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楽しさ広がるボードゲームの世界
vol.93

知的に進化!
楽しさ広がるボードゲームの世界

家族の団らんが増える季節、クリスマスやお正月にボードゲームで盛り上がったという思い出がある方も多いのではないでしょうか。子ども向けのアナログゲームという印象が強かったボードゲームもいまや知的に進化し、誰でも楽しめるものから大人を唸らせる難易度の高いものまで、さまざまなタイプが登場しています。今回はボードゲーム専門店「すごろくや」の丸田康司さんに、ボードゲームの世界について教えてもらいました。

いまどきボードゲーム入門

いまどきの「ボードゲーム」とは?

ボードゲームとは、テーブルの上で盤面を使って遊ぶものを指します。そのため、本来は囲碁や将棋もボードゲームの1つ。カードゲームや、ボードやカードを使わないアクションゲームもボードゲームと呼ばれています。かつての日本では、「人生ゲーム」や「おばけ屋敷ゲーム」のように家族で親しむものがポピュラーでしたが、年間数百ものボードゲームが発売されているボードゲーム大国のドイツでは、作家が作った知的な大人向けのものが主流。そうした流れを汲んだボードゲームが日本にも上陸し、現在ではさまざまなタイプのボードゲームが出揃い、注目を集めています。

ボードゲームの魅力

ボードゲームの魅力としては、まず種類の豊富さがあげられます。子どもでもかんたんに遊べるシンプルなものから大人がじっくり楽しむ奥深いものまでさまざま。ゲームのモチーフとなっているのも、おとぎ話、料理、探偵、鉄道、都市建設……と多岐にわたり、パズル、陣取り、記憶、競争、協力、騙し合いなど、試される知力もいろいろ。それぞれのゲームに趣向を凝らしたアイデアがあり、ユニークなしかけが待っています。
海外製のゲームは、内容もさることながらパッケージや見た目の豪華さにも目を見張るものがあります。もちろん、テーブルを囲んで誰かと対戦するのは、お互いの心理や駆け引きを生み、スリルや高揚感を共有できるおもしろさがあるでしょう。テレビゲームとは違ったリアルな体験もボードゲームの楽しみの1つです。

ボードゲームの歴史

人類の文明発達とともにボードゲームが誕生

ボードゲームの歴史が始まったのは、紀元前5000年ごろ。トルコで古墳群の中からサイコロが発見され、それが起源ではないかといわれています。その後、人類の文明の発達とともにメソポタミア、エジプト、ギリシャ、ヨーロッパなどで、さまざまなボードゲームが考えられてきました。

アメリカで「人生ゲーム」が生まれ、世界へ

1860年にアメリカの若者がチェッカーのボードゲームに人生のできごとを盛り込んだ「THE CHECKERED GAME OF LIFE」を発案し、ヒット。その後も改良が続けられ、1960年代にはアメリカンドリームを象徴するゲームとして大ヒット商品に。世界にも翻訳され、1968年に日本でも「人生ゲーム」として発売されました。

ドイツで的な大人向けに進化

アメリカで娯楽性のある作品が商業的に成功する一方、発明大国ドイツでは知的なボードゲームが開発されました。こちらは大衆的なものというより、作家の名前が冠された大人の思考に耐えられるもの。「ドイツゲーム」や「ユーロゲーム」と呼ばれ、大人の知的なボードゲームとして各国に翻訳されていきました。

フランス、アメリカの台頭

ドイツでモダンボードゲームが確立されてから、市場は拡大傾向に。1983年にはドイツのエッセンでボードゲーム見本市「シュピール」がスタートしています。その後、翻訳するだけでなく、自国でも本格的なゲームを作ろうという流れができ、フランス、アメリカがこの分野で台頭していきます。

「カタンの開拓者たち」が大ヒット

モダンボードゲームのヒットを決定づけたのが、1995年に発売された「カタンの開拓者たち」。ルールが多く、難易度が高いと思われていましたが、それが大人にとってゲームのやりがいにつながり、ドイツのみならず世界的なヒットとなりました。

「ドミニオン」「人狼ゲーム」のヒット

「カタン」後にヒットとなったのが、2008年の「ドミニオン」。カードゲームの要素を取り入れた画期的なゲームで、カードゲームファンをも取り込みました。2012年ごろからは「人狼ゲーム」が人気を集め、テレビ番組で放送されるまでに。言葉ゲームの要素が強い人狼は難易度が低く、ボードゲームの裾野を広げました。


ボードゲームを知るトピックス

ボードゲームの市場規模はここ5年で2倍に

ボードゲームの市場規模は、2015年時点で30〜40億円程度と試算されています。これは当時のトレーディングカードの市場規模の10分の1程度。しかし、昨今の人気によって、現在は2倍くらいに増えているという見方もあります。今後、どのように推移していくのか、目が離せません。


ボードゲームの新作は毎年1000作

ボードゲームは毎月、新作が発売され、古いものは書籍と同じように絶版になっていきます。製品として流通しているものでも500作以上はあり、さらにインディーズで制作しているものも含めると1000作はあるといわれています。


ボードゲームの作者はどんな人?

ボードゲームには作者(デザイナー)がいて、マンガや小説のように作家ごとに指名買いされることも多くなっています。ボードゲームはそれくらい作家の世界観が反映されるもの。その作家はどんな人なのかというと、本業で取り組んでいる人は少なく、多くは医師や金融関係のビジネスマンといった知識層が多くなっています。現在のところ、それほど市場が大きくないこともあり、よほどの大ヒットでもなければ職業にするのは難しいからです。しかし、今後、市場規模が大きくなれば、ボードゲーム作家が登場するかもしれません。


最新・ボードゲーム事情

ボードゲームカフェが続々、ブックオフも参入!

1990年代からボードゲーム作品がコンスタントに発売されるようになって、コレクターを中心に公民館などを借りて、「オープン会」と呼ばれる、名作を楽しむ会が都市部を中心に開催されてきました。こうした人たちがビジネスとして始めるようになったのが、ボードゲームカフェの始まり。若者を中心に人気を集めています。最近では、ブックオフも参入し、店舗内にボードゲームカフェを設置。「どんなゲームがあるのか知りたい」というユーザーの取り込みが期待されています。


巣ごもり需要で、ファミリーにも人気!

新型コロナウイルスの影響によって、家で過ごす時間を充実させようとボードゲームを楽しむ人が増えています。ボードゲームは、子どもでもお年寄りでも楽しめるタイプのものもあります。家族でテーブルを囲んで会話しながらゲームを楽しむのは、テレビゲームとは違った楽しさがあることに気づくはず。子ども向けには思考力を養い、お年寄り向けには脳トレになるといったメリットもあります。


ボードゲームをやってみよう!

ボードゲームには、さまざまな切り口の作品があり、パズルや駆け引き、記憶力、心理戦、戦術、協力、運などの要素が交わっています。ゲームのルールや難易度にも違いがあり、子どもでも理解しやすいものから大人がじっくりやりこむものまでいろいろ。ゲームのタイプ別に、4つにわけてご紹介します。

難易度別おすすめボードゲーム

パカパカお馬
遊び方・ストーリー

1人ずつ特殊なサイコロ2種を同時に振って、その印を見たうえで、〈馬を進める〉か〈道具をもらう〉か選択。自分のパズルボードに道具を7つ揃えたうえで、厩舎に馬を連れて帰らせることを競うゲームです。馬小屋にはいち早く辿り着きたいものの、小屋に入るためには、自分のパズルボードにすべての道具が揃っていなければなりません。自分の番のときに、どちらの行動をすべきなのか、状況を考えてサイコロを選んでいきます。


おすすめポイント

ルールがかんたんで、3歳から遊べるので、小さな子どもから大人までが一緒にできるゲームです。小さな子どもが大好きなもの集めやピース集め、すごろくが一度に楽しめつつ、「進むか、道具か」大人でも悩ましい決断に大盛り上がり。家族向けにはもってこいですし、プレゼントとしてもおすすめです。

ゾンビキッズ:進化の封印
遊び方・ストーリー

ゾンビの大群が押し寄せる〈僕らの学校〉を守るため、それぞれが教室や校庭を移動。ゾンビを駆除して、校門4つを施錠していく協力型ゲームです。さらに一度やって終わりではなく、遊ぶたびにチャートにシールを貼るしくみ。シールが節目に到達すると、ゾンビが凶暴になったりして、ゲームが進化していきます。


おすすめポイント

引いたカードによってゾンビが出現し、危機一髪になる展開を、みんなの知恵でどう乗り切るか、ハラハラ感と達成感を一緒に味わえるのが醍醐味。初期状態では切り抜けられたピンチが、進化によって難しくなるのを乗り越えるのも協力型ゲームのおもしろさ。家族でも友達同士でも、盛り上がれるゲームです。

ガイスター
遊び方・ストーリー

“オバケ”のコマを動かして遊ぶマス目のボードゲーム。8つの持ちゴマは青のオバケと赤のオバケが半々で、ゲームに勝つには「相手の青のオバケを4つ取る」「相手が自分の赤のオバケを4つ取る」「自分の青のオバケを相手の陣地にある出口から脱出させる」という3つの方法があります。
オバケは前後左右に1マスずつ移動させることができ、移動した先に相手のオバケがあればそれを取ることができますが、対戦相手のオバケが青いのか赤いのかは、コマの見た目で判断できないため、相手の表情を読み取りながらゲームを進めます。


おすすめポイント

2人専用の対戦ゲームで、相手の裏の裏をかく心理戦がおもしろいゲームです。はじめはオバケの区別がつきませんが、出口から出られるのは青いオバケだけなので、だんだんと見せかけが効かなくなるのが盛り上がるポイント。初版は1982年ですが、何年経っても色褪せない名作といえます。

カルカソンヌJ
遊び方・ストーリー

世界遺産でもあるフランスの城壁都市カルカソンヌを舞台に、自分の城壁都市や道が広く長くつながるようにして完成させたポイントで競うゲーム。「カルカソンヌJ」は、金閣寺なども入った日本版です。
地形タイルを1枚ずつ中央の場につなげて、城壁都市や道を自分の手駒でおさえながら、その施設を大きくしたり、ライバルを妨害したりしていきます。


おすすめポイント

ベースは、タイルをつなげてコマを置くだけですが、地図を広げるタイルや得点をもらえるコマにロマンが感じられるゲームです。手軽に遊ぶこともできますが、じっくりと遊びを深めていけるゲームでもあり、2人から5人まで遊ぶ人数を選ばない大傑作。初級者は、草原抜きルールで楽しむもよし。コマやタイルを加えて遊べる「拡張セット」も発行され、その世界観をとことん楽しめます。

写真提供:すごろくや

企業研修や面接でも使われるボードゲーム

ボードゲームの1つに協力型と呼ばれるタイプのものがあります。プレイヤー全員でルールどおりに盤上を動かしながら、知恵を絞って目標を達成していくゲームです。これを業務を遂行するため、あるいはチームビルディングするためのツールとして活用し、企業研修に使うケースがあります。ファミリーレストランの「サイゼリヤ」では、オリジナルの店舗運営ゲームをゲーム開発者などと共同開発し、店長のマネジメント育成に使っています。
また、ボードゲーム専門店の「すごろくや」ではボードゲームを採用面接に活用。ゲームの説明書を渡して、それを読み解き、ゲームの説明を発表させたり、実際にゲームのプレイを見て、状況把握力や将来の予測力などの適性を見ているそう。ボードゲームは、遊びとして利用されるだけでなく、ビジネスの現場でも活かされています。

監修:丸田康司さん

専門販売店を中心としたボードゲームの総合企業「すごろくや」代表取締役/ゲームクリエイターとして、『MOTHER2 ギーグの逆襲』や『風来のシレン』などの制作に携わった後、ボードゲーム専門店・すごろくやを開店。東京・高円寺と神保町に店を構え、たくさんのボードゲームを販売するほか、オリジナルのボードゲーム開発や海外メーカーの日本語版の制作を手がけている。
https://sugorokuya.jp

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