トップページ > vol.107 身近な温浴レジャー スーパー銭湯
身近な温浴レジャー スーパー銭湯
vol.107

もはや一日中楽しめる!
身近な温浴レジャー スーパー銭湯

まだまだ寒い日々が続きますが、この時期、一日の楽しみといえば温かいお風呂ではないでしょうか。家のお風呂も気持ち良いものですが、お風呂やサウナが充実しているスーパー銭湯にお出かけするのも楽しいですよね。私たちの心と体を癒してくれる身近な温浴レジャー、その発祥とは?

充実の設備を低料金で

 スーパー銭湯が全国で普及し始めたのは1990年代のこと。その先駆けとされているのが、1989年に愛知県名古屋市で開業した「竜泉寺の湯」です。温浴施設が町の銭湯やヘルスセンター、健康ランドに限られていた当時、お風呂とサウナの良さをより多くの人に知ってもらおうと、お風呂とサウナを兼ね備えた施設を銭湯並みのリーズナブルな入館料で開放し、今や定番の高濃度炭酸泉もいち早く導入していたそうです。1990年代後半には各地でスーパー銭湯が急増し、やがて東京の都心にも波及。2003年の1年間で「東京お台場大江戸温泉物語」(江東区)、「スパ ラクーア」(文京区)、「豊島園 庭の湯」(練馬区)と話題性抜群の大規模施設も相次いでオープンしました。

スーパー銭湯のルーツの“ルーツ”?

 スーパー銭湯といっても厳密な定義はなく、公衆衛生の観点から公衆浴場を規制する公衆浴場法では、いわゆる銭湯のような「一般公衆浴場」とは異なる「その他の公衆浴場」として、ヘルスセンターや健康ランドなどと一緒に分類されています。
 そもそもスーパー銭湯のルーツとなる「銭湯」は400年以上前に生まれたもの。江戸では伊勢の与一という人物が天正19(1591)年の夏に銭瓶橋(現在の大手町付近)で蒸風呂の“銭湯風呂”を開業し、大坂でもその前年に風呂屋ができていたそうです。人々の生活の一部となった銭湯は第二次世界大戦を経て、1968年のピーク時には全国で約1万8000軒ありましたが、内風呂が一般家庭に普及し始めると徐々に減少。後継者不足や設備の老朽化も影響して、現在は2000軒を割り込んでいます。

お風呂がレジャーになった

 温浴施設を含む総合レジャー施設であるヘルスセンターの草分けとされているのが、1955年創業の「船橋ヘルスセンター」(千葉県船橋市)です。「日本一大きい、日本一面白い、日本一安い、温泉と海と娯楽の大デパート」をテーマに、温浴施設や遊園地やプール、劇場、ゴルフ場、ボウリング場などを集めた大規模施設で、近場の団体旅行先として首都圏の人々に人気だったとか。高度成長期のレジャーブームも後押しして、1960年代には全国各地にヘルスセンターが登場します。
 1980年には健康ランド(センター)の走りとなる「相模健康センター」(神奈川県座間市)が誕生。温泉や薬湯などバリエーション豊かなお風呂やサウナ、料理人による本格的な料理などを強みにして、より身近に外でお風呂を楽しみたいというニーズに応えました。ちなみに、80年代中頃には「万葉ポカポカ温泉」(富山県高岡市)のようなスーパー銭湯の原型ともいわれる施設が登場しますが、公衆浴場法では銭湯と同じ「一般公衆浴場」に分類されていたため、法的にはスーパー銭湯と異なるものです。



設備の進化に、海外でも需要が広がる

 企業の参入障壁が低かったことも後押しして、1990年代後半に全国で急増したスーパー銭湯。お風呂やサウナを充実させつつ食事や娯楽要素を簡素にすることで、低価格を実現していましたが、競合の増加や“日帰り温泉”の台頭もあって設備も進化。温泉を導入したり、入浴後の娯楽タイム、食事やリラクゼーションスペースを拡充したりと、健康センター顔負けの施設が当たり前となりました。
 そんなスーパー銭湯は中国や台湾、タイやシンガポールなど東南アジアでも拡大中。インバウンドの増加で、スーパー銭湯をはじめとした日本生まれの温浴施設が海外の人にも広まったことから、全国にスーパー銭湯を展開する極楽湯が中国に進出したり、現地企業も参入したりと市場を広げているようです。

新たな楽しみ方が増えるスーパー銭湯

 全国各地に展開しているスーパー銭湯。オリジナリティのある施設やこれから開業を控える注目の施設を最後にご紹介します。

“スタジアム”で入浴?

 関東最大級のスーパー銭湯といえば、東京都東久留米市の「スパジアムジャポン」。名前の通り円形スタジアムのような5階建ての施設には10種類以上のお風呂やサウナが完備され、100床を超える岩盤浴エリアでは雑誌やコミックも読み放題とあって一日中楽しめると評判だとか。“スタジアム”つながりで注目したいのが、プロ野球の北海道日本ハムファイターズの新たな本拠地として建設が進められているエスコンフィールド北海道(北海道北広島市)。球場内には世界初の球場内温泉とサウナを楽しむことができる温浴施設もオープンするそうです。完成は2023年3月と少し先になりますが、お風呂やサウナでリラックスしながらフィールドを一望できるようです!


15万坪の複合型リゾート!!

 キャンプ用品で知られるスノーピークは、新潟県三条市の本社敷地を約5万坪から15万坪に拡張し、衣食住に「働く」「遊ぶ」のすべてが詰まった未来構想プロジェクトを進めています。その第1弾として2022年春に開業を控えているのが、温浴施設を中心とした複合型リゾート「FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS」。世界的建築家の隈研吾氏の設計で開放的な露天風呂やサウナ、オープンキッチンのレストラン、自然との一体感を感じられる宿泊施設などが併設されるそうです。


旅の疲れを空港で癒したい

 空の旅の始まりや終わりでリラックスしたい時に重宝するのが空港内の温浴施設。北海道の新千歳空港内にある「新千歳空港温泉」が知られていますが、羽田空港国際ターミナル直結の複合施設で開業を控えているのが「泉天空の湯 羽田空港」です。もともと2020年4月頃のオープン予定でしたが、新型コロナウイルスの影響でオープン時期は未定。露天風呂では離着陸する飛行機を眺められ、高濃度炭酸泉やサウナ、岩盤浴、リラクゼーションスペースなども充実しているそうです。


キャンプに海外気分も味わえる

 リラクゼーションスペースの進化が止まらないスーパー銭湯の世界。「京都るり渓温泉」(京都府南丹市)にはグランピングをイメージしたテントやランタンが並ぶスペースが贅沢に設けられ、キャンプ気分でくつろぐことができるそうです。また、海外のお風呂文化も味わえるのが「天然温泉 延羽の湯 鶴橋」(大阪市東成区)。薬石が放射する遠赤外線が新陳代謝を促すとされる韓国式サウナの「薬石汗蒸房」を完備し、貸切家族風呂は関西最大級。レストランでは本格的な韓国料理も提供しているといいます。



※2022年2月18日時点の情報です。

もはや一日中楽しめるレジャー施設に進化しているスーパー銭湯。最近足が遠のいていたという方も、久しぶりに疲れた心と体をリフレッシュしてみては?

参考文献(順不同)
中野栄三『雄山閣アーカイブス 歴史編 入浴と銭湯』(雄山閣)/『PRESIDENT 2009 9.14号』(プレジデント社)/経済産業省(ホームページ)/日本経済新聞(同)/朝日新聞(同) 等

PageTop