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家電量販店の世界
vol.99

おなじみの〇〇も誕生!?
家電量販店のトリビア

一度聞いたらなかなか耳から離れない、家電量販店のテーマソング。そのルーツを辿ってみると、ビックカメラのテーマソングは「Shall We Gather at the River」、ヨドバシカメラのテーマソングは「The Battle Hymn of the Republic」と、アメリカの賛美歌が由来という曲もちらほらあるんです。このページでは、そんな家電量販店にまつわるトリビアをご紹介します。

あえてノウハウを広める!

 家電量販店で買い物をするとき、忘れたくないのがポイントカード。購入金額に応じて加算されるポイントは、大きな買い物の際に使ったり、現金決済が面倒なときにサッと支払えたりする便利なサービスですよね。集めた引換証を賞品と交換できるお菓子があるように、スタンプやクーポン券を金銭やモノに還元する仕組みそのものは古くから存在していました。それを、お客に配付する専用のカードにバーコードを印字して管理し、「ポイントカード」というネーミングを付けたのがヨドバシカメラだといわれているんです。
 ポイントカード(現ゴールドポイントカード)が導入されたのは1989(平成元)年4月。まだビジネスモデル特許もない時代、同社はこのアイデアで特許を取ることができなかったものの、“それならば”と、あえてさまざまな業界や企業にノウハウを共有したといいます。いまではあらゆる小売業でおなじみとなったポイントカードも、その普及のきっかけは意外なところにあったんですね。

ただ“大きい”だけじゃない?

 家電量販店の社名は、創業者にちなんだ名前が多いもの。たとえば、首都圏を中心に展開するノジマは、電化製品の販売を目的に野島絹代が神奈川県相模原市で開業した野島電気工業社がそのルーツですし、ヤマダ電機は創業者・山田昇が1973(昭和48)年に群馬県前橋市で開業したヤマダ電化サービスがルーツ、主に関西で郊外型店舗を展開する上新電機は、創業者・淨弘信三郎の頭文字、「淨(じょう)」と「信(しん)」から取られています。
 何の変哲もないネーミングに聞こえるものの、ユニークな由来を持っているのがビックカメラです。「ビック」と聞くと英語の「Big(ビッグ)」を連想してしまいますが、お店の看板に書かれているのは「Bic Camera」とスペルが異なります。同社の株主・投資家情報サイトによると、「Bic」とはバリ島のスラングで、「大きい(Big)」という意味のほか、中身を伴った大きさという意味もあり、「ただの大きな石ではなく、小さくても光り輝くダイヤモンドのような企業になりたい」という希望をこめて名付けられたのだとか。

ヨドバシってどこ?

 創業場所の地名を冠しているのがヨドバシカメラです。同社の本拠地は東京の「新宿」で「ヨドバシ」ではありませんが、これは、現在の新宿駅西口一帯がかつて「淀橋区」だったことに由来するもの。1947(昭和22)年に四谷区と牛込区との合併によって淀橋区は廃止されましたが、そこでカメラ販売を始めた同社が「淀橋のカメラ屋」と呼ばれていたことが社名となったそう。地名こそ現存していないものの、神田川にかかる青梅街道上の橋は現在も淀橋(よどはし)として存在しています。

進む、次世代の店舗づくり

 最近の店舗では、商品棚の値札をデジタル化した電子棚札(ESL/Electronic Shelf Labels)がよく見られるようになりました。小型の電子ペーパー端末に価格を表示する電子棚札は、値段の変更の手間を省き、柔軟な価格対応を実現できるもの。ネット通販が需要や供給状況に合わせて価格を随時変動させるように、リアルな店舗でも逐一価格を変更できるダイナミックプライシングに対応することで、従業員がより接客に時間を割けるようになり、お客にとってもスマホをかざせばオンラインショップのユーザーレビューを閲覧できる便利な機能が搭載されるなど、ネット通販が台頭するなかで新たな買い物体験が提供できると期待されています。

あの価格表示のルーツも?

 価格表示といえば、定価やメーカー希望小売価格を表示しない「オープン価格」の本格的な普及にも、家電量販店が関わっていたようです。小売店よりメーカーが強かった時代は、メーカーが決めた定価での販売が一般的でしたが、1970年代に入るとオープン価格が家電に導入され始め、店舗間での価格競争が激しくなった1980年代には「メーカー希望小売価格の40%引き!」といった大幅な割引広告によって実売価格との乖離(かいり)も大きくなります。そのため、希望小売価格が有名無実化したことから、オープン価格の導入が加速したのだそう。

おうち時間が増え、空気清浄機や調理家電、美容家電の売れ行きが好調といわれる家電量販店。新しい家電や買い換えの検討のために、家電量販店を利用する機会もこれまで以上に増えていきそうですね。

参考文献(順不同)
長谷川博「家電流通の進化:第1期・過渡期・第2期」(千葉商大論叢)/風来堂編『群馬・栃木・茨城 くらべてみたら? 「北関東三県」の不思議と謎』(実業之日本社)/『懐かしパーフェクトガイドVol.8 平成ゲームメモリアル・ゲームハード戦争』(ダイアプレス)/電波新聞(ホームページ)/BCN+R(同)/ニッセイ基礎研究所(同)/国税庁(同) 等

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