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高速道路は日本の大動脈!
vol.124

経済発展を支える
高速道路は日本の大動脈!

各地域をつなぐ陸上交通の手段として鉄道の建設を優先していた日本に、本格的なモータリゼーションの波がやってきたのが1960年代。戦前から構想されていた高速道路の建設計画は戦後、1957年の高速自動車国道法制定で本格化し、1963年に初の高速道路が誕生しました。経済発展に大きく貢献し、私たちの暮らしを支える大動脈の秘密とは?

初めての高速道路にトラブル続出!

 欧米では戦前から存在する高速道路ですが、日本で初めて開通したのは1963年、名神高速道路の兵庫県尼崎市―滋賀県栗東町(当時)間が最初でした。時速100kmで自動車が走る道路の完成は人々の話題を集めたものの、当時は長時間の高速走行に耐える性能を持つ自動車ばかりではなく、なんと、開通後の10日間でオーバーヒートなど500台以上の故障車が発生したといいます。
 1965年には愛知県小牧市―兵庫県西宮市間が開通して名神高速道路が全線開通、1969年には東京と名古屋を結ぶ東名高速道路が開通し、東京と大阪という2大都市がつながりました。その後も各地で高速道路網が広がると物流が盛んになり、また、高速道路の走行に耐えられるように国産車の性能も向上していきました。

「高速道路」はたったの4つだけ!?

 私たちが高速=高速道路と呼んでいる道路は、法律上は「高速自動車国道」として分類されています。ただ、高速自動車国道であっても「〜高速道路」と名前が付いているのは、名神高速道路、新名神高速道路、東名高速道路、新東名高速道路の4つだけ。中央自動車道のように「〜自動車道」という名前の路線がほとんどです。
 もともと中央自動車道も1967年の開通からしばらくは「中央高速道路」と呼ばれていましたが、高速道路という名前のせいか、暫定2車線の対面通行区間で対向車がいなければ追い越し可能とされていたため、スピードを出して正面衝突事故が多発したことが改称のきっかけだったそうです。
 ちなみに、首都高速道路、名古屋高速道路、阪神高速道路、広島高速道路、北九州高速道路、福岡高速道路は高速道路と名前が付いているものの、高速自動車国道ではなく「都市高速道路」で、都道府県道・市町村道に分類されるため、時速60km以下の速度制限などが適用されています。

首都高は世界屈指の都市高速道

 首都圏で暮らす人にとって身近な高速道路といえば、首都高こと首都高速道路。人口密度の高い大都市の中心部を走る日本で初めての都市高速道路は、1962年に京橋―芝浦間が、1964年の東京オリンピックまでに主要幹線の約32kmが開通しました。オリンピックに間に合うように羽田空港と会場がある都心を結ぶ路線が優先的に整備されたことから、「首都高速道路は東京オリンピックのためにつくられた」と思われることもあるようですが、開発計画自体は慢性的な渋滞の緩和を目指してオリンピック招致前から存在していたもの。オリンピック以降も工事が進められ、1967年には都心環状線が全線開通、1970年には当初計画されていた約71kmが完成しました。

もはや目的地! 進化が続くPA・SA

 信号がなく路肩に一時駐車もできない高速道路では、休憩施設となるパーキングエリア(PA)やサービスエリア(SA)の設置が義務付けられています。

PA
おおむね15km間隔(北海道ではおおむね25km間隔)で設置。駐車場やトイレのほか、自動販売機や売店など必要最小限のものを備えている。
SA
おおむね50km間隔(北海道ではおおむね80km間隔)で設置され、駐車場やトイレに加えて、売店、レストランやガソリンスタンドを備え、宿泊施設などがある場合も。

 ただし、東京湾アクアラインの海ほたるPAのように、PAでありながらレストランやアミューズメント施設が充実しているところがあったり、ガソリンスタンドやレストランがないSAもあったりと、PAとSAを厳密に区別することは難しいもの。また、高速道路網は全国に広がっていても、東京、京都、長崎のようにSAがない都府県もあります。
 日本で初めてのSAは名神高速道路の開通に合わせてオープンした大津SA、日本初のPAは1969年に建設された東名高速道路の駒門PA(上り)で、特に大津SAはオープン当初はその珍しさから多くの観光客で賑わったそうです。ただ、2005年の道路公団民営化以前は休憩のための施設だったPAやSAも、民営化以降は様変わり。「そこに立ち寄りたい」と思わせるような魅力的な施設が増加しています。
 たとえば、高さ約60mの観覧車でおなじみなのが、伊勢湾岸自動車道の刈谷ハイウェイオアシス。刈谷PAに隣接し一般道からもアクセスできる複合施設は、メリーゴーランドやゴーカートで遊べる公園施設や天然温泉施設もあり、PAのトイレとは思えないほど豪華な内装の「デラックストイレ」がリニューアルされたことで最近も話題になりました。ほかにも「鬼平犯科帳」とコラボして江戸時代の街並みを再現した東北自動車道の羽生PA(上り)や、甲賀流忍者にちなんだグルメを味わえる新名神高速道路の甲南PAのように、ご当地ならではのユニークな施設が登場するなど、PA、SAは“目的地”としても人気を集めています。

お出かけ前に知っておきたい高速道路豆知識

 安心かつ快適に利用できるように、さまざまな技術が取り入れられている高速道路。そのいくつかをご紹介します。

直線にできてもあえて曲線に

 高速道路には直線区間がほとんどありません。それは地形的な理由もありますが、「高速催眠現象」を避けるためでもあります。一般道と違って信号もなく、高速で単調な運転を続けていると睡魔に襲われて大事故につながる恐れがあるために、直線で道路を建設できるところでもあえて曲線にして、路肩の白線に一定間隔で凹凸を付けたり、凹型の溝を掘るランブルストリップスを設置して、音と振動で運転手に車線の逸脱を伝えるような工夫がされています。


頼りなさそうだけど実は頼れる

 日本の高速道路は、4車線(片側2車線)以上で建設予定だった道路を暫定的に2車線(片側1車線)で開通させる「暫定2車線」の道路が全体の約3割を占めているといいます。全車線の開通を待たず、まずは開通させることで時間的、金銭的なコストをかけないための措置ですが、そもそも高速で片側1車線の対面通行は正面衝突の危険性が高く、諸外国をみても珍しいものなのだそう。そのため事故を未然に防ごうと、近年は中央分離帯にワイヤーロープが導入されています。従来使われているプラスチックのラバーポールでは車線のはみ出しを防ぐことは難しいものの、弾力性があり頑丈なワイヤーロープなら飛び出しを防止する効果が高く、緊急時には取り外しもできて事故後の復旧も簡易なため、全国で設置が進められているんです。また、暫定2車線区間についても、安全性や信頼性を向上させるために4車線化が推進されています。


視認性の確保、一般道との区別もつく

 高速道路の標識は一般道と比べて読み取りやすいように大型の標識が設置されていますが、標識の地色には一般道の標識のような「青」ではなく「緑」が使われています。これは、高速道路建設が検討されていた1960年代初めに、欧州の高速道路で使われている青と米国の高速道路で使われている緑で判読しやすさなどを実験したところ、夜間の走行時に青地の標識をヘッドライトで照らすと「緑に見える」という意見が上がったことから、昼夜問わず認識が変わらず、一般道の標識とも差別化できる緑色が採用されたそうです。
 標識といえば、高速道路の路肩や中央分離帯には数字が書かれた標識=キロポストも設置されています。これは路線の起点からの距離を記した道路上の住所のようなもので、事故や故障などのトラブルが発生した際、警察や道路管理者に自分がいる場所を正確に伝えることができます。高速道路では1km間隔で緑地に白色、100m間隔で白地に緑色の数字が記されたキロポストが設置されています。


渋滞や事故を防ぐトンネルの工夫

 高速道路に多いトンネルですが、高速で走行しているときにトンネルに入ろうとすると、その圧迫感からか思わず減速してしまうことも少なくありません。減速による渋滞や思わぬ事故を防ぐため、高速道路のトンネルの入り口は一般道のトンネルとは違い、斜めの形状にされているところも多くあります。一般道でよく見られる垂直のトンネルより、傾斜がついていることで圧迫感や恐怖感を抑えられることが、トンネルに入る際の減速による渋滞解消にもつながっているのです。

高速道路を利用して出かける機会も増える夏の行楽シーズン、高速につきものの渋滞ですが、高速道路では時速40km以下で走行し、車列が1km以上の長さになった場合が渋滞とされているそうです(首都高速道路では時速20km以下、阪神、名古屋高速道路では30km以下)。渋滞と聞くと「一般道路に降りたほうが早く着くかも?」と思ってしまいがちですが、高速道路が渋滞しているときは下道も渋滞しているもの。さらに、高速道路より速く進めることは稀ですから、高速道路に乗ったまま焦らず安全運転を心がけましょう。お出かけの際はETCカードもお忘れなく。

参考文献(順不同)
浅井建爾『誰かに教えたくなる道路のはなし』(SBクリエイティブ)/山形みらい『東名・名神高速道路の不思議と謎』(実業之日本社)/藤田哲史『中央自動車道の不思議と謎』(実業之日本社)/川辺謙一『図解 首都高速の科学』(講談社)/佐滝剛弘『高速道路ファン手帳』(中央公論新社) 等

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