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進化するアウトレットモール
vol.133

“ショッピング”の枠を超え
進化するアウトレットモール

人気ブランドの衣料品やバッグ、家電を低価格で買えるとあって、お出かけやドライブのレジャースポットとして定番のアウトレットモール。誕生から30年が経ち、地域経済への影響も大きく、ショッピングの枠を超えた新たな展開を見せています。

約30年前に登場したアウトレットモール

 サンプル品やB級品といった規格外の商品や、シーズンを過ぎた型落ち品を、正規価格より割安で手に入れられるアウトレットモール。いまや全国に40近くあるその先駆けは、埼玉県入間郡大井町(現ふじみ野市)で1993年11月に開業した「アウトレットモール・リズム」とされています。
 同時期に開業した東武東上線・ふじみ野駅の近隣で、衣料品、雑貨、食品、飲食など25店舗を集めて始まった同アウトレットモールは、もともと総合スーパーを出店する予定が、急遽アウトレットモールにコンセプトが変更されてオープンしたのだそう。
 1995年には大阪市鶴見区で「鶴見はなぽ〜とブロッサム」、長野県北佐久郡軽井沢町で「軽井沢・プリンスショッピングプラザ」が相次いで開業し、1990年代後半から2000年代にかけて、全国各地でアウトレットモールの出店ラッシュとなりました。

そもそもアウトレットって?

 「アウトレット(Outlet)」とは「出口」や「はけ口」を意味する英単語。1970年代末、アメリカで「工場直売店(Factory outlet)」として始まったのがルーツです。
 当初は傷や汚れで規格外となった商品をメーカー直営で低価格で販売する店舗でしたが、次第に旧シーズンの在庫品やデッドストックなども販売するようになりました。
 アウトレットモールは、そんなアウトレットストアを集積したショッピングセンターのこと。メーカーにとってはブランドのイメージを損なうことなく在庫を処分でき、ユーザーにとっては正規品とほぼ変わらない商品を低価格で購入できるとあって、両者にメリットがある商業施設なんです。

群を抜いて人気を誇るアウトレットモールの誕生

 2000年以降、デフレ下の日本では、大都市近郊や郊外を中心にアウトレットモールが一気に拡大。出店に抵抗感を抱いていたブランドの意識も変わり、ユーザーの低価格志向や高速道路の値下げなども相まって、アウトレットモールでのお買い物は“レジャー”として定着していきました。
 この頃に開業したアウトレットモールの中でも、今も群を抜いて人気を誇るのが、静岡県御殿場市で2000年7月に開業した「御殿場プレミアム・アウトレット」でしょう。
 「小田急御殿場ファミリーランド」の跡地に開業した同アウトレットモールは、いたるところから富士山を眺められるロケーションで、現在は高級ブランドや国内外の有名ブランドが約290店舗集結し、店舗面積も日本最大。交通アクセスがよく、周辺には観光地が点在しているほか、ホテルや日帰り温泉施設も併設され、非日常的な空間でお買い物を楽しめるスポットとなっています。
 繊研新聞社が実施している全国主要SC(ショッピングセンター)アンケート調査によれば、2022年度のSC売上高ランキングで同アウトレットモールは首位の976億円。アウトレットモールとしては日本初の1000億円超えも間近です。

地域経済もアウトレットモールが鍵?

 郊外に出店されることが多いアウトレットモールは、その地域の住民を従業員に多く採用するなど、雇用創出にも一役買っています。2003年に栃木県佐野市で開業した「佐野プレミアム・アウトレット」も、地域の発展を目指して地元住民の優先採用などに力を入れてきたアウトレットモールのひとつ。
 地元の人気グルメ「佐野ラーメン」のお店を出店しないことや、モール内に観光協会の案内所や地場産品の紹介を行う施設を設けることで、お買い物と一緒に市街地や周辺の観光地に足を延ばす人を増やすといった相乗効果を生んでいます。また、水害など災害発生時に施設の一部を一時避難場所として開放するといった災害協定も地元自治体と結んでいるんです。

誕生から30年、アウトレットモールは“体験の場”に

 2010年代になると、アウトレットモールは国内外の観光客の取り込みを強化。増床や高級ブランドの出店、外国人観光客向けのアクセス方法の拡充などに取り組み、外国人観光客にとって「買い物をしたい場所」の上位に入るほどになりました。
 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で客足や売上が減少していたところから一転、今ではコロナ禍からの回復が本格化し、アウトレットモール全体の売上高も過去最高をうかがう勢いといわれています。誕生から30年が経過し、アウトレットモールは店舗面積や取り扱いブランドの拡充だけでなく、さらなるモデルチェンジも進めています。

遊べて学べるアウトレットモール?

 福岡県北九州市、アミューズメントパーク「スペースワールド」の跡地で2022年4月に開業した「THE OUTLETS KITAKYUSHU」は、国内最大級のプラネタリウムや英語体験施設、多目的フットサルコートも備えるなど、学べて遊べる機能が充実しています。


お買い物ついでにグランピング体験

 関西国際空港の対岸に位置する西日本最大級の「りんくうプレミアム・アウトレット」(大阪府泉佐野市)は2020年8月、アウトレットモールとしては初のグランピングなどが楽しめるシーサイドパークをオープン。大阪湾や関空を一望できるロケーションで、焚き火やバーベキューなどのアウトドア体験ができます。


アクティビティに地域連携の強化も

 1999年7月に開業し、現在は一時閉鎖されている「三井アウトレットパーク マリンピア神戸」(兵庫県神戸市)。今年2024年秋の再オープンでは、隣接するラグーンや明石海峡大橋を望む立地を生かしたアスレチック施設や、ドッグランといったアクティビティの拡充が予定されているそう。また、地場産品を使用した飲食店など地域連携も強化し、滞在そのものを楽しめる施設を目指しているといいます。

北陸新幹線が経由するようになった加賀温泉郷の玄関口・加賀温泉駅前でも、2028年の開業を目指して石川県内初のアウトレットモールの出店計画が進んでいるようです。地域を元気にしてくれるアウトレットモールの誕生が楽しみですね。

参考文献(順不同)
宮副謙司、内海里香『新しい流通論』(有斐閣)/石井里枝・神頭広好「日本におけるアウトレットモールの空間分析」(愛知大学経営総合科学研究所)/日本ショッピングセンター協会(ウェブサイト)/繊研新聞(同)/日本経済新聞(同)  等

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