目は朝から夜眠るまで働きづめ。スマホやパソコンで目を酷使する現代はなおさらです。さらに、目の健康は全身の健康にもつながるといわれています。そこで、今回は普段意識しない目にフォーカス。筋トレならぬ眼トレを医師の日比野佐和子先生に教えてもらいました。
私たちは五感をフルに使って情報を得ています。その80%以上を視覚に頼っているのをご存知でしょうか? 現代生活は目を長時間酷使しています。朝から夜寝るまでスマホを手放せないという人もいるでしょう。オフィスにいけば勤務時間のほとんどがパソコンに向かっている時間という例も少なくありません。スマホやパソコンを見る姿勢は、固定され、肩や背中に負担を与えます。また、スマホやパソコンを見続けることで目のまわりが緊張して血流が悪化。すると、自律神経のうち交感神経が優位になって自律神経バランスが崩れることに。全身にまで影響を与えてしまいます。
目は体の一部であるだけでなく、全身の健康に影響がありますが、それは実際の見た目にも表れます。眼科クリニックにある専用の検査機器を使えば、全身の血管のうち、網膜の血管は唯一外から見ることができるのです。眼底を検査して網膜の血管を見れば、血管が細くなっていたり、詰まっていたり、出血したりしている様子が確認できます。さらには、糖尿病や高血圧もわかるというから驚き。つまり、眼科医が目を見れば、体の健康状態を見極めることができるのです。
全身にも影響がある目の疲れやトラブルは避けたいもの。では、どんな対処方法があるのでしょうか? 全身の筋肉は筋トレすることで鍛えられるように、目も“眼トレ”することで、目の周りの筋肉を鍛え、老眼を遅らせたり、動体視力を高めたりすることができます。血流や代謝もよくなるので、クマやたるみのある疲れ顔を解消することもできます。また、目にいい食生活や生活習慣を送ることも大切です。
水に濡らしたタオルを固く絞り、電子レンジで1分加熱し、少し冷まして目の上にのせてみましょう。目と目の周りの毛細血管の血流が促進され、老廃物の排出が促されます。ただ、目が充血しているときは冷やしてください。
肌の紫外線対策には日焼け止め剤を塗ったり、日傘を差したりしますが、実は目から入った紫外線が肌の日焼けにつながることもあります。そのため、サングラスで紫外線をカットするのがおすすめ。紫外線は、目の老化や白内障のリスク、角膜炎の原因にもなります。目のトラブル予防にもサングラスは有効です。
目の周りを縁取るような濃いアイメイクは要注意。まつげの周りには、マイボーム腺という油脂成分の分泌腺があります。ここが詰まると涙が乾きやすくなって、ドライアイの原因に。クレンジング剤の界面活性剤は皮膚の負担にもなります。アイメイクは、ナチュラルでさっと落としやすいことが目の健康に大切です。
ブルーライトを長時間見つめると、目の奥の網膜まで達し、機能低下につながるといわれています。そのため、ブルーライトを発するパソコンやスマホから目を離す時間をつくったり、画面から距離を置いたりする習慣をつけたいもの。1日に1回は目を離す時間を意識してもうけてみましょう。パソコンを見るときは、40cm以上離し、軽く見下ろすような位置で。モニターは室内の明るさに近づけ、ブルーライトカットメガネをつけるのも1つの方法です。スマホは、30〜40cmの距離をとってまばたきが少なくならないように気をつけましょう。
暗いところで本を読むと、目に負担がかかり、疲れやすくなります。ですから、昼間明るいほうが、本を読んだりパソコン作業をしたりする作業効率が上がります。とはいえ、夜になったからといって仕事がやめられるわけではありません。そこで、照明を明るく保つことが大切です。一般に年齢を重ねると20歳を基準に、50歳で2.4倍、60歳で3.2倍の照度が必要とされています。仕事をするときはデスクライトも併用するのがおすすめ。また、乾燥は目の大敵。室内の湿度は45〜55%が理想です。夜は深い睡眠をとるため、ブルーライトを発するスマホを寝室に持ち込まないようにして入眠し、朝は太陽光を浴びて体内時計をリセットしましょう。
眼科との上手な付き合いも目にとっては大切です。疲れ目のケアに目薬を使う場合がありますが、できれば眼科で処方したものを使ってください。市販品を購入する場合は、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンといった防腐剤が多量に添加されたものは避けましょう。塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリンといった血管収縮剤が入っている目薬を避けるのもポイント。基本的に成分表示が少なく、涙に近い成分の製品を選び、使用量を守りましょう。また健康診断の眼底検査のほか眼科ドックも受けるのがおすすめです。
全身の健康を保つのには食生活に注意するのが大切ですが、目にいい食品もぜひ取り入れてください。目の老化防止に最強なのが、ビタミンACE。ビタミンAはものを見るときの明るさを守る栄養素。ビタミンCは水晶体の透明度を保ち、ビタミンEは毛細血管の血流をよくしてくれます。疲れ目にいいのがビタミンB群のうち、B1、B2、B6、B12。抗酸化作用のあるアントシアニン、アスタキサンチンも網膜が光を受けとる機能を再生し、ピント調整機能を改善。明るさの調整がうまくいきます。そのほか、タウリンやDHA、EPA、レスベラトロール、ルチン、ケルセチンも目の機能を高めてくれます。これらの栄養素をしっかり取って、バランスのよい食事を心がけましょう。
医師/医学博士。医療法人康梓会Y’sサイエンスクリニック広尾統括院長。大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学特任准教授。同志社大学アンチエイジングリサーチセンターなどを経て現職。真摯なカウンセリングで多くのスポーツ選手や著名人に信頼されている。『まいにち、眼トレ』など著書多数。テレビや雑誌でも活躍中。
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