もバラエティに富んだものになってきました。なかには趣味の知識や特技を活かせるものもあります。昔からやってみたかったことにトライするチャンスもあるでしょう。それを本業とは別にやっていると、自然と本業などのストレス解消になります。必ずしも好きなことではなくても、頭や体の使い方が違ってくると、気分転換になるでしょう。副業で余計にストレスが溜まる、というのは案外、ひと昔前の発想かもしれません。
インターネットで副業を探すと、残念ながら危険な案件もあります。こうした副業は、「簡単な作業で50万円稼げる」など、うまい話のフリをしてターゲットをおびき寄せます。実際に連絡してみると、「初期費用として10万円が必要」などと言われ、躊躇していると「10万円かかるけど月100万円は儲かる」などと畳み掛けてきます。もちろんそんな話などありません。なかには、性風俗業への勧誘というケースもあるようです。簡単な作業で高額な報酬を謳う業者には注意が必要です。そもそも副業をスタートさせるときは、まずは月1〜2万円稼ぐことを目標に始めてみましょう。
副業を始めるときは、会社の就業規則を確認してみましょう。まだまだ「副業禁止」の会社も少なくありません。「こういうケースならOK」という場合もあります。例えば、オーナーとして飲食店やアパート経営をするのは問題ないというケースです。本業に差し支えないと判断されるものは認められることが多いようです。基本的には、会社へ報告しておくのをおすすめしますが、その前に人事や総務の親しい人に「こんなことを始めてみようと思う」と探りを入れてみるのも1つの方法です。
副業で、ライター業務やイラスト制作などを引き受けると、つい熱中して睡眠時間を削ってしまったり、本業に影響するケースがあります。好きな作業を副業にするときは、時間配分をあらかじめ決めておくとよいでしょう。
また、コンサルティングやアドバイスを副業にすると、本業の会社の情報を流してしまいそうな場面もあります。こうした副業では、秘密保持などのコンプライアンス違反に注意しましょう。
仲介サイトに登録し、ライティング、イラスト制作、WEB制作などやりたい案件を探して、仕事を引き受け、納品もネットで完結します。また、写真のフォトストックサービスに自分の撮影した写真をアップし、売れたら販売代金が入ってくるしくみもあります。ただし、誰でもできるような作業は単価が低いものが多くなっています。
インターネットの仲介サイトに登録して、フェイストゥフェイスでスキルをシェアするもの。「男性化粧品市場を語れる」「パソコンソフトの使い方を教える」など自分のビジネススキルを提供するもの、「かわいい猫写真の撮り方」「ウクレレ指導」など趣味の腕を活かしてアドバイスするものがあります。
インターネット仲介サイトに登録して、リアルな場へ足を運んで労働力をシェアするもの。「Uber Eats」に代表される配送業であれば、アプリを立ち上げたときだけ仕事を請けることができます。そのほか、家事代行や料理代行もこれに当てはまります。
フリマサイトで不用品を売ったり、駐車場、マンションの部屋などをシェアするもの。不用品は捨てるにもお金がかかるため、売ってお金にするのも賢い副業です。また、駐車場やマンションの1室などのスペースを時間ごとに貸し出すサービスもあります。東京や大阪などの大都市でマンションの1室を訪日外国人に貸し出す民泊は有名ですが、地方であっても企業の研修などで使用されるケースがあります。
副業の所得が年間20万円を超えると、確定申告をしなければなりません。所得というのは収入から必要経費を差し引いた額のこと。収入が23万円あっても、経費が4万円かかっていれば、申告の必要はありません。ですから、副業を始めたら、交通費や資料代などの領収書をとっておき、計算しておかなければなりません。税務署は副業の収入をだいたい把握しているため、調べられることもあります。そのとき、経費の証拠を提出できるようにしましょう。昨今税務署の調査がきびしくなっているという話も耳にします。証拠は分類・保管しておきましょう。
副業評論家/早稲田大学卒業後、リクルート、ぴあを経て、1991年に有限会社ガーデンシティ・プランニングを設立。副業事情に詳しく『副業は「趣味と特技」で楽しく稼ぐ』など著書多数。収入の多角化を図ることが「本当の働き方改革」だと啓蒙している。
会社を辞めないで複業をはじめるための指南書。
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