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「トクホ」が気になる!
vol.99

学びのサードプレイスを持とう!
生き方を変えるリカレント教育

在宅時間を活用し、社会人が再び学び始める「リカレント教育」が注目を集めています。いまの時代において社会人が学び始めるのには、どのようなメリットや学習手段があるのでしょうか。リクルート進学総研・主任研究員の乾喜一郎さんに、いまどきのリカレント事情について聞きました。

リカレント教育が注目を集めてる理由

働き盛り世代こそ必要! リカレント教育のメリット

人生100年時代、いまを生きる社会人は所属する会社内の価値観だけでやっていく時代ではなくなっています。毎日のニュースを観ても、SDGsやLGBT、Black Lives Matterがキーワードになることも少なくありません。いくつものコミュニティに所属し、多様な考え方の中に身を置き、サードプレイスとしての学びの場を持つ価値が高まっているのです。
20代の若手社会人は、自宅と会社以外にサードプレイスを持つことを当たり前にやっています。そこで対等な関係性を持つことで得られるものや気づきがあるでしょう。学びのジャンルは、英語やプログラミングなどビジネス分野から、哲学やアートなど興味のある分野、あるいは地域活動や子育て支援活動の分野まで何でも構いません。どんな分野の学びも、会社の業務を客観的に見ることにつながり、マネジメントに活きたり、家庭や地域社会の一員としての自分を充実させます。ぜひ学びの場を設け、リカレント教育を始めてみましょう。

「リカレント教育≒学び直し」は間違い?

リカレント教育のトレンド

双方向のオンラインプログラムが充実

ひと昔前までの学習のスタイルとしては、リアルでもオンラインでも一方的に講義を受ける一方向が主流でした。しかし、現在はコロナ禍もあり、オンラインプログラムが進化。講義スタイルだけでなく、グループワークを含めたリアルな授業に近いものが展開され、対話や実技を伴うプログラムが当たり前になっています。もう一つの傾向は、オンデマンドで提供されるプログラムに10分や15分単位の一息で見れるものが登場していること。その時間でレクチャーとテストが受けられるものもあり、すき間時間を上手に使えるようになっています。


学びの分野が多様化、いくつもコミュニティを持つ人も

社会人のリカレント教育というと、ビジネスに近接した英語やIT、マーケティング分野が思い浮かびます。しかし、それだけではなく、哲学や社会学、教育学、アートなどの分野も人気。そういえばビジネス雑誌の哲学や美術といった教養についての特集もヒットコンテンツになっていますね。また、興味のある学びの場をたくさん持つのもトレンド。気軽にいろいろ学んでみて多様な人々とつながることもいまの時代に合っているのかもしれません。

リカレント教育を始めよう!

自分にぴったりの学びの見つけ方

リカレント教育をすすめられても、自分は一体何を学んだらいいのか、悩んでしまうものです。おすすめなのは、いまの自分の半歩先のコンテンツを考えてみることです。「これまで自分は英語で物事を進める機会がなかったけれど、打ち合わせに同席する機会が増えた」なら英語を学んでみるのも良いでしょうし、「子どもの小学校の授業参観に行ってみたら、現在の教育現場が気になった」なら、教育学を学んでみるのもありです。
何か自分の中にヒントはないかと探索行動を起こすことが第一歩なのです。最初は書店や図書館などに行ってみて、自分が興味を惹かれるタイトルやキーワードを探してみるのがおすすめ。インターネットを使って探すなら、そうやって見つけた新しいキーワードで探してみると、これまで出てこなかったセミナーや講座が出てきます。無料のセミナーから出発してどんどん興味のあることを追いかけていくことで、やってみたかったことがわらしべ長者のようにつながっていくかもしれません。

社会人が通うリカレント教育の学校

学びの分野が定まったら、次はどんな場所で学ぶかを決めます。初めのうちは、短期間のセミナーやカルチャースクールなどに通って、専門的に学びたい科目が決まれば、大学や大学院に進む道もあります。大学や大学院というと学生が行くイメージがあるかもしれませんが、現在は社会人だけを対象にした学校も。土日や夜間、オンラインがメインで働きながら学べるようになっています。

専門職大学院

現場で活躍するプロフェッショナルの養成を目指して、2003年に創設。法曹(法科大学院)、会計、ビジネス・MOT(技術経営)、公共政策、公衆衛生、教育などの分野で開設されています。理論と実務を両立した教育が基本となっており、研究指導や論文審査は必須ではなく、双方向の授業や事例研究、現地調査などの実践的な教育が展開されているのが特徴です。国公立も私立もあります。


[期 間] 専門職大学院2年、法科大学院3年、教職大学院2年
[費 用] 国立/入学金 28万2000円、授業料53万5800円
私立/入学金 数万〜30万円、授業料50万〜150万円(年額)
[入学試験] 「書類選考+小論文+面接」「書類選考+面接」などが多い
※法科大学院の既修者コースは専門科目が課される

九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻、グロービス経営大学院大学など

通信制大学

自宅学習+スクーリングで学士を取得できる大学。地域に関係なく通えるのが魅力です。テキストでの学習がメインで、オンラインで学習を進められるシステムを導入している学校もあります。スクーリングは、社会人が通いやすい日程で設定され、学生のように切磋琢磨できる仲間と一緒に学ぶ機会も設けられています。分野は福祉や心理、ビジネス、教育などさまざま。芸術分野の大学もあります。卒業論文や総合面接試問をクリアすれば卒業可能。40くらいの通信制大学があります。


[期 間] 1〜4年
[費 用] 13万〜14万円(年額)、1年次入学(4年間)70万〜120万円、3年次編入35万〜60万円
[入学試験] なし(入学は春、秋の年2回)

産業能率大学、サイバー大学、京都芸術大学など

履修証明プログラム

大学・大学院が社会人のために設計したオリジナルプログラムです。期間は3カ月~1年のものが多く、費用もリーズナブル。取り上げるテーマはどれも実践的で、ITやSDGs、農業、まちづくり、ワインや温泉コンシェルジュまでさまざま。夜間や土日に開講したり、eラーニングが組み合わされたりと社会人が通いやすいよう工夫されています。修了者には「履修証明」が交付され、その後大学や大学院の正規課程に進学した際は単位として組み込むこともできます。


[期 間] 最短60時間、100〜200時間程度
[費 用] 数万〜20万円程度
[入学試験] なし(書類選考など)

食と農のビジネス塾(山形大学)、21世紀のリーダーシップ開発(早稲田大学)、ツーリズムプロデューサー養成課程(大阪観光大学)

科目等履修/聴講生

大学・大学院の正規の科目を一科目だけ受講することも可能。テストも受けられて単位の取得も可能なのが「科目等履修生」で、正規課程に進学したあとは単位として組み込むことができます。一方で授業を受けるだけなのが「聴講生」。通学制・通信制両方があります。


[期 間] 2学期制4ヶ月、4学期制2ヶ月など
[費 用] 1科目1万円〜
[入学試験] なし(書類選考など)

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仕事と並行してリカレント学習を継続するコツ

社会人の場合、学習すると決めたらその時間は仕事よりも学習を優先する心構えが大切です。空いた時間で学習しようと思っていると、目の前の仕事や誘惑に負けてしまうもの。自分の人生には学びが必要だと決めてしまいましょう。
最初のうちは、なかなかその時間が確保できにくいもの。その場合、学びとセットでご褒美を設定するのがおすすめです。例えば、学校の近くに好きなカフェがあれば、学びの前後にそこに立ち寄る時間を設けます。学びの習慣がついてしまえば、学び自体が楽しくなってきます。また、周囲には学ぶことに対してネガティブなことを言ってくる人もいるでしょう。気にしないようにしたり、社内に味方を作ったりして自分のモチベーションを守れるようにするのもポイントです。

監修:乾 喜一郎さん

リクルート進学総研主任研究員(社会人領域)、白百合女子大学・淑徳大学非常勤講師/長年キャリア情報誌の編集・制作に携わり、2006年「ケイコとマナブムックリシリーズ」編集長に就任。2019年より現職。これまで取り上げてきた3000名以上に及ぶ社会人学習者のライフヒストリーを元に、文部科学省などの各種社会人学習促進にかかわる施策の検討には学習者の立場からの提言を行う有識者委員として参画している。

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