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家電量販店の世界
vol.99

驚きの価格競争、流行語を生んだ行列も
家電量販店の世界

店内に所狭しと並べられたさまざまなメーカー・ブランドの製品を吟味する楽しさや、お買い得な価格が魅力の家電量販店。近年は“非家電製品”にも進出するお店の変遷とは?

町の電気屋さんから

 ラジオ、テレビ、冷蔵庫、洗濯機……人々の生活のなかに家電製品が広まった戦後、その販売を主に担っていたのは、メーカーごとに系列が分かれた町の電気屋さん(地域電気店)でした。今や家電量販店の業界最大手・ヤマダ電機や、ケーズデンキ、コジマなども町の電気屋としてスタートしています。
 家電量販店の台頭は、特定メーカーの取り扱いに限られていたこうした系列店が多店舗展開する際、ニーズの多様化に対応するために移行したり、卸売業やスーパーからの転身、東京・秋葉原や大阪・日本橋の電気街でもラジオ商から転身したりするなかで進んでいきます。1970年代に入るとひと通りの家電が各家庭に普及したことで、さまざまな製品の比較購入や、価格がより重視されるようになったため、メーカーを軸にしていた流通構造も変化し、家電量販店の成長が加速したといいます。

北関東の価格競争

 「カラーテレビ1円」「パソコン1980円」など、驚きの価格競争が繰り広げられたのが1990年代です。特に、北関東を本拠地とするヤマダ電機(群馬県高崎市)、コジマ(栃木県宇都宮市)、カトーデンキ(現ケーズデンキ/茨城県水戸市)の3社によるシェア争いは、社名の頭文字をとって“YKK戦争”と呼ばれたほどでした。
 当時は業界団体によって、お互いの商圏には出店しない、過激な低価格競争はしないといった暗黙の了解があったようですが、1994(平成6)年の規制緩和で1000平方メートル未満の大型店が出店しやすくなり、他店のすぐ近くに対抗する大型店の出店や、前述の値引き合戦が過熱。非業界加盟店の存在感も増していきます。2000(平成12)年の大規模小売店舗立地法施行で店舗はさらに大型化し、家電量販店=大きなフロアに大量の商品を仕入れて安値で販売するというイメージが消費者にも浸透しました。

時代を反映する行列の数々

 家電量販店には、話題の商品を求めて長い行列ができるのもおなじみですよね。世間を騒がせたあの行列、みなさんの記憶にもあるのでは?

行列は数キロに!?

 家電量販店の行列が世間の注目を大きく集めたのは、1988(昭和63)年2月、ファミコンソフト「ドラゴンクエストⅢ」の発売日でしょう。当日は平日の水曜日だったにもかかわらず、全国各地でファンが夜を徹して行列をつくり、池袋の家電量販店では1万人規模、2キロメートルもの長さになりました。大混乱があらかじめ予想されたことから、「子どもが学校を休んで買いに行かないように!」という通達も各地で出されていたとか。

パッケージ時代ならでは

 人気ゲーム機やゲームソフトの発売日の行列がおなじみになった1990年代。特に1995(平成7)年11月の「Windows95」発売日には、秋葉原をはじめとする全国の家電量販店に人々が集結しました。全国的なパソコンブーム、そして一般家庭にインターネットが普及するきっかけとなったOSを求めてユーザーが大行列を成し、発売日当日の午前0時ちょうどに販売を始める記念イベントも盛大に行われました。

ネット流行語も誕生?

 最近ではNintendo SwitchやPlayStation5を求めて人々が殺到する様子が報道されましたが、2006(平成18)年11月の「PlayStation3」の発売日が大混乱をきたしたのも記憶に新しいところ。発売当初の販売台数が少ないなかでファンが大挙し、有楽町の家電量販店では怒号や悲鳴が飛び交う大混乱……。収拾がつかなくなった現場から「モノ売るってレベルじゃねーぞ!」という野次が飛び出し、これが報道されてネット流行語にもなるほどでした。

業界再編、非家電領域へも進出

 業界団体の解散、業界再編が進んだ2000年以降。2011(平成23)年の地上デジタル放送への切り替えや、各家庭での家電の買い換え需要も落ち着いたことなどから、家電以外の領域への事業拡大、非家電製品の取り扱いも活発になっています。
 たとえばヤマダ電機は、2011年のハウスメーカーの買収を皮切りに、住宅設備メーカーやリフォーム事業、家具メーカーなどの買収で、家電を入口に住環境全体を提案する店舗の出店を進めています。非家電領域の強化は、首都圏を中心に展開するビックカメラとユニクロとの融合店「ビックロ」の出店(2012年)や、ヨドバシカメラのアウトドア用品・石井スポーツの子会社化(2019年)、西日本を中心に展開するエディオンのリフォーム事業(2013年)やプログラミング教室との連携(2019年)などさまざま。ネット通販の台頭で家電の流通が再び変化するなか、家電量販店はますます私たちの生活と深く関わっています。

今や家電量販店に行けば、おもちゃや書籍、食料品、お酒、自転車、家具など、生活にまつわるさまざまな商品がラインナップされていることが当たり前になりました。町の電気屋さんに始まり、領域をさらに広げる家電量販店、次ページではトリビアもご紹介します。

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