そろそろお花見シーズンの到来。桜といえばソメイヨシノが有名ですが、実はそのほかにもたくさんの品種があるんです。家族や友人と食べて飲んで盛り上がるお花見もいいですが、今年はじっくりと桜を観察してみてはいかがでしょう。今回は、日本花の会の西山さんに桜の観察方法を教えてもらいました。

桜の花はいくつかの部位で構成され、それぞれ名前がついています。
これから桜を知るにあたって必要な部位用語を右の図で確認しておきましょう。
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日本で咲く桜といえばソメイヨシノが有名で、栽培面積の多くを占めています。しかし桜にはたくさんの品種があり、その数は、実に400種類を超えています。ただし、そのルーツを辿っていくと11の野生種が元になっていることがわかります。まずは、日本に生息する品種に関係した野生種についてご紹介します。
例えば、ソメイヨシノはエドヒガン系の桜とオオシマザクラの交雑によって生まれた品種というのが有力な説です。栽培のしやすさや生長が早い性質があり、明治の中頃より多く植えられ、圧倒的な栽培数を誇るようになりました。
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野性種の写真を見てもわかるとおり、桜を見分けるにはいくつかのポイントがあります。その代表的な7つのポイントを見てみましょう。

まず2~3月にカンヒザクラ系やシナミザクラ系の品種が咲きその後、3月上旬から4月下旬にかけて徐々に開花していきます。また、春と秋の年2回、咲く桜もあります。
*東京を基準にしています。

樹形は細長くみえるタイプや広がっているタイプなど6つの形に分けられます。

日本人には淡紅色がなじみ深いですが、濃い色あいのものや黄緑色の桜もあります。

桜といえば5つの花弁(花びら)の一重咲をイメージしますが、他にもいろいろな咲き方があります。

ソメイヨシノは中輪ですが、それより小さい桜や6cm以上にもなる桜もあります。

萼筒の形状は10タイプに分けられます。有名なソメイヨシノは狭長つぼ形です。

萼片の形状は大きく6タイプあり、縁にも種類毎にギザギザした特徴などが現れます。基本は5枚ですが、花弁の多い桜では10枚になるものもあります。
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品種の特徴を示すポイントがわかったところで、いくつかの桜をチェックしてみましょう。










※開花時期は東京を基準にしています。
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桜を観察するポイントがわかったら、実際に足を運んでみましょう。全国でたくさんの品種の桜が見られる名所を西山さんが厳選。普段とは違う角度から、花や幹を見てみましょう。
![松前公園 [北海道松前町]](images/h50401.gif)
北海道の桜の名所といえばこちら。約250種類もの桜が咲き誇り、桜研究家の浅利政俊さんが交配してつくったたくさんの八重桜品種が見られます。夜はライトアップが実施され、公園内の桜や松前城・寺町が幻想的に浮かびあがります。
[住所] 北海道松前郡松前町字松城
![日本国花苑 [秋田県井川町]](images/h50402.gif)
日本各地から集められた桜200種・2000本が植えられ、長い間花見ができる名所。春は3月から5月上旬まで、秋は11月に咲く十月桜、冬は12月咲きの冬桜、梅の季節には寒桜が楽しめる。ギョイコウやウコンなど黄緑色の桜もあります。
[住所] 秋田県南秋田郡井川町浜井川字二階102-1
![日本花の会 結城農場・さくら見本園 [茨城県結城市]](images/h50403.gif)
桜苗木の生産圃場と約350種類の桜を収集した品種見本園、桜の名所づくりの参考となるモデルガーデン。品種が系統ごとに植えられているので、特徴をつかみやすくなっています。通年見学は可能ですが、花が見頃の4月12日〜20日が一般公開日として設定されています。
[住所] 茨城県結城市田間2217
![国立遺伝学研究所 [静岡県三島市]](images/h50404.gif)
かつて研究用に収集された約200種類の品種の桜が植えられており、桜のシーズンに1日だけ一般公開されています。当日は桜が見られるだけでなく、遺伝学の研究成果が展示されたり講演会が行われたりしています。
[住所] 静岡県三島市谷田1111 *公開期間限定
![大阪造幣局・桜の通り抜け [大阪府大阪市]](images/h50405.gif)
大阪の造幣局の構内、大川沿い南門から北門にかけて約560mにおよぶ桜並木で知られる名所。4月中旬頃の1週間を桜の通り抜け期間として、一般の人に桜を公開。約130種、約350本の桜が咲き誇っています。
[住所] 大阪府大阪市北区天満1-1-79 *公開期間限定
※公開期間、入場料など詳しくは各公式ホームページ等でご確認ください。

桜の名所を思い浮かべると、弘前公園(青森)や角館(秋田)、三春滝桜(福島)、高遠城址公園(長野)など東日本の方が多いことに気づきます。実際に、東北や関東甲信越地方の桜の方が、良好な生育が見られます。また、「桜は1つの花芽から出る花の数が多いほど、健康」とされていますが、その点でも東日本に軍配があがります。この理由として考えられるのが、土壌の影響です。東日本には、「黒ボク土」といって、土自体に養分があり水はけのよい土が多く分布。それに対して西日本は、土壌に厚みがなく赤土や真砂土などの養分が少なく、水はけが悪い土が多く分布しています。これが桜の生長に関わり、桜の好む土の多い東日本の桜のほうが立派になるとされています。ほかにも、夏~秋にかけてやってくる台風が桜の生長に影響し、台風の多い西日本は生長が悪くなっているのではないかと言われています。

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西山 正大 さん
公益財団法人日本花の会 花と緑の研究所 研究員・樹木医。日本全国の桜の名所づくりを行う日本花の会で活動。桜の名所に関する調査、計画 策定、技術指導、住民活動の支援を行っている。