
“密”を避けるアウトドアとして、釣りが再注目されています。釣りというと、ツールを揃えて本格的に臨むイメージがありましたが、最近では初心者や女性、家族連れでも楽しめるプランが充実。今回はそんないまどきの釣りデビューを、ビギナー向けの釣りプランを多数紹介するウェブメディア「ツッテ」編集長の中川めぐみさんに教えてもらいました。
時節柄、“三密”を避ける生活様式が推奨されるようになって、気軽にできるアウトドアとして、釣りブームが到来しています。実はそれ以前から、釣り船(船宿)や海上釣り堀がホームページを設け、初心者や女性、家族連れに向けたプランを用意するようになっていました。また、TV番組で出演者が豪快に釣りをしていたり、SNSで身近な友達が楽しそうに釣りをしているのを見て、「魚を釣るのって楽しそう」「自分にもできそう」と興味を持つ人が増えていました。つまり、気軽に釣りを楽しむ環境が整った頃に、外でリフレッシュする選択肢として釣りが浮上。今回、空前の釣りブームとなりました。
かつて、男性の間でバスフィッシングの釣りブームが到来したことがありましたが、今回のブームの主役は女性や家族連れ。“釣りガール”なる言葉も誕生しています。いまどきの釣りは、大変な準備やテクニックを必要としないもの。ぜひ気軽に釣りを始めてみましょう。
釣りは、魚を釣るだけではなく、その過程やその先で何かが“つながる”のが魅力です。そもそも、出かけるだけで旅の要素があるのがポイント。釣り船に乗ると、これまで知らなかった海の景色が見られたり、乗り合わせた地元の人と仲良くなれたりすることも。これまで何気なく食べていた魚も、釣って食べることで、魚の旬や調理の仕方、地域ごとの魚の種類がわかったりします。子どもであれば、実際に泳いでいる魚を釣って食べることが食育にもつながるでしょう。釣りをとおして出会える体験や知識はさまざま。釣りの先に発見があるのも醍醐味です。
海か川か湖かでいえば、海釣りがおすすめです。川や湖は、釣れる魚の種類が限られており、テクニックや準備も必要です。海釣りの場合は、魚の種類が選べますし、気軽に始められる場所もあります。おすすめは、釣り船か釣り堀。最近は海上に釣り堀があり、陸続きで歩いてアクセスできます。釣り船も最近はホームページを設け、レンタル込みでプランを提供しているため、気軽に申し込めるところがほとんどです。ちなみに、堤防釣りは一見手軽なように見えますが、初心者には難易度高し。道具を全て自分で揃える必要があり、わからないことや困ったことがあっても、誰も助けてくれません。釣れるまでに疲れてしまうかも……。
釣り船も海上釣り堀でも竿やバケツはレンタルできます。竿は安価で購入できるものもありますが、魚種によって種類が異なりますし、購入後のメンテナンスや保管も面倒なもの。エサや仕掛けも購入できるところがほとんどです。持ち帰り用の発泡スチロールケースや氷は用意されていないところもあるので、事前に確認してみましょう。何度か釣りをして、自分の好きな釣りが分かったり、道具を揃えることに関心が湧いたりしたら、その時に「自分で揃える」ことも楽しんでみてください。
自前で準備したいのは、手袋、ウェットティッシュ、ニッパー、発泡スチロールケースまたは保冷バッグです。手袋は薄手でピタッとしたビニール手袋の上に園芸用の厚いものを二重にするのがおすすめ。園芸用のみ親指と人さし指の先をカットしておけば、細かい作業もしやすくなります。ニッパーは、魚が針を飲み込んだときに外すために使います。発泡スチロールケースや保冷バッグは魚の持ち帰り用に。100円ショップで購入できるものがほとんどです。
濡れることもあるので、多少汚れてもいい動きやすい服装を用意しましょう。夏は日差しが強いので薄手の長袖がベター。帽子や日焼け止めも忘れずに。冬は風が強いので重ね着をしましょう。釣り船の場合、船上に水を流しっぱなしにしている船もあるので、長靴や防水シューズ、夏場ならクロックスのようなサンダルを用意します。いずれも、ユニクロやワークマンで安価に揃えることができます。
小さな子どもを連れて家族で釣りに出かけるなら、海上釣り堀がおすすめ。海上釣り堀には、食堂が併設されているところもあるので、自分で釣った魚をさばいてもらい、食べることで食育にもなります。釣り船で酔う心配もなく、何かあればすぐに帰れるのも安心。釣り堀施設をホームページで探し、前日までに予約して、動きやすい格好で出かけましょう。
デートを釣りにすると、いつもと違うパートナーの表情がわかるもの。釣り船は、1日プランと半日プランがありますが、午後からの半日プランならゆっくり支度ができます。午後から釣り船に乗って、好きな飲み物を飲みながらユルユルと楽しむのがおすすめ。新型コロナを巡る状況が落ち着けば、釣った魚を持って馴染みの居酒屋へ足を運び、調理してもらうのもよいでしょう。
旬の魚を求めて、釣りをして、魚のおいしさを満喫するコース。事前に旬の魚や目当ての魚が釣れる釣り船や釣り堀をリサーチ。フグやカワハギなどの高級魚が食べられることもあります。フグは釣り船の人が調理免許を持っていることも多いので、さばいてもらえば白子も食べ放題。春先の時期だと、脂ののったアジも◎。釣りたてのアジをフライにすると、水分が多く身が生きているのでおいしさは格別です。東京湾だと金アジというブランドアジも釣れます。
釣り船に数時間乗っていると、自然と「どこから来たの?」と会話が生まれるもの。そのやりとり自体も地域の素顔を知る楽しみになります。運が良ければ、釣った魚をさばいてくれるお店を紹介してもらえ、地元ならではの調理法で魚を味わえることも。さらには、釣り以外のおすすめ観光スポットやご当地自慢が聞けるかもしれません。旅先で釣りをすると、地元をより満喫することができます。
釣った魚を持ち帰って、自分で調理します。最近は、YouTubeに魚のさばき方の動画がたくさんアップされているので参考にすると良いでしょう。スーパーや魚屋の中には、有料または無料で三枚おろしをやってくれる店もあり、下処理だけおまかせするという選択肢も。
飲食店の中には、釣った魚を持ち込んで有料で調理して味わえる店舗もあるので、なじみの店に頼んでみましょう。なじみの店がない場合は、「ツッテ」に料理してもらえる店が掲載されています。
https://tsutte.jp/cuisine/page/2
たくさん釣れたときは、持ち帰ってご近所や友人におすそ分けするのも◎。ウロコや内臓はあらかじめ取り除いてあげると親切です。
静岡県・西伊豆町では、遊漁船で釣った魚を電子地域通貨「サンセットコイン」で買い取るサービスがあります。つまり、西伊豆で釣りを目一杯楽しんだら、釣った分だけ地域通貨になり、飲食店代や宿泊代、ガソリン代などに変えられるのです。これは、漁師不足で漁獲高が減り、周辺住民が食べる魚が不足していることから考えられた取り組み。釣りと旅を楽しみたい人にも、西伊豆の人にもうれしいサービス。ぜひ利用してみてはいかがでしょうか。
ツッテ編集長、釣りアンバサダー、一般社団法人ウオー代表/1982年富山県生まれ。ベンチャー企業や広告代理店で新規事業の立ち上げに関わる一方、趣味としてはじめた釣りの魅力に取り付かれ「釣り×地域活性」事業で独立。釣りや漁業を通して日本全国の食、景観、人、文化などの魅力を発見・発信することを目指し、各地で観光コンテンツの企画やPRを担っている。メディア出演・掲載多数。
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