おとなの補習時間[あなたをさらに健康にする入浴法]

忙しい毎日、温かい湯船につかる時間がもったいなくて、シャワーだけで済ませてしまっている人は少なくないのではないでしょうか。ただし、冷えから起きる血行不良や肩こりに悩まされることが多くなるこの時期、あなたを健康にしてくれるのは、やっぱりお風呂なんです! お風呂が体にもたらしてくれるさまざまな効果、そして体のお悩みに合わせた効果的な入浴法など、お風呂やサウナを楽しむときに覚えておきたいとっておきの知恵を、温泉療法専門医の早坂信哉先生に教えていただきました。

そもそもお風呂がどうして体に良い?

「温かいお湯につかると体全体が温まって血行が良くなる」とは、みなさんもご存じのお風呂の良さ。しかし、お風呂が体にもたらしてくれる効果はそれだけではありません。たとえば、お風呂に入ると血の巡りがよくなり、老廃物等が体外に排出されて新陳代謝が活発になります。また、筋肉がゆるんで関節の緊張がやわらぐことで、肩こりや腰痛、筋肉痛も緩和されるんです。さらに、体に水圧がかかるため、重力で足にたまった血液や体液が心臓に押し戻され、足のむくみ解消にもつながります。

まだまだあるお風呂の効果

ちなみに、サウナや岩盤浴でも体を温める効果がありますから、新陳代謝が活発になり、腰痛や筋肉痛の緩和にもつながります。最近の調査では、サウナに定期的に通っている男性は頻繁にサウナへ行かない男性に比べて長生きし、突然の心臓発作で死亡する確率も低いという結果もあるのです。

お悩み別・お風呂の入浴ポイント

  • 肩こり

    [温度]40℃ [時間]10分
    [入浴ポイント]肩までつかったあと、肩や首をまわすなどをして筋肉をほぐします。

  • 腰痛

    [温度]40℃ [時間]15分
    [入浴ポイント]慢性の腰痛であれば温めることで改善します。リラックスして入浴しましょう。br> *急性腰痛の場合は炎症がおさまるまで、1週間くらいお風呂をお休みしてください。

  • 胃痛①

    胃潰瘍や胸やけ

    [温度]40~42℃
    [時間]5分×2~3回
    [入浴ポイント]熱いお湯に5分ほど入って、休息してまた湯船につかる。これを2~3回繰り返します。交感神経を高めることで内臓の働きを抑え、胃液を少なくして症状をやわらげます。

  • 胃痛②

    消化不良や胃もたれ

    [温度]38~40℃ [時間]15分
    [入浴ポイント]38~40℃のぬるめの湯に15分ほど入ります。副交感神経に働きかけ、内臓の働きを活発にします。

  • 頭痛①

    筋緊張性頭痛

    [温度]38~40℃ [時間]15分
    [入浴ポイント]38~40℃のぬるめの湯に15分ほど入ります。筋肉をやわらげ、血流を良くして、頭痛を改善します。

  • 頭痛②

    片頭痛

    [入浴ポイント]血管が広がることで神経が圧迫されて痛みがでるため、お風呂は厳禁。ただし痛みがないときはぬるめの湯にゆっくり入ってストレスを解消しましょう。

  • 冷え性

    [温度]40℃ [時間]15分
    [入浴ポイント]寝る1~2時間前に40℃の湯に15分ほど入ってじっくり体を温めましょう。

  • アトピー性皮膚炎

    [温度]38~40℃ [時間]15分
    [入浴ポイント]お風呂に重曹を大さじ1杯入れて入ります。洗うときは泡でやさしくなでるように。かゆくても決してゴシゴシこすってはいけません。

  • 不眠症

    [温度]40℃ [時間]20分
    [入浴ポイント]毎日、寝る1~2時間前に40℃で20分お風呂に入ります。いったん体を温めることで、寝る時間に体温が下がってすんなり眠ることができます。

  • 便秘・下痢

    [温度]38~40℃ [時間]15~20分
    [入浴ポイント]38~40℃の湯に15~20分ほど入りながら、おへそのまわりに「の」の字を描くようにマッサージ。
    ※ウイルス性など急性下痢の場合は、無理な入浴は避けましょう。
    ※ストレスからくる過敏性腸症候群の人は、40℃以下のお風呂にゆっくり入ります。

  • むくみ

    [温度]40℃ [時間]20~30分
    [入浴ポイント]40℃の湯をたっぷり張り、20~30分入浴。足に水圧がかかり、足にたまった血液、体液が心臓に戻り始めます。

  • 花粉症・鼻づまり

    [温度]38~40℃ [時間]15分
    [入浴ポイント]お風呂で湯気を吸うと、花粉やアレルギー物質が洗い流されます。湯につけて絞ったタオルで鼻の周囲を温め、蒸気を鼻から吸い込みましょう。

それでも二日酔いになってしまったら……

NG お湯をたっぷり張った湯船、いきなりザブンと入るのはNG!

お風呂は、シャワーやかけ湯をしてから入ること。その前に、しっかりと水分補給をすることも大切です。水でもお茶でも構いませんが、おすすめはイオン飲料。ビールはNGです!

理想的なお風呂の入り方

①かけ湯…手桶で10杯ほど手や足の先から体の中心部、足へとかけます。シャワーでも可。
②半身浴→全身浴湯…みぞおちのあたりまで30秒程度つかります。長くなくてOK。その後、汗が体ににじむくらいまで全身つかります。長く入ってもダイエット効果はありません。
③洗い場で髪や体を洗う湯…お風呂自体に清浄作用があるので、泡立てた石けんで軽く肌をなでるくらいでOK。最後にもう一度全身浴でリラックス。
④水分を摂る湯…お風呂から出たら湯冷めしないように十分水分をふき取り、400~500ミリリットルくらい水分を摂りましょう。温かい格好で30分以上休息して温熱効果を持続させることもポイントです。

半身浴のほうが全身浴より美容と健康に良いわけではない!

「長く半身浴をすると痩せられる!」「半身浴をするときれいになれる!」とされ、特に女性の間で半身浴が流行しました。しかし、実は半身浴よりも全身浴のほうが消費カロリーは多くなります。肩こりや頭痛、むくみ体質の症状の改善についても、全身浴に軍配が。これは、全身浴のほうが体を温める力も血行を良くする力も強いためです。ただし、心臓や肺に疾患がある人や長時間入浴したい人にとっては、心臓に負担の少ない半身浴がおすすめです。

サウナに入った後、冷水につかるのはNG!

よく80~90℃くらいの高温のサウナに入り、いきなり冷水に入る人がいますが、よほど慣れている人でない限り、不整脈や狭心症を起こす危険もあります。特に中高年の男性は、高い温度のお湯やサウナを好む傾向にあります。これは、強い温度刺激による一時的な快感がやみつきになっているため。高温サウナ→冷水は心臓の負担が大きいと心得、避けるようにしましょう。

サウナに入るとき濡れたままではダメ!

水分が体についているとその分温度が下がるというのは間違い。乾式サウナの場合、体が濡れたまま入ってしまうと、湿度が高くなってしまい、体への負担が増大。息苦しくなって、逆効果です。乾式サウナは体を拭いて入ってこそ、本当の効果が得られます。ただしミストサウナやスチームサウナなどの湿式サウナであれば、濡れたままでもOKです。

風邪をひいたらお風呂NGは間違い

37℃前後の微熱ならば、入浴しても問題ありません。湯上がり時の湯ざめには気をつけるようにしましょう。ただし、高熱のときや疲れすぎているとき、体力が落ちているときは病気を悪化させる危険があるので、安静にしていましょう。

季節のお風呂の楽しみ方

今年は12月22日が冬至です。昔から冬至の日にゆず湯に入ると、風邪をひかないとされています。これは、柑橘類の皮に含まれている油が肌を守り、湯ざめを防ぐという古来の生活の知恵。冬至以外の日でも、季節ごとに次のような植物をお湯に入れると、それぞれの時期特有の悩みを解消する効果があります。ぜひ、試してみてください。

監修:早坂 信哉 先生

東京都市大学教授(医学博士)、温泉療法専門医/1968年、宮城県生まれ。自治医科大学医学部卒業後、地域医療に従事。浜松医科大学、大東文化大学などを経て、現職。入浴を医学的に研究している。著書に『たった1℃が体を変えるほんとうに健康になる入浴法』などがある。
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