
紀元前3000年までさかのぼることができるという銀行の歴史から、今や生活に欠かせないATMのルーツ、営業時間の謎まで、銀行にまつわるトリビアをご紹介します!
前ページでは日本の銀行の歴史をざっとご紹介しましたが、世界最古の銀行は紀元前3000年ほど前までさかのぼることができるといいます。
バビロニアの神殿では人々の財産を保管し、家畜や穀物を貸し付けていたほか、古代エジプトでは穀物がお金として使われていたため穀物倉庫が銀行の役割を果たしていたとか。誰がどのくらい預けているかという記録はアレクサンドリアの中央倉庫で管理され、それをもとに実物を移動させることなく、穀物の取り引きが行われていたといいます。当時からすでに為替の原理が取り入れられていたんですね。
前ページで触れたとおり、BANKの語源は中世イタリアの両替商が使っていた机(BANCO)。当時のイタリアは地中海沿岸貿易が活発になったことから両替商が栄え、預金を受け入れて振替業務を行う振替銀行が登場しました。
現在のような銀行が誕生したのは16世紀後半から17世紀初頭のイギリス・ロンドンです。当時、主要な決算手段は金(ゴールド)だったため、商人は儲けた金を盗難などのリスクから守るためにどこかに預ける必要がありました。そこで注目されたのが、金細工のために頑丈な金庫を持っていたゴールドスミス(金匠)。ゴールドスミスは商人から金を預かるようになると、預かり証書となるゴールドスミスノート(金匠手形)を発行し、次第に預かった金の一部を貸し出すことで利益を得るようになります。こうして銀行の仕組みが確立され、ゴールドスミスノートは銀行券の先駆となったのです。
キャッシュカード1枚あれば、簡単に現金の引き出しや預け入れ、振り込みができるATM(オートマティック・テラー・マシン/現金預け払い機)。ATMは1970年代後半に登場し、1990年代後半には全盛期を迎えますが、それまで活躍していたのがCD(キャッシュ・ディスペンサー/現金自動支払い機)です。
自身の口座から現金を引き出せるCDが世界で初めて導入されたのは1960年代の英国。そのきっかけは銀行経営の合理化、そして週休2日制の導入でした。預金者への土曜休日のサービス維持のために開発が進められたCDは、1965年にロンドン近くのエンフィールドにあるバークレーズ銀行の支店で初めてお目見えし、「24時間、あらゆる休日も休みなしの営業」をキャッチコピーに他店にも次々と導入され、ほかの銀行もその流れに続きました。
日本では1969年12月、住友銀行の東京・新宿、大阪・梅田の両支店に初めて設置されました。磁気ストライプ付きのプラスチックカードを使うところは現在のCDやATMとそっくりですが、オンラインシステムとは連動しておらず、カード上にあらかじめ設定された支払い限度額内で現金の引き出しができるものだったそう。また、当時のCDは1000円札10枚が1束で出てくる“袋出し方式”で、現在のように1枚ずつ引き出せるようになったのは1971年9月、富士銀行が銀座、新橋の両支店に導入したCDが初めてとされています。
今やCDにかわって主流となったATMですが、ATMの登場以前にはAD(オートマティック・デポジット・マシン)と呼ばれる現金の預け入れができるマシンが開発されていました。ADが初めて設置されたのは住友銀行の大阪・梅田支店。1973年12月に設置されると、その後も大都市を中心に導入が進められましたが、CDとADの両方の機能を持つATMの登場で廃れてしまったといいます。
一般的な企業の終業時間は午後5〜6時、役所や公共機関の営業時間も午後5時までというのが一般的ですが、銀行の多くは午前9時開店、午後3時閉店となっています。何とも中途半端な営業時間に思えますが、銀行が早めに窓口を閉めるワケは、銀行法施行規則で「銀行の営業時間は、午前九時から午後三時までとする」とされていたからなんです。
もちろん、閉店したからといって行員は帰れるわけではありません。伝票内容と現金の金額があっているかどうかの照合作業、現金や重要書類の保管、手形や小切手の処理など、営業時間中にはできないさまざまな仕事を行います。午後5時半頃に巡回してくる行内メール便のための作業も終えなければならず、閉店後はかなり忙しい時間帯。報告書づくりや自主的な勉強会などが開かれることも珍しくないんです。
とはいえ、午後3時までという銀行法施行規則は2016年に変更され、「営業時間は、営業の都合により延長することができる」とされ、営業時間を変更する銀行も増えています。ちなみに休んでよい日も法律で定められていて、土日、祝日、12月31日〜1月3日のみ。それ以外の休業日は承認を得なければならないんです。
ネット銀行の普及で営業時間を気にせずに利用することもできるようになったほか、「待ち時間が長い」「いつも混雑している」という従来の銀行のイメージを刷新するため、各種手続きを行うハイカウンターを廃止して利用客が自身で手続きできる端末を導入したり、事前予約制でフリースペースも設けた出張所を出店するなど、新たな店舗づくりも進められています。ますます便利になる銀行、これからも活用していきたいですね。
参考文献(順不同)
岩崎博充著、株式会社地域金融研究所監修『手にとるように銀行がわかる本』(かんき出版)/川村雄介監修『図解雑学 日本の金融』(ナツメ社)/高橋克英『図解でわかる! 地方銀行』(秀和システム)/戸谷圭子『最新版 イラスト図解 銀行のしくみ』(日本実業出版社)/根本忠明『銀行ATMの歴史 預金者サービスの視点から』(日本経済評論社)/アルヴィン・ホール著、相良倫子訳『目で見る経済 「お金」のしくみと使い方』(さえら書房)/マイナビニュース(ホームページ)/日本銀行(同) 等