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ニッポンの銀行
vol.89

“金行”と呼ばれていたかも?
ニッポンの銀行

メガバンクを舞台にした池井戸潤原作のテレビドラマ「半沢直樹」の続編が前作に続いて大きな反響を呼んでいる今、誰もが利用している銀行がどのように誕生したのか、その源流を辿ってみました。そもそも銀行とほかの金融機関の違いとは……?

そもそも「銀行」って?

 お金を扱っている民間の金融機関といえば、生命保険会社や証券会社、消費者金融など、銀行以外にもさまざまです。では、銀行にできてほかの金融機関にできない業務とは何でしょう?
 保険会社や証券会社などのいわゆるノンバンクと異なるのが、銀行はお金を貸す業務だけでなく、預金を集められるところ。預金業務は信用金庫・信用組合・農協・労働金庫といった協同組織型金融機関も行っていますが、株式会社である銀行は銀行法、信用金庫は信用金庫法と、根拠となる法律が異なるほか、信用金庫や信用組合は営業範囲が特定の地域に限定され、対象となる顧客もその地域の中小企業や居住者(や地域内で勤務している人)などと限られるところに違いがあります。

銀行は銀行でも—

  • 都市銀行 三菱UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクと、りそな銀行が含まれます。1988年には13行ありましたが、破綻や合併で現在の4行に集約されました。大都市に拠点を置いて全国に支店を展開し、特に三菱UFJは三菱財閥、三井住友は三井財閥と住友財閥、みずほは安田財閥と古河財閥が前身と、旧財閥系という共通点もあります。
  • 地方銀行 「地銀」と呼ばれる第一地方銀行。多くが県庁所在地に本店を置く地域密着型の銀行で、明治時代初期に設立された国立銀行をルーツにするものや戦後に新設されたものを合わせて、現在は64行あります。一方、第二地方銀行は、会員組織だった相互銀行が1989年以降に普通銀行に転換したものです(現在38行)。
  • 信託銀行 都市銀行や地方銀行といった普通銀行では預かることのできない有価証券や不動産を預かり、信託という形で運用・管理する信託業務を主力業務とする銀行。現在14行あります。

 なお、ご存じのとおり公的金融機関の日本銀行は、お札=日本銀行券を発行し、金融政策によって物価の安定と金融システムの安定化に取り組むわが国の“中央銀行”です。

どうして「金行」とならなかったのか

 「銀行」と当たり前に呼んでいますが、お金を扱うのならどうして「金行」とはならなかったのか……。諸説ありますが、「ギンコウ」という語呂の良さが決め手だったという話もあります。
 それによると、銀行という名前は、アメリカの国立銀行法に倣って1872年に制定された国立銀行条例で、「BANK」を「銀行」と訳したことから生まれたといいます。学者による協議の末、金銀を扱う店という発想から、中国語で店や市場を意味する「行」を用いた「金行」「銀行」という案が出され、語呂の良い「銀行」が採用されたのだそう。ちなみに、BANKは12世紀頃の北イタリアの両替商がお金を数えるために使っていた机、「BANCO」が語源です。

ナンバー銀行、最大時には“第百五三”まで!?

 新潟県の第四銀行、宮城県の七十七銀行のように、銀行名に数字が入っている「ナンバー銀行」は、日本の銀行史と切っては切れないもの。そもそも日本における銀行は、明治維新後の1872年に国立銀行条例が制定され、第一、第二、第四、第五銀行が設立されたことに始まります。
 国の中央銀行となる日本銀行がまだ設立されていない当時、国内には江戸時代に諸藩が発行した藩札や新政府が発行した紙幣、貨幣など、さまざまなお金が流通する混乱状態にありました。そうした紙幣の整理を目的に、民間資本の株式会社である国立銀行に兌換(だかん)銀行券を発行させたのです。1876年には銀行の設立条件を緩和した条例が発布され、1879年になると国立銀行の数は153行に上りました。しかし、1882年に日本銀行が設立されて銀行券を発行できる唯一の機関となったことで、国立銀行は銀行券の発券を止め、普通銀行に転身したのです。
 現行のナンバー銀行は全国に8つ。ほとんどが設立当時の名前を引き継いでいる中、第十九銀行と六十三銀行が合併してできたため、「19+63」で八十二銀行と名乗る銀行もあります。

ネット銀行は〇〇の宝庫

 基本的に店舗を持たず、ネット上ですべての手続きを完了できるインターネット銀行。2000年の規制緩和を契機に、店舗やATMに足を運ぶ必要もないことから広く普及し、今では従来の銀行も、銀行口座の入出金や残高照会、振り込みなどのサービスをネットで行えるネットバンキングを導入するようになりました。
 そんなネット銀行は“ユニークな支店名”の宝庫でもあります。実際の店舗がある場合、店舗名はその地域の名前や近隣の駅名などが使われることが一般的ですが、例えばセブン銀行は花の名前を支店名に採用。マーガレット(1月)、フリージア(2月)など、利用者の口座開設月によって支店名が変わる仕組みとなっています。

音楽に、誕生石も?

 日本最大のネット銀行である楽天銀行はジャズ、ロック、サンバなど音楽のジャンル名や、ピアノ、ドラム、チェロといった楽器名など、音楽にまつわるネーミングを採用。全国のイオンやイオンモールにインストアブランチを設けるイオン銀行は、利用者の誕生月に応じてガーネット(1月)、アメシスト(2月)など誕生月の支店名を採用しているほか、ジャパンネット銀行はすずめ、はやぶさなど鳥類の名前や星座、樹木などバリエーションもさまざま!

銀行名でいえば、山陽相互銀行を前身に1989年に岡山で開業した「トマト銀行」も、そのネーミングがメディアをにぎわせた一行。トマトの新鮮さや健康的なイメージから発案されたもので、その年の流行語大賞(新語部門銅賞)に選ばれたほど。銀行にまつわるトリビアは次ページにも続きます!

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