このページでは、現在の天気予報にまつわるシステムやサービスに関するトリビアを集めてみました。コンピュータによるデータ解析で的中率がアップした天気予報ですが、過去には6時間後の天気をひと月かけて人力で計算する試みもあったとか……?
アメダス、気象衛星、気象レーダー……天気予報で耳にするこれらのシステムは1950年代後半から70年代にかけて整備が進められました。なかでも天気予報の技術的基盤として、予報のあり方を大きく変えるきっかけとなったのが、1959年、気象庁がアメリカから輸入した大型電子計算機「IBM704」です。それまでの天気予報は予報官が天気図と経験に基づいて予報していましたが、当時世界最高水準の電子計算機の導入で、膨大な観測データをコンピュータで処理し、客観的な数値に基づいて行う数値予報の時代が訪れたのです。
現代の機器と比べてしまうと処理速度は遅く、予想の精度も十分とはいえなかったものの、1980年代に入ると通信技術やコンピュータが進化し、的中率も上がります。お天気コーナーでは当たり前となっている降水確率の予報が始まったのは1982年7月から(東京地方のみ1980年6月から)。いまでは80%以上の確率で、降雨のあり・なしが的中しているそうです。
降水量や気温、日照時間などのデータを収集するため、全国約1,300カ所に設置されているアメダス。1974年11月1日に運用が始まったこのシステムのネーミングにはどこか親しみを感じてしまいますが、みなさんは名前の由来をご存じでしょうか? アメダスの正式名称は“Automated Meteorological Data Acquisition System”(地域気象観測システム)。運用開始時、このシステムの名称についてさまざまな候補が挙がったものの、当時の気象庁高層課課長が気象学を意味する”Meteorological”だけ最初の2文字(me)を取り、”AMeDAS”と呼ぶことが決まったとか。テレビで名前が読み上げられたときは、京都弁の「雨だす(雨です)」と聞き間違えてか、「『雨です』と丁寧に言いなさい」、「雨も降らないのになぜ『雨だす』と言うのか」といった問い合わせが相次いだといいます。
数値予報によって進化した天気予報ですが、実は1900年代初頭に、そのアイデアを温めていた人物がいました。イギリスの数理物理学者、気象学者のL.F.リチャードソンは1922年、当時実用化は無理といわれていた、方程式を解くことで大気の状態を予報する実験に取り組み、6時間先の天気予報を1カ月以上かけて手計算で行ったのだそう……。
数値の計算が正確ではなく、結果はおかしなものになったそうですが、多くの人が一堂に集って計算を行えば、実際の時間の進行と同程度の速さで天気予報の計算ができるとリチャードソンは提案。コンピュータもない時代に実現こそしなかったものの、先見性のある試みが評価され、気象の世界では「リチャードソンの夢」として知られているそうです。
日本の上空約36,000kmに浮かぶ静止気象衛星のひまわり。1977年の初代ひまわりの打ち上げから、現在軌道上にあるひまわり8号・9号まで、この気象衛星は地球上では観測の難しいデータを発信してくれる天気予報になくてはならない存在です。しかし、ひと昔前、「気象衛星ひまわりからの雲の様子です」というおなじみのフレーズが聞かれなかった時期があることを覚えていますか?
1999年、当時運用されていたひまわり5号の引き継ぎだった気象衛星が打ち上げ失敗に終わり、その後、5号が燃料切れとなったことで、ひまわりからの観測データが存在しない期間があったのです。この穴を埋めたのは、アメリカ上空で使われなくなっていた気象衛星のゴーズ9号(パシフィックゴーズ)。同機は2005年2月に種子島宇宙センターからひまわり6号が打ち上げられ、同年7月にミッションを引き継ぐまで、約2年のあいだ観測データの運用を担っていました。
現在は「運輸多目的衛星」として、気象観測の機能と航空管制の機能を持つひまわり8号と9号の2機体制となり、観測データは日本のみならず、世界各国に提供されています。万が一の事態が発生しても安定した観測が続けられるように、ひまわり9号が8号のバックアップの役割を担い、2022年には2機の役割を交代して運用される予定となっています。
1977年、アメリカのケネディ宇宙センターから打ち上げられた初代ひまわりが最初に送ってきた試験画像には“お化け”が映っていたというエピソードがあるんです。といっても、このお化けの正体は地球……。観測データを処理するソフトの設定に不具合があったため、丸い地球がぼんやりと白いお化けのように映し出されてしまったそう。ちなみに現在の8号・9号は最先端の観測技術、可視赤外放射計を搭載し、静止気象衛星として世界初のカラー画像を観測できるようになっています。
今年(2019年)で導入から25年を迎えた気象予報士制度。気象情報が不適切に流されて社会に混乱を引き起こさないように、気象庁から提供されるデータを適切に利用できる技術者の確保を目的に創設されたこの制度は、最初の試験実施から半世紀経たいまも合格率が4.7%(2019年1月の数値/気象業務支援センター)という難関試験です。
年齢制限がないことから、過去には小学校6年生(11歳)の女の子が合格して話題になりましたが、気象庁が2013年度に実施した「気象予報士現況調査結果」によると、気象予報士の男女比は男性88%、女性12%で、世代は40代と50代が全体の約5割を占めています。
気象予報士というと“お天気キャスター”のイメージが強いですが、同調査によると民間の予報業務許可事業者(気象情報会社)で働く人は7.6%、テレビ局や新聞社といった報道機関で働く人は3.3%と全体の1割程度。近年はインターネットによって天気の情報に簡単にアクセスできるようになっていることから、天気の専門知識や技術を生かして災害時に自治体に助言して防災行動をサポートする役割など、新たな活躍の場が期待されています。
最後は身近な話題を。洗濯指数やビール指数など、身の回りのものから天気の行方を知ることができる「○○指数」は、民間の気象情報会社の参入によって生まれたもの。そのルーツは、現在、世界最大の気象情報会社となったウェザーニューズだといわれています。
いまでこそ気象庁の情報は万人向け、気象情報会社の情報は特定地域の予報が知りたい人や、専門的な情報を求める各業界向けと棲み分けがされていますが、同社がテレビの天気番組に参入した頃は、お天気キャスターは気象庁の予報通りのコメントをしなければならないというルールがあったそう。しかし、自社の予報と気象庁発表の予報が異なることもあり、何とか自社の情報を伝えることができないかと編み出されたのが「傘指数」や「洗濯指数」といった数値だったのです。現在では暑さ指数や鍋物指数をはじめ、洗車指数や掛け布団指数など、季節やさまざまな目的に合わせた指数が登場しています。
スーパーコンピュータの登場や民間の気象情報会社によって、予報の精度も使い勝手も向上してきた天気予報。近年はあらゆる分野で活用が進むAI(人工知能)を取り入れ、過去の膨大なデータやリアルタイムに入ってくる情報を人工知能の機械学習機能を用いて予測する時代へと変わってきているそう。果たして予報的中率100%の時代は来るのでしょうか……?
参考文献(順不同)
古川武彦『人と技術で語る天気予報史―数値予報を開いた“金色の鍵”』(東京大学出版会)/同『気象庁物語-天気予報から地震・津波・火山まで』(中央公論新社)/股野宏志『天気予報いまむかし』(成山堂書店)/南利幸『ことわざから読み解く天気予報』(日本放送出版協会)/宮沢清『天気図と気象の本―天気図を見るとき読むとき書くとき』(国際地学協会)/気象庁(ホームページ)/ウェザーニューズ(同)/NHK(同)/朝日新聞(同)/毎日新聞(同)/産経新聞(同)/NIKKEI STYLE(同) 等
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