ワールドカップのトリビア

「ワールドカップ」といえば、誰もがサッカーの世界選手権を思い浮かべるほど知名度の高い大会です。1930年に始まった世界最大のスポーツイベント、FIFAワールドカップのトリビアをご紹介します。

初開催は紆余曲折?

サッカーの生みの親がイギリスですから、ワールドカップもイギリス主導で始まった……と思われるかもしれませんが、実は、ワールドカップの開催を熱望したのはオランダ人だったんです。
20世紀初頭、大国だったイギリスは世界中にサッカーを広め、オランダでも広く親しまれていました。そんな中、1900年のパリオリンピックでサッカーが公開競技になったことに、オランダサッカー連盟のヒルシュマン会長が触発され、当時はアマチュア選手に限られていたオリンピックとは異なる、プロ選手も参加できる国際大会の開催を思いつきます。イングランドのFA(サッカー協会)に送った提案書は無視されてしまったものの、ヒルシュマン会長はフランスのスポーツ協会に相談。そこで「世界選手権のためにはまず国際組織を結成しよう」と方針が決まり、オランダ、フランス、ベルギー、スウェーデン、デンマーク、スイス、スペインの7カ国でFIFA(国際サッカー連盟)の設立総会が1904年5月に開かれました。1906年に予定されていた第1回大会は準備不足で頓挫。その後、1914年に開かれた総会では、ヨーロッパ以外のアメリカ、アルゼンチン、チリも加わって大会が計画されますが、同年に勃発した第一次世界大戦の影響により、念願の初開催は1930年と、実に26年もの歳月がかかったのです。

イギリスは4チーム出場できるナゾ

FIFAには2018年現在、211の協会が加盟しています。これは、国際連合の加盟国(193)や、IOC(国際オリンピック委員会)に承認されている206の国・地域よりも多い数です。というのも、FIFAに加盟しているのは上記の通り、国・地域ではなく「協会」。そのため、近代サッカーの母国・イギリスでは、世界最古のサッカー協会であるFAをはじめ、スコットランドサッカー協会、ウェールズサッカー協会、北アイルランドサッカー協会の4協会が加盟しており、実力次第ですべての協会の代表がワールドカップに参加することができるんです。
この背景には、1904年に設立されたFIFAよりも各協会の歴史が古く、イギリス内のチームとほかの国との実力差も段違いだったため、4協会の協力なくして国際大会の実現は難しかったからという事情があったそう。サッカーのルールを取り仕切るIFAB(国際サッカー評議会)は、今でも上記4協会とFIFAの代表によって総会が行われていて、サッカー界におけるイギリスの影響力の強さを物語っています。ちなみに、イギリス以外でも中国の特別行政区である香港やマカオ、アメリカの準州であるグアムなども単独の協会としてFIFAに加盟しています。

カナリアカラーの裏話

ワールドカップの全大会に出場している唯一の国で、優勝回数も最多の5回を数えるのがブラジルです。前ページでも紹介した通り、ブラジル代表といえばカナリアカラーのシャツに青のパンツというブラジル国旗の配色を取り入れたユニフォームのイメージが強いですが、このユニフォームは、とある事件から生まれたものなんです。
事件はブラジル初の自国開催となった1950年のブラジル大会、決勝リーグのブラジルvsウルグアイ戦で起きました。ブラジルが引き分け以上ならば優勝という事実上の決勝戦でしたが、ブラジルはウルグアイに逆転負けを喫し、20万人近い観客が集まっていたマラカナン・スタジアムは絶望の淵に……。67人が気を失い、2人が自殺、2人がショック死するというブラジルサッカー史上最大の事件となります。この「マラカナンの悲劇」により、ブラジル代表は純白だったユニフォームを一新。現在の配色は、呪術師の意見も取り入れた上で決められたのだそう。

日本の悲劇は以前にも?

1993年、アメリカ大会のアジア最終予選・最終戦。日本代表はイラク相手に2-1でリードしたままロスタイムに突入し、勝利間近というところでゴールを許して本戦出場を逃しました。「ドーハの悲劇」と呼ばれるこの試合の生中継は48.1%という番組平均視聴率(瞬間最高視聴率は58.4%)を記録し、試合を中継していたテレビ東京開局以来の視聴率だったといいます。
実は、戦前にも日本サッカー界には悲劇が起こっていました。それは、1938年のフランス大会をめぐるもの。1936年のベルリンオリンピックで、優勝候補のスウェーデンを破り、「ベルリンの奇跡」と話題になった日本は、フランス大会での活躍が期待されていましたが、1937年7月7日、中国・北京郊外の盧溝橋付近で日本軍と中国軍が衝突した盧溝橋事件に端を発する日中戦争の影響で、アジア予選を棄権することになってしまったのです……。1998年の初出場以来、6大会連続でワールドカップ出場を決めている日本。気が早い話ではあるものの、この先も途切れることなく大舞台での活躍を期待したいですね。

ワールドカップの伝説といえば……

ワールドカップではいくつもの伝説が生まれていますが、特に有名なのが1986年のメキシコ大会におけるアルゼンチン代表、ディエゴ・マラドーナの活躍ではないでしょうか。準々決勝のアルゼンチンvsイングランド戦で、「神の手」によるゴールや「悪魔の左足」による5人抜きなどを披露したマラドーナは、アルゼンチンを2度目の優勝に導き、同大会は「マラドーナの祭典」とまで言われたほど。その活躍にあやかって、マラドーナを“神”として崇め、サッカーボールを「手で叩く」という洗礼を行うマラドーナ教まで存在するとか……。

誤報も生まれた史上最大の番狂わせ

1950年のブラジル大会では「史上最大の番狂わせ」が起こりました。普段は郵便配達や教員などサッカーと関係のない仕事をしているようなセミプロやアマチュア選手で構成されたアメリカ代表が、全員プロ選手でスター揃いのイングランド代表に1-0で勝利したというもの。ロンドンの新聞が「10-0でイングランドが勝利した」と誤報してしまうほど、誰もが信じがたい試合結果だったのです。

“軟禁”もされていた?驚きのフーリガン対策

2002年に日本と韓国の共催で行われた大会の際にも不安視されていたのがフーリガンの問題です。事実、過去のワールドカップでもさまざまなフーリガン対策が取られていて、例えば1990年のイタリア大会ではある国のサポーターをテント村に“軟禁”し、アルコール類の販売を試合当日の昼から翌朝まで禁止する措置などが取られていたそう。試合の観戦ではなく、乱闘目的に会場に赴くようなフーリガン対策のため、2018年のロシア大会ではある新兵器が導入されるといいます。それが、モスクワ工科大学が開発した「アランティム」。英語を話せる人型ロボットで、人の表情を判断し、喧嘩の仲裁に入ったり警察への通報も行ってくれるそう。スタジアム周辺で警備が行われるとのことですが、出番がないのが一番ですよね……。

ワールドカップのジンクスとは

大会回数は21回を数え、80年以上の歴史があるだけに、ワールドカップにはさまざまなジンクスがあります。例えば、開催される地域がヨーロッパ以外の大会はすべて南米勢が優勝するというもの。1930年の初開催以来、破られることがなかったものの、2010年に初めてアフリカ大陸で開催された南アフリカ大会でスペインが優勝し、80年続いたジンクスが破られることになりました。

開催国は決勝トーナメントに必ず出場できる?

南アフリカ大会は上記以外のジンクスが破られたことでも波乱を呼んだ大会。例えば、開催国は必ず決勝トーナメントに進出するというジンクスは、南アフリカ代表のグループリーグ敗退で破られてしまいました。また、グループリーグ初戦で敗退したチームは優勝できないというジンクスも、スイスに初戦で敗れたスペインが優勝したため破られることに。とはいえ、開催国は初戦で負けないというジンクスは、2014年のブラジル大会まで続いています。

優勝国は自国監督!

優勝国の代表監督は必ずその国の出身者が務めているというのも、ワールドカップのジンクスのひとつ。2018年のロシア大会では、日本をはじめ、ロシア、ウルグアイ、ポルトガル、スペイン、フランス、アルゼンチン、アイスランド、クロアチア、ブラジル、コスタリカ、ドイツ、スウェーデン、韓国、チュニジア、イングランド、ポーランド、セネガルと、32カ国中18カ国の監督が自国出身。果たしてこの中から優勝チームが出てくるのか、注目したいですね。


オリンピックを凌ぐ世界最大のスポーツイベントとなったワールドカップは、その優勝賞金も驚く規模。ロシア大会では優勝チームに3800万ドル(約43億円)、グループリーグで敗退したチームにも最低800万ドル(約9億円)の賞金が与えられるといいます! 2人の選手が地球を支える黄金に輝くトロフィーを手にするのは一体どのチームなのか。この夏はテレビ中継から目が離せませんね。

参考文献(順不同)
千田善『ワールドカップの世界史』(みすず書房)/大住良之『ワールドカップの世界地図』(PHP新書)/『ナンバープラス スポーツマンガ最強論』(文藝春秋)/ジャパン・ダイヤモンド・フットボール・アソシエーション編『「ダイヤモンドサッカー」の時代』(エクスナレッジ)/FIFA(ホームページ)/JFA(同)/ニューズウィーク日本版(同) 等

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