トップページ > 特集 vol.76 懐かしき学校給食

懐かしき学校給食

未知の味を初めて味わったり、苦手な食べ物をどうするものかと頭を悩ませたり……。多くの人がそれぞれの思い出を持っているのが学校給食ではないでしょうか。今回の「Trace」では、そんな給食の歴史を紐解いてみました!

どんな献立? 日本初の給食メニュー

 日本の学校給食は、1889年、山形県鶴岡町(当時)の大督寺に設立された私立忠愛小学校で始まるというのが定説です。それより前の江戸時代、1800年頃には会津藩の藩校で、ごはんや味噌汁、漬物、ときには塩鮭などを諸生に提供していたという話や、庶民が読み書きを習う手習所や私塾で食事を出していたという話も各地で残っていますが、貧しい家庭の子どものため、宗派を超えた僧侶の協力で設立された忠愛小学校では、おにぎりや野菜、塩漬けや日干しの魚などがお昼に無償で提供されたといいます。その歴史を大切にするため、いまでも鶴岡の小・中学校では、当時の献立を再現した「おにぎり給食」を実施しているそう。

給食実現の貢献者は〇〇の専門家?

 本格的な学校給食が始まるのは1919年のこと。その実現に大きく貢献したのは佐伯矩という人物です。実はこの人、「栄養」「偏食」「栄養食」などの言葉を生み出した日本の栄養学研究の第一人者。食や料理に関係する研究が“博士の面汚し”と批判されてしまうこともあった時代に、栄養や食品衛生の大切さ、学校給食の必要性を訴え、1919年6月、東京府(当時)の小学校でパンによる学校給食を実現しました。
 当時の児童の弁当は栄養が不足しているとの調査結果から、メニューにはバターや卵、カルシウムなどを配合した特製のパンが使われていたとか。その後、貧しい家庭の子どもの食生活や発育の改善の効果が認められ、給食は全国各地で拡大しますが、第二次世界大戦による食料不足の影響でほとんどの学校で中止されてしまいます。

戦後に復活した学校給食

 戦中・戦後の深刻な食料不足によって、発育途上の児童の健康状態は戦前を大きく下回ってしまいました。この状況を打開するため、教員が必死に食料をかき集め、給食を提供する学校もあったそうですが、本格的に再開されるのは1946年12月のこと。アメリカの宗教団体や慈善団体などからなるララ(アジア救済連盟)によって供給された物資を使い、永田町の国民学校で再開されたのが戦後初の本格的な給食とされています。その献立は、ネギや白菜、大根などを使ったシチューで、持参の弁当と一緒に食べられたそう。

子どもを悩ませたあの飲み物……

 給食といえば牛乳が定番メニューのひとつですが、実は、給食の黎明期から牛乳は取り入れられていました。牛乳がまだ一般的に飲まれていなかった1930年頃、有益な栄養品として牛乳を用いた児童の発育実験が一部の学校で行われていたんです。
 戦後は牛乳から脂肪分を分離した脱脂乳を濃縮、乾燥させて粉末にした脱脂粉乳がメニューに登場。しかし、お湯で溶かす際に焦げて苦くなってしまったり、温度が低くなると生臭くなってしまったりと、多くの子どもには不評……。お腹を壊してしまうこともあり、国会でも取り上げられるほどでしたが、国内で牛乳を安定供給できる状態になく、牛乳に切り替わるのは1960年代後半のことでした。

米食本格化! でも炊飯担当はパン屋さん?

 米不足やアメリカ産小麦の輸入などにより、戦後の給食の主食といえばパン食が基本でした。現在のように、白いごはんが登場するのは1970年代以降。米の生産量が増える一方で消費が停滞したために、政府が買い上げていた米の在庫が過剰になり、その対策として安く米が供給されるようになったことが背景にあったようです。
 現在はほとんどの学校で米食が行われていますが、意外なのが“炊飯”は学校の調理場などで行わず、専門の業者に委託するケースが多いこと。これは、米食が導入された頃、それまで学校給食で生計を立てていたパン業者の経営が危うくなるのを考慮して、業者が米を炊いて調理場に納めていたのが影響しているようです。いまではごはんはもちろん、ラーメン、スパゲッティ、うどんなどの小麦食、パンにしても米粉や地域産の小麦を使ったものなど、主食も多様化しています。

給食で一躍人気者に!

 家庭では味わったことのないメニューと出会うことも多い給食。ナポリタンや手巻き寿司といった、日本人におなじみのメニューも、昭和の給食がきっかけで一気に人気になったそう。冷凍食品も、世に広まる前から学校給食では用いられてきました。たとえば1950年代中頃に登場した、タラやイカなどを原料にしたフィッシュフライは“スチック(スティック)”と呼ばれ、子どもたちに好評だったようです。

あのお肉にめんメニューも……

 昭和の給食の定番メニューといえば鯨肉。貴重なタンパク源として、竜田揚げを筆頭に、ソースとケチャップで味付けしたオーロラ煮や大和煮も提供されていました。商業捕鯨が停止されてからは多くの学校で姿を消してしまったものの、いまでも鯨にゆかりのある和歌山や山口、北海道などの一部では、竜田揚げや鯨カレーなどが登場しているそう。
 ソフトめん、正式にはソフトスパゲッティ式麺も昭和の給食の定番メニューです。汁をかけなくても食べられて牛乳にも合う洋風麺として、1960年代中頃に登場したソフトめんは、カレーやミートソース、中華風あんかけなどにからめて食べられていました。ただ、最近では米食を推進する学校が増えたことや、うどんやそば、中華麺なども登場したことから、ソフトめん離れが進んでしまっているとか……。


貧しい子どもたちのために生まれた給食は、食を通じてマナーや地域の食文化を知るきっかけにもなっているようです。次ページでは給食を通じた食育の取り組みや、世界の給食事情も紹介します。

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